5月12日、パラリンピック発祥の地であるストークマンデビル(イギリス)の会場で東京パラリンピックの組み合わせ抽選会が行われ、その模様がYouTubeでライブ配信された。抽選会には、国際パラリンピック委員会(IPC)前会長かつIWBF元会長のフィリップ・クレイヴァン氏と、駐英国日本国特命全権大使の林肇氏が出席。2人が国名が記された紙が入ったカプセルを引き、男子、女子それぞれ東京パラリンピックの予選グループの組み合わせが決定。日本は男子が18年世界選手権で激戦を繰り広げたトルコやスペインと同じグループA、女子は世界選手権2位イギリス、3位ドイツと同じグループAとなった。
男子は世界4強が集中した“死のグループ”とは別グループに
東京パラリンピックには、男子は12チーム、女子は10チームが参加し、予選はAとBの2グループに分かれて総当たり戦が行われる。各グループの上位4チームずつ、計8チームが決勝トーナメントに進出することができる。
今回の抽選は、昨年までに行われたアメリカ、ヨーロッパ、アジア・オセアニア、アフリカの各ゾーン予選での上位2チームが同じグループとならないよう、1位と2位、3位と4位というようにしてペアを組み、それぞれのペアごとに抽選を行った。最初に引かれたチームがグループA、後に引かれたチームがグループBに振り分けられたうえで、開催国の日本にはどちらのグループに選択権が与えられ、日本とペアの国は日本が選択した別のグループに入った。
男子日本代表の京谷和幸HCが選択したのは、グループA。リオパラリンピック銀メダルのスペイン、アジア最大のライバル韓国をはじめ、トルコ、カナダ、コロンビアと同じグループだ。一方、グループBは世界選手権優勝のイギリスと、リオ金メダルチームで世界選手権準優勝のアメリカと金メダル最有力の2カ国に加えて、世界選手権3位のオーストラリア、同4位のイランも入り、世界4強が集中。まさに“死のグループ”となった。
また女子日本代表の岩佐義明HCが選択したのは、グループA。世界女王のオランダ、アジア最強の中国の2カ国が入ったグループBを避けたかたちだ。日本は世界選手権準優勝のイギリス、同3位のドイツをはじめ、カナダ、オーストラリアと対戦する。オランダ、中国が入ったグループBには、リオ金メダルのアメリカをはじめ、スペイン、アルジェリアが振り分けられた。
開催国の強みを生かし、白星発進できるかがカギに
男子日本代表は、実力で言えば3大会ぶりの決勝トーナメント進出は確実だろう。だが、それがかえって“落とし穴”となることもある。また予選の順位次第では、準々決勝でアメリカやイギリスと激突する可能性が出てくる。それだけに予選は全勝で1位通過を狙いたいところだ。高さのあるヨーロッパの強豪スペインとトルコには完敗を喫したリオパラリンピックでの、そして韓国には2戦2敗した19年アジアオセアニア選手権での雪辱を果たし、勢いをつけて決勝トーナメントに臨みたい。
2年前の世界選手権の出場を逃し、パラリンピックも3大会ぶりとなる女子日本代表は、予選から厳しい戦いとなることが予想される。カギを握るのは、オーストラリア戦、カナダ戦だろう。両チームに勝つことが、決勝トーナメント進出の絶対条件となる。同じゾーンのオーストラリアはもちろん、カナダとも昨年の大阪カップで対戦しているだけに、分析もしやすいはずだ。両チームともに止めるべき選手は明確なだけに“エース封じ”ができれば勝つ可能性は十分にある。
リオ以降、若手が台頭してきた男子日本代表。そしてパラリンピックの出場が3大会ぶりとなる女子日本代表。両チームともにパラリンピック経験者は半数以下。とりわけ女子においては3~4人で、それも13年前となる。それだけにパラリンピック独特の雰囲気にのみ込まれることなく、初戦から実力を発揮できるかも重要だろう。
有明アリーナ、武蔵野の森総合スポーツプラザの両会場でプレーした経験があるのは、日本のみ。そうした開催国の強みを生かし、初陣を白星で飾ることができるか。僅差でもいい、泥臭くてもいい。どんなかたちでも勝利でスタートを切ることができるかが、その後の流れを決めるはずだ。
文=斎藤寿子