準備と研究を怠らない世界屈指の強豪オーストラリア。NBA選手を加えて日本上陸!

オーストラリアは強靭なフィジカルと高さを生かしたプレッシャーディフェンスからのトランジションゲームが持ち味[写真]=小永吉陽子

6月29日、千葉ポートアリーナで男子日本代表が対戦するオーストラリア。FIBAワールドカップ2019アジア1次予選では、昨年の11月にオーストラリアのホーム、メルボルンで対戦し、その時は59-82で敗れている。これまでオセアニア地区で戦っていたオーストラリアは昨年から戦いの場をアジアに移すも、その後は無敗を続ける強豪。ではオーストラリアとはどのようなチームなのかだろうか。メルボルンでの日豪戦を取材した小永吉陽子氏に解説してもらおう。

写真・文=小永吉陽子

NBA選手が不在でもアジア王者に君臨

 アジア初参戦となった昨年以来、FIBAアジアカップとFIBAワールドカップ1次予選において負けなしの10連勝。2016年のリオ五輪ではNBA選手を揃えてベスト4へと駆け上がったが、NBA選手が不在でもアジアで頭一つ抜ける実力を持っているのが「BOOMERS(ブーマーズ)」の愛称を持つオーストラリアだ。

 強靭なフィジカルと高さを生かしたプレッシャーディフェンスからのトランジションゲームが持ち味。1次予選ではリバウンド(平均47.5本)とアシスト(平均23.3本)で16チーム中1位。失点は65点で2位。これらの数字が示すチーム力こそが最大の武器だ。誰が出てきても仕事をこなす組織力は指揮官のアンドレイ・レマニスが2013年の就任から5年かけて築き上げたもの。今年は3月末にプロリーグのNBLが終了すると、4月には、4年に一度開催されるコモンウェルスゲーム(※)にて金メダルを獲得しており、すでに今季の代表戦においては実戦を重ねている。さらにアンダーカテゴリーでも男女ともに強化体制が整っており、プロリーグと協会が連携し、国をあげて強化している本気度が見える。

 その強固なチーム力の背景にあるのが徹底した準備である。昨年11月のWindow1で日本と対戦したときに「オセアニアからアジアへ戦いの場を移してどのようなチーム作りで挑んでいるのか?」と質問をぶつけてみたところ、その答えからは、高い計画性と徹底した準備の下でチーム作りを進めていることがうかがえた。

オーストラリアのインサイドの要、ダニエル・キッカート[写真]=小永吉陽子


「オセアニアではニュージーランドのような強豪とタフな試合をしてきたことで成長することができたが、アジアではこれまでとは違うプレースタイル、違う戦術や違う臨み方があると感じている。そのため、もっと相手国の映像を見て研究していくことがこれからの課題だ。チーム作りにおいては継続性が大事であるため、我々は最初の参戦であるアジアカップを重要視して戦った。そしてワールドカップ予選においては、それぞれのWindowで戦える選手のコアグループを作りながら継続性を高め、数人の選手を入れ替えながら、誰が機能するか試しながらチームを構築している。最終的なゴールは2019年ワールドカップと2020年オリンピックでメダルを獲ることだ」(レマニスHC)

マシュー・デラベドバソン・メイカー、2名のNBA選手が参戦

 ここまでのワールドカップ1次予選でコアメンバーとして活動してきたのは、NBLのグランドファイナルMVPを受賞したクリス・ゴールディング、インサイドを主体にオールラウンドに働くダニエル・キッカート、アップテンポなリズムを作る司令塔のジェイソン・カディーや走力あるネイソン・ソビーらだ。そしてWindow3では、これまでの予選で得点源として活躍してきたミッチェル・クリークをNBAサマーリーグ参戦のために欠くことになるが、その穴を感じさせないほど強力な人選が加わった。NBAのミルウォーキー・バックスでプレーするマシュー・デラベドバソン・メイカーの合流だ。

国際ゲームでの経験も豊富なマシュー・デラベドバが合流[写真]=Getty Images


 NBA選手を参戦させることに対してレマニスHCは「オーストラリアには素晴らしいNBA選手がいるが、彼らは負傷したり、クラブの都合があったり、いつでも参戦できるわけではない。何が起こるかわからないのが代表戦なので、国内リーグで活躍する選手を鍛えながら、チャンスをうかがってNBA選手を招集したい」と語っていたが、そのチャンスの時がオフシーズンである今なのだ。

 強固で崩れない安定した攻防に加え、デラベドバの大舞台での経験値としつこいまでのディフェンス、216㎝のサイズを持つメイカーの驚異的な身体能力を加えることでダイナミックさをプラス。アジア一ならぬ、世界大会でメダル獲得を狙う強国が、1次予選ホーム最終戦の相手となる。

※コモンウェルスゲーム(Commonwealth Games)=イギリス連邦に属する国と地域が参加して4年ごとに開催される総合競技大会。主な参加国はイングランド、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、ナイジェリアなど約70ヶ国

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