第20回Wリーグ セミファイナル、トヨタ自動車アンテロープスと三菱電機コアラーズの戦いは、第3戦へともつれたが、試合は第1、2戦同様に激闘。前半を終えて同点とすると、第3Q終了時でもトヨタ自動車が僅かに2点リードという状況であった。それでも第4Qでは根本葉瑠乃の活躍もあり三菱電機が先行。終盤には1点差に詰められたものの、最後はフリースローをしっかりと沈めて74-71で勝利した。
この試合、22得点12リバウンドを叩き出したのはチーム最年長の王新朝喜。試合後の場内インタビューでは、「昨日の夜はみんな悔しくて、悩んで。でも、”悩むほどプレーオフの経験していない”と言われ、それで吹っ切れて…」と、リオデジャネイロオリンピック日本代表でチームメイトだった大﨑佑圭(JX-ENEOS/今シーズンは出産のため選手登録せず)からのアドバイスがあったことを明かし、なおかつ会場の笑いも誘った。
このことをさらに王に聞いてみると、「昨日(第2戦)の負けは、私自身、結構凹んだんです。勝てばファイナル行きが決まった試合だったので。それに気持ちと力はあると感じるけれど、落ち着いてプレーでてきていないというか…。すごく悩んでしまったので、(大﨑は)10連覇した中で苦しい経験もしてきているだろうから、聞いてみようと。そうしたら『悩むほど経験してないんだから』と言われ、吹っ切れました。深呼吸することと落ち着いて視野を広く。とにかくアグレッシブにやろうと。(大﨑の)アドバイスはチームメイトにも伝えました。みんな笑いながら『確かに』って。おかげで私も昨日の夜はやっとぐっすり寝れました(笑)」と、語ってくれた。
ヒーローインタビューで少しホッコリしてしまうのは、真面目でコツコツと取り組む王の性格もあるだろう。同じセンターポジションとして日本代表ではともに戦ってきた戦友からの言葉は、王に大きな力を与えたようだ。
チーム史上初となるファイナル進出。この結果に、王は今、チーム力をひしひしと感じているという。
「(前ヘッドコーチで現ジェネラルマネージャーの)山下(雄樹)さんはじめ、多くの人が言葉をくださり、気にもかけてくれる。OGの方からもたくさんの応援のメッセージをもらいました。私たちの”チーム力”というのは輪が大きいんです。そして絆も太い。引退されてから何年も経っている方たちが応援してくれる。今回も『選手入場だけで泣ける』と連絡くれた方もいました。それだけファミリーなんです」
王がチームに入団したときは2部(WIリーグ)。入替戦も経験したベテランは、「初めての舞台。そのために今まで頑張ってきたので、思う存分楽しみたいです」と、先輩たちの思いも背負いながら、JX-ENEOSサンフラワーズとのファイナルに臨む。
文・写真=田島早苗