リーグ戦のリベンジとともにインカレ4連覇達成
12月12日、国立代々木競技場第二体育館で行われた「第72回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)」の女子決勝戦は、東京医療保健大学が最終スコア70-53で白鷗大学を破り、大会4連覇を達成した。
結果的に点差が離れたこの試合。東京医療保健大は第2クォーター最後の攻撃でジョシュアンフォノボ テミトペ(2年)が決めて5点リードとすると、第3クォーターからは攻守が噛み合い白鷗大を突き放した。オフェンスでは赤木里帆(4年)が主役となって同クォーターだけで9得点。守備では相手の起点である神﨑璃生(4年)が「ドライブを守られてしまい、全く中に行けなかった」と振り返ったように、全員で相手の侵入を防ぎ自由を奪う。後半の20分間は35-17と圧倒し、4年連続4回目の頂点に立った。
「誰が出ても得点が取れて、ディフェンスもできるというのが今年の持ち味。チームとしてインカレまでに積み上げてきたものがあるので、手応えを持って臨めています」と、大会中に話していたのは最上級生としてチームをけん引する赤木。
「リーグ戦で白鷗に負けてから、白鷗に勝つことだけを考えて練習に取り組んできました」と、1点差で敗れて優勝を逃したリーグ戦のリベンジへ向け、チームが注力してきたのはリバウンド。決勝では相手の42本に対し52本のリバウンドをもぎ取ったことも勝因につながった。
赤木はこの試合で26得点をマークする大暴れを見せ、文句なしのMVPを獲得。これについては「あまり実感はない。出来としてはまだまだ」と謙遜したが「自分がやるべきことを遂行し、チャンスを探し続けていたからこそ得点にもつながりました。チームメートがいたからこそのMVPだと思います」と振り返った。
「スーパーヒーローになれるか」を合言葉に一人ひとり成長
今年の東京医療保険大は、過去の3連覇に大いに貢献してきた岡田英里や藤本愛妃(ともに富士通レッドウェーブ)、永田萌絵(トヨタ自動車アンテロープス)らが抜け、ゼロからのスタートを切った。「チームがガラッと変わったので、自分たちが今試合をしても勝てない状況から始まった」と赤木。指揮を執る恩塚亨ヘッドコーチも、「去年の4年生たちがインカレ優勝したその翌日に、自分たちが優勝できるとは思っていなかったところからのスタートでした」と回顧する。
リーグ戦では順調に白星を積み重ねていったが、恩塚HCは選手たち姿を見て「楽しそうではなかった」と感じ、指導法を変えたという。「それを見て、何のためにバスケットをやっているのか。ダメだから頑張ろうではなくて、なりたい自分に向かっていくという選手の内側から湧いてくる思いを大切にしました」
合言葉は「スーパーヒーローになれるか」。
チームはこの言葉を胸に、選手一人ひとりがなりたい自分を追いかけた。「4連覇というプレッシャーは感じていなくて、一戦一戦目の前の相手に勝つと言うことだけを考えてきた」と赤木は言う。そのような姿勢が結果的に先輩たちに並び、連覇を途絶えさせなかったことにつながった。
「今日はディフェンスが素晴らしかったです。その素晴らしいディフェンスのエネルギーはどこからくるのかと考えると、それは『なりたい自分』。自分のエネルギーをコートで発揮することで、チームを救うスーパーヒーローになれるというマインドでコート上の5人がプレーしてくれました」(恩塚HC)
準優勝の白鷗大をけん引した2人のガード
今回も東京医療保険大の壁を崩せなかった白鷗大。2連連続2位という結果に終わったが、東京医療保健大とはライバルとして互いを認め合う存在だ。恩塚HCは「イチローさんの言葉ですけど(笑)」と補足しつつも、「私たちの可能性を引き出してくれる素晴らしいチーム。だから私たちも彼女たちの可能性を引き出せるチームになりたい」と表現する。
そんな白鷗大を今年1年引っ張ってきたのはキャプテンの神﨑と今村優花(4年)の2ガード。2人はともに150センチ台と小柄だが、スピードと度胸を兼ね揃え、神﨑は主にゲームコントロール、今村は得点源としてリーグ戦から存在感を示した。
今大会の敢闘賞を受賞した今村は、「璃生が出ていない時はポイントガードとしてプレーしますが、個人的には2番(シューティングガード)の方がやりやすいです。璃生はオフェンスも作ってくれますし、ちょっとした合図でもお互いわかるのでやりやすいです」と、神﨑について口にする。
一方の神﨑も、今村の存在についてこう話す。「言葉で表すのは難しいですけど、何も言わなくてもボールを預けたらやってくれる選手です。今まで今村を中心に組み立ててきましたし、4年間一緒にやってきたので信頼関係ができています」
「この身長でも、自分の欠点を受け入れて違う部分で補うという考え方ができるようになりました」と今村が言えば、「キャプテンになるまで自分から何も発信することができてなかったんですけど、この1年で自分から発信してチームを鼓舞することができるようになりました」と神﨑。
苦楽をともにしたことで尊敬し合い、絶対の信頼を置く仲にまでなった白鷗大の2ガード。2回目のインカレ制覇は後輩たちに託し、4年間の大学バスケを終えた。
文・写真=小沼克年