昨季プレーオフ1回戦途中にコービーからアドバイスを受けていたトーマス
3月8日(現地時間7日)、ロサンゼルス・レイカーズのアイザイア・トーマスが、現地メディア『Spectrum SportsNet』の記者へ、コービー・ブライアント(元レイカーズ)との関係について語った。
両者が初めて本格的に言葉を交わしたのは15年12月末のこと。コービーが現役引退を表明したシーズンに、ボストンを訪れた時だった。向上心旺盛なトーマスは、レジェンドの知恵を借りたいとアピールし、ミーティングの場を持った。そこでコービーは獲物を狙うライオンに関する例え話を用いるなど、トーマスへいくつかアドバイスを送った。のちにコービーは、いつでも連絡を取り合えるようにと、トーマスに自身の電話番号を書いたメモを渡したことを明かしている。
それから約1年半が経過し、昨季のトーマスはエースとしてボストン・セルティックスをイースタン・カンファレンス1位へと押し上げ、リーグ屈指のスコアリングガードに成長。意気揚々とプレーオフを迎えるはずだった。
しかし、当時のトーマスは精神的に非常に苦しかった。というのも、ブルズとのプレーオフ初戦の前日、妹のチャイナ・J・トーマス(22歳)が交通事故で他界するという悲劇が起きたからだ。チームのために出場することを決意したトーマスだったが、ブルズとの最初の2戦に敗れ、2連敗を喫してしまう。
そのトーマスを救ったのがコービーだった。トーマスはコービーとのやり取りをこのように振り返っている。
「妹を亡くしてから2、3週間の間、僕らはずっとコミュニケーションをとってきた。特に第2戦以降、彼(コービー)は大きな助けになった。FaceTimeを通じて30分間、試合の映像を見ていたんだ。僕に対して、彼が見て気づいたことや僕がどうすればいいのか、そしてどうしたらチームを勝たせることができるのかを教えてくれた」。
レイカーズで“マンバ・メンタリティ”を発揮
ワシントン州で生まれ育ったトーマスにとって、コービーは子どもの頃から大ファンであり、何度もプレーを見てきたアイドルだった。それだけに、「僕にとっては本当にスペシャルなことだった。コービー・ブライアントと話すことができて、アドバイスをくれたんだから、もう信じられないくらいすばらしかった。彼は僕にとって、ずっとお気に入りの選手だったんだからなおさらさ」と語るのも当然。
コービーの助言もあって、トーマス率いるセルティックスはブルズとの第3戦から4連勝で1回戦を突破、ワシントン・ウィザーズとのカンファレンス・セミファイナルは4勝3敗で制した。特に妹の誕生日(現地時間5月2日)に行われた第2戦、トーマスはキャリアハイの53得点という超絶パフォーマンスで世界中に感動を与えた。
クリーブランド・キャバリアーズとのカンファレンス・ファイナルでは、股関節の痛みが悪化したため第3戦以降を欠場し、1勝4敗でシリーズを終えたものの、プレーオフをとおして精神的なタフさと集中力を見せ、主に得点面でセルティックスをけん引してきた。
あれから約1年。トーマスはキャブスを経て、現在はレイカーズの一員としてプレーしている。昨季のプレーオフ終了時点で、誰が今のトーマスを予想できただろうか。誰もが驚くような展開で、トーマスは2度も所属チームが変わることとなったのである。
それでも、トーマスはレイカーズでベンチから得点力と、コービーから受け継いだ“マンバ・メンタリティ”を若い選手たちへもたらしている。コービーから教わったことを、彼がかつて所属したレイカーズに恩返ししていると考えれば、トーマス本人としても、決して悪いことではないはずだ。