3連続3Pで日本を救った林咲希、ほぼ“ぶっつけ本番”のアジア杯は「期待に応えたかった」

大会を通じて成長を見せたシューターの林[写真]=fiba.com

 女子日本代表は9月29日の「FIBA 女子アジアカップ 2019」決勝戦で中国代表を71-68で下し、大会4連覇を達成。帰国後に行われた優勝記者会見の場で、トム・ホーバスヘッドコーチはこんな言葉を残した。

「林が試合に出て、シュートが入り始めた時から立て直せました」

 中国とのアジアカップ決勝戦、日本は第2クォーター中盤で10点ビハインドを背負っていた。しかし、同クォーター残り3分2秒に1ケタ点差にすると、林咲希(JX-ENEOSサンフラワーズ)が同2分22秒、1分11秒、54秒と立て続けに3ポイントをマーク。前半終了時点では34-35とほぼ互角に持ちこんだ。

 “タラレバ”の話をしても仕様がないが、あの時、林の3本の3ポイントシュートが決まっていなかったら、日本は優勝を逃していたかもしれない。

中国との決勝戦では、第2Qに3本の3ポイントを沈めた[写真]=fiba.com

 大会前の約2カ月間、林は左足を痛めて離脱を余儀なくされていた。白鷗大学時代から持ち前のシュート力で何度もチームを救ってきたものの、フル代表デビューは5月末の「バスケットボール女子日本代表国際強化試合2019 三井不動産カップ(水戸大会)」のこと。その試合でいきなり5本の3ポイントを沈めて鮮烈デビューを果たしたのだが、6月2日以降は公式戦に出場することなく、ほぼ“ぶっつけ本番”でアジアカップに乗りこんだ。

 初戦のインド戦では3本の3ポイントを含む11得点を記録した。それでも、林自身は「がんばろうという気持ちはあったんですけど、本当に試合勘がなくて気持ちと体がマッチしなかったです」と振り返る。その後のチャイニーズ・タイペイ戦、韓国戦でも「積極的にシュートを打ってほしい」という指揮官の要求に応えられず、第3戦の韓国戦後にはホーバスHCに「もう何も言わないぞ」とまで突き放された。

「このままじゃ帰れない」

「予選はチームに迷惑をかけていたので、準決勝、決勝は自分の役割を果たしてチームに貢献したいと思っていましたし、トムさんの期待に応えたいという思いでやりました」

 その思いで決勝トーナメントに臨んだ林は、オーストラリア戦では1本の成功にとどまったものの、約8分間の出場で4本を3ポイントを放った。決勝戦当日の練習では、ホーバスHCからアドバイスをもらったという。「『(オーストラリア戦は)何であんなにアーチをかけて打っていたの』とトムさんに言われて、『そんなに上がっていたんだ』と自分でも気づけました。それがいいアドバイスになって、いつもどおり打てました」。

予選では「自分のふがいなさを感じた」林だが、チーム一丸となって優勝を手にした[写真]=fiba.com

「中国戦はマークマンも小さかったので、絶対に打とうと決めていました」と、前述したように決勝戦ではチームを救う3連続3ポイントを決めてみせた林。大会を通じても、16本中8本成功という3ポイント成功率を残し日本のアジア4連覇に貢献した。「予選では自分が打つべきところで打たなかったからリズムが悪くなりましたし、しっかりとメンタルと体が一致すれば、やれるということは自信になりました」。

 24歳のシューターは、アジアカップという国際舞台をとおして「まずシュートを打つのが仕事」と改めて自身の役割を再確認した。

文=小沼克年

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