車いすバスケ女子代表、準決勝で豪州に敗れる

次戦はタイとの3位決定戦に臨む[写真]=張 理恵

 タイ・パタヤで開催されている「2019アジアオセアニアチャンピオンシップス」。大会8日目の12月6日には女子の準決勝2試合が行われ、ディビジョン1・3位で予選を終えた日本は決勝進出をかけ、同2位・オーストラリアとの大一番に臨んだ。

「ニッポン!ニッポン!」

 日本から駆けつけた応援団の声援が背中を押す。
 
 先制点はオーストラリア。日本は萩野真世のフリースローで1点を返すも、執拗にボールを奪いにくるオーストラリアにパスをカットされ、思うようにリズムに乗ることができない。コミュニケーションをとりながら、お互いの動き、相手の動きを確認していく。第1クォーター終盤から徐々にペースを掴むと、コート内の5人全員が得点を挙げぐんぐん追い上げる。網本麻里の芸術的なバックシュートでついに逆転。そのまま勢いに乗り、萩野のミドル、藤井郁美のフリースローと得点を重ねていく。最後は、車いすを力強く漕いでスピードに乗った網本がレイアップを決め、25-18の7点リードで試合を折り返した。

網本は難度の高いバックシュートを決めた[写真]=張 理恵


 前半とくに活躍が目立ったのは網本と並んで8点をマークした萩野。障がいの程度や体幹などの機能によるクラス分けでは、2番目に障がいが重い「持ち点1.5」のローポインターだ。パスを自らの強みとする萩野だが、最近ではシュートにも磨きがかかったことで、得点源となるハイポインターが押さえ込まれた時には、萩野がトップの位置からショットを狙うという得点パターンが多く見られるようになった。

 今年の夏に東京で行われたオーストラリアとの国際親善試合。日本が勝ち越し、チームが躍進した要因として、岩佐義明HCは「萩野の成長」を挙げていた。2008年の北京パラリンピック以降、女子日本代表はロンドン、リオと2大会連続でパラリンピック出場を逃しているが、その中で萩野はパラリンピックを経験していない世代。

躍進の要因となった萩野[写真]=張 理恵


「何もわからず負けてしまった」ロンドン大会の予選。その後、2013年に東京パラリンピック開催が決まり、「東京の前に絶対出ておかなければいけなかった」リオ大会予選で敗れたことが大きなきっかけとなった。

「自分がチームの中心になっていかなければいけない」

“日本代表としての責任”が成長へとつながった。

 運命の後半戦。声援も一段と大きくなる。これまでの試合経験からカギとなるのは、後半の入りだった。もう一度集中力を高めてチーム一丸となって臨む。「アーリー!」「1本行こう!」とベンチから声を送り続けるメンバー。前半ではシュート確率が上がらず苦しんでいたオーストラリアがペースを取り戻し追い上げてくる。そして、第3クォーター残り22秒でついに並ばれ、33-33。

 勝負の最終クォーター。いきなり4連続得点を許すとターンオーバーも奪われ、その差は見る見るうちに広がっていく。流れを食い止めようとメンバー交替を図るも、着実に得点を伸ばしていくオーストラリア。一方の日本は、8分以上無得点が続く。気づけば10点以上の差をつけられたが、それでも諦めずに最後まで全力で走る。網本が果敢に3ポイントシュートを狙うも得点には至らず、37-49で試合終了。掴みかけた決勝への切符はオーストラリアの手に渡った。

前を向いて3位決定戦に挑む[写真]=張 理恵


 喜びを分かち合うオーストラリアとは対照的に抜け殻のように立ち尽くす日本。

「これが今のアジアオセアニアでの立ち位置。来年に向けて、あとは這い上がるだけ」と山﨑沢香アシスタントコーチ。岩佐HCは「肝心な勝ち時のシュート力が勝敗を分けた。あそこで対応できなかったのが今の課題。本当に悔しい。明日の3位決定戦では、日本のバスケというものをもう一回追求して勝って帰りたい」と語った。

 そして、40分間コートに立ち続けた萩野は、冷静に試合を振り返った。

「勝ち切らないといけない試合だったので本当に悔しい。自分たちの流れというのは確実にあったが、継続できる力がまだまだ足りないということがこの試合ではっきりわかった。40分間継続できる力をつけていきたい」

 なお、もう一方の準決勝戦では、ディビジョン1・全勝でトップ通過した中国が、ディビジョン2から勝ち上がったタイに82-30で圧勝し決勝進出を決めた。日本は大会最終日となる12月7日、タイとの3位決定戦に臨む。

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