2月19日(現地時間18日)にロサンゼルスのステープルズ・センターで行われる「NBAオールスターゲーム2018」。先月、オールスターの出場選手ならびにロースターが発表され、開催が刻一刻と近づいてきている。バスケットボールキングでは、67回目となるオールスター出場選手紹介に加え、オールスターにまつわる記録や大盛り上がりしたイベント、印象的なゲームなども順次お届けしていく。
<オールスター特別企画⑬>
記憶に残るオールスターゲーム編④、マジックが魅せた伝説的な“一夜限りのショウタイム”1992年
今回は、1992年のオールスターゲームをお届けしたい。91年秋、HIVウイルス感染により現役を引退したロサンゼルス・レイカーズのアービン“マジック”ジョンソンがファン投票でスターターに選出。リーグの許可が下りたことで、コートに降り立ったマジックが感動的なパフォーマンスを見せた。
■イースタン・カンファレンス出場選手一覧(所属は当時のもの/太字はスターター)
マイケル・ジョーダン(シカゴ・ブルズ)
アイザイア・トーマス(デトロイト・ピストンズ)
チャールズ・バークリー(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)
スコッティ・ピペン(シカゴ・ブルズ)
パトリック・ユーイング(ニューヨーク・ニックス)
デニス・ロドマン(デトロイト・ピストンズ)
ジョー・デュマース(デトロイト・ピストンズ)
レジー・ルイス(ボストン・セルティックス)
ブラッド・ドアティ(クリーブランド・キャバリアーズ)
マーク・プライス(クリーブランド・キャバリアーズ)
マイケル・アダムズ(ワシントン・ブレッツ)
ケビン・ウィリス(アトランタ・ホークス)
※出場選手変更(ケガのため)
ラリー・バード(ボストン・セルティックス)→マイケル・アダムズ
ドミニク・ウィルキンズ(アトランタ・ホークス)→ケビン・ウィリス
■ウエスタン・カンファレンス出場選手一覧(所属は当時のもの/太字はスターター)
アービン“マジック”ジョンソン(ロサンゼルス・レイカーズ)
クライド・ドレクスラー(ポートランド・トレイルブレイザーズ)
クリス・マリン(ゴールデンステート・ウォリアーズ)
カール・マローン(ユタ・ジャズ)
デイビッド・ロビンソン(サンアントニオ・スパーズ)
ジェフ・ホーナセック(フェニックス・サンズ)
ティム・ハーダウェイ(ゴールデンステート・ウォリアーズ)
アキーム・オラジュワン(ヒューストン・ロケッツ)
ジョン・ストックトン(ユタ・ジャズ)
ジェームズ・ウォージー(ロサンゼルス・レイカーズ)
ダン・マーリー(フェニックス・サンズ)
ディケンベ・ムトンボ(デンバー・ナゲッツ)
オーティス・ソープ(ヒューストン・ロケッツ)
“ドリームチーム”がロースターを飾る豪華な顔ぶれ
1992年、バルセロナ・オリンピックに、アメリカ代表として出場することとなる“ドリームチーム”の選手たちが名を連ねた。バードはケガのため出場を辞退したものの、当時学生だったクリスチャン・レイトナー(元ミネソタ・ティンバーウルブズほか)を除く10名がこの年のオールスターゲームに出場するという豪華なメンバー。
ほかでは、当時ルーキーだったムトンボが初出場、現在ニックスで指揮を執るホーナセックが自身唯一となるオールスター選出を果たしていた。また、ルイスは翌年に27歳の若さで逝去することとなったが、セルティックスが誇る将来のスター選手として注目を浴びていた。
コート上で唯一無二の輝きを放ったマジック
スターターとして出場したマジックは、マーリーへパーフェクトなタイミングでバウンドパスをとおして得点を演出するや、中央突破で鮮やかにレイアップを決めるなど絶好調。試合をとおしてフィールドゴール12投中9本、3ポイントシュートは圧巻の3投中3本、フリースローも4投すべて成功させるパフォーマンス。会場のオーランド・アリーナからは、われんばかりの大声援が送られ、マジックのためのオールスターになりつつあった。
マジックのプレーに呼応するかのように、ウエストはショットが絶好調だった。ドレクスラーが22得点9リバウンド6アシスト、ロビンソンが19得点、ハーダウェイが14得点7アシストを記録するなど、計8選手が2ケタ得点をマークし、フィールドゴール成功率65.3パーセントと、面白いようにショットが決まった。
試合も前半を終えてウエストが大量24点リードの79-55、第3クォーター終了時には115-83と、32点にまで広がる一方的な展開となった。イーストではジョーダンがチームトップの18得点、トーマスが15得点を挙げるなど計5人が2ケタ得点、ロドマンがゲームハイとなる13リバウンドを挙げるも点差を縮めることはできなかったのである。
ライバルたちの挑戦を退け、最高のエンディングを演出
ただし、イーストにはマジックをライバル視する、リーグ屈指の負けず嫌いな選手が2人いた。トーマスとジョーダンだ。
マジックとトーマスは80年代に何度もプレーオフで戦ったライバルであり、オールスターでも競い合ってきた。このオールスターでもマジックを前にして1オン1を開始。見事なボールハンドリングでスペースを作り出し、プルアップジャンパーを放った。しかしリングにかすりもしないエアボールとなり、マジックが両手でガッツポーズ。
続いてジョーダン。前年の91年NBAファイナルで、ジョーダン率いるブルズはマジック率いるレイカーズを4勝1敗で下し、当時は2連覇に向けてまい進している頃だった。ジョーダンは1オン1で、マジックをかわしてジャンパーを放ったものの、こちらもリングに嫌われてしまい、マジック超えとはならなかった。
そして残り約14秒、マジックはトーマスの目の前でとどめの3ポイントシュートを成功させる。高々と突き上げた右腕をファンの前で振りかざし、最高のエンディングを作り出したのである。最終スコアは153-113。ウエストの圧勝だった。
このゲーム、マジックは25得点5リバウンド9アシスト。実にマジックらしいオールラウンドな数字を残すとともに、バスケットボールを心底楽しんでいると感じさせる動き、人を惹きつけてやまない笑顔を見せ、見るものすべてに感動を与えて文句なしのオールスターMVPを獲得。
試合を終えたマジックは、会場に集まった複数の現地メディアへ「こんなにハグされてからプレーしたゲームは初めてだ。チームメートたちとハグし、ハイタッチしたことは、今後決して忘れることはないだろう。ストーリーを作るうえで、完璧なエンディングだった」と、満面の笑みで語った。
これまで開催されてきたNBAオールスターゲームの中で、最も感動してしまうゲームを挙げるとすれば、きわめて多くの人が1992年を選ぶはずだ。仮にほかの年のゲームを選んだ人であろうと、マジックが魅せた感動的なパフォーマンスは、間違いなく最終候補の1つとして考えるに違いない。この年のオールスターは、それほど大きなインパクトを残したのである。