「明日はチャイニーズ・タイペイ戦なので、簡単にシュートを打たせてはくれないと思います。しっかりリズムを作ってペイントアタックして崩していけるようにしていきたいです」
女子アジアカップ初日(24日)、初戦でインドに勝利した日本の司令塔・町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)は、2戦目となるチャイニーズ・タイペイ戦にこう意気込んでいた。
しかし、迎えたチャイニーズ・タイペイ戦は前半、思わぬ苦戦を強いられることとなった。
第1クォーター、日本は序盤こそ少しもたつくも、中盤からは町田のパスが冴え渡り、速い攻めから得点を重ねる。しかし第2クォーター、日本の得点が伸び悩む間にチャイニーズ・タイペイの思い切りのよいシュートが入り同点に。この悪い流れを断ち切るために町田は再びコートへと送り出されたのだが、負の連鎖はディフェンスにも影響。3ポイントシュートやリバウンドからのシュートにバスケットカウントを与えてしまうなど、逆転を許し、6点のビハインドを負って前半を終えることとなった。
それでも後半、「もう一回ディフェンスからやろう。ディフェンスからエネルギーを出し、良いディフェンスから走ろう」というトム・ホーバスヘッドコーチの指示通り、日本はハードなディフェンスからボールを奪うと、それをしっかりと得点につなげていく。前半は0本だった3ポイントシュートも決まり、速い展開からドライブや外角シュートなので加点。日本らしさを取り戻したのだが、やはり、その攻撃の中心になったのが町田だった。
結局、町田は、約27分の出場で10アシストを記録。特に高さで優位に立つチャイニーズ・タイペイに対し、日本の強みともいえる渡嘉敷来夢(JX-ENEOS)、髙田真希(デンソーアイリス)をうまく使ったパスが光った。
さらにそれだけでなく、前から当たるディフェンスでも貢献。渡嘉敷とのダブルチームでは相手のミスを誘発させ、ボールを奪取。自身の得点こそ0点ではあったものの、攻防ともに殊勲の働きを見せた。
👊"Pass Master" @13__MACHIDA dishes 10 crucial passes vs Chinese Taipei #FIBAAsiaCupWomen @JAPANBASKETBALL pic.twitter.com/3UKphseN7v
— FIBA (@FIBA) September 25, 2019
試合後、「チームマネジメントやゲームマネジメントがすごく上手」とホーバスHCも町田の働きを称えた。
「スタートだからといってやることが変わるわけではない」と大会前に語っていた言葉どおり、チームの苦しい時間にも自らのスタイルを失わなかった町田。やるべきことに徹した姿は頼もしささえ感じさせた。
かつて原田裕花、村上睦子(1994年アトランタ・オリンピック)や楠田香穂里、大神雄子(2004年アテネ・オリンピック)、そして最近現役続行を発表した吉田亜沙美(2016年リオデジャネイロ・オリンピック)など、名だたる選手たちが日本の司令塔を担ってきた。いわば日本の“顔”ともいえるポジションだ。
抜群のスピードとパスセンス。バスケットIQも高い162㎝の司令塔。この先、試合を重ねるごとにその存在が大きくなっていくであろう町田は、今、その“顔”になりつつある。
取材・文=田島早苗