「いかに自分たちを超えるか」偉業を打ち立てたJX-ENEOSと主将吉田の未知なる挑戦

吉田はゲームハイの14得点7アシストを挙げる大活躍 [写真]=山口剛生

「今シーズンは自分たちとの戦いだった。簡単なシーズンではなく厳しいシーズンだった」。公式戦全勝で2冠を成し遂げたチームの、キャプテンのコメントとは思えないものだった。

 Wリーグ・プレーオフ・ファイナル第3戦。JX-ENEOSが完全優勝に王手を掛けて臨んだ一戦だった。主将の吉田亜沙美はキレのあるドライブからレイアップを決めて先取点をマーク。続けて岡本彩也花の3ポイントをアシストし、チームを勢いに乗せた。そして終盤には相手を突き放す3ポイントを自ら決め、試合を決定づけた。

 マッチアップしたトヨタ自動車アンテロープスの大神雄子も吉田を称える。「自分たちは渡嘉敷(来夢)選手や宮澤(夕貴)選手、岡本選手などへの警戒を強めていたが、それでも彼女たちにやられた。そういう状況を作っていたのがポイントガードの吉田選手だった」

 吉田はともにゲームハイの14得点7アシストと圧巻のパフォーマンスを見せ、チームをWリーグ9連覇へと導いた。しかし、その陰では常にプレッシャーもあったのだろう。「自分たちのバスケットはディフェンスからのブレイクを40分間徹底してできるか」。大差で勝ったこの試合も、「ディフェンスでしっかり我慢して……」と、意外にも「我慢」というワードが聞こえた。

 余勢を駆って得点を重ねる派手なバスケットに見えて、その実、我慢を続けることでこのスタイルは成り立っている。加えて、「スタート5人だけでなく、控え選手も含めて誰が出ても同じバスケットができるか」も重要だ。渡嘉敷の負傷退場というアクシデントに動じることなく、点差を守ることができたのも、チーム全体に戦術が浸透しているからだろう。

 来シーズンは10連覇が懸かるが、完全優勝を達成した彼女たちは何をモチベーションに戦っていくのか。JX-ENEOSのトム・ホーバスヘッドコーチは「チームのモチベーションは昨日よりも今日、と思うこと」と語る。吉田自身も「いかに自分たちを超えるか。トムの理想に追いついて追い越せるか」と同調する。

 チャンピオンになることよりも、チャンピオンの座を守ることの方が難しい。どのスポーツでも言われていることだが、加えてJX-ENEOSはシーズン無敗という記録まで打ち立てた。この輝かしい歴史をどう超えていくのか。チームの、そして吉田の未知なる挑戦はすでに始まっている。

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