爆発的なオフェンス力でラプターズを粉砕
5月8日(現地時間7日)、トロント・ラプターズ(0勝)とクリーブランド・キャバリアーズ(3勝)によるイースタン・カンファレンス・セミファイナル第4戦が、キャバリアーズのホーム、クイックン・ローンズ・アリーナで行われた。
シリーズ敗退に王手がかかってしまったラプターズは、またしてもスターターを変更。第3戦でベンチスタートだったサージ・イバカを先発に戻し、センターのヨナス・バランチュナスをベンチへ、さらにはフレッド・バンブリートを再びベンチスタートにし、ベテランのCJ・マイルズをスターターに抜てき。絶体絶命のピンチに今季一度も先発として組んだことのない5人をコートへ送り出した。
第1クォーター。序盤は僅差の攻防を演じた両チームだったが、残り6分あたりからレブロン・ジェームズ、カイル・コーバー、JR・スミス、ケビン・ラブが続けて得点し、キャブス優勢の展開に。
何とかしてキャブスに一矢報いたいラプターズは、デマー・デローザンやバンブリート、バランチュナスらのショットで追い上げ、26-30の4点ビハインドでこのクォーターを終える。
第2クォーター。パスカル・シアカムのダンクで先制したラプターズは、残り8分34秒にマイルズのショットでキャブスに追いつくと、バランチュナスのレイアップで38-36と逆転に成功。レブロンとトリスタン・トンプソンの得点で逆転されるも、マイルズのレイアップで再び同点に追いつく。
しかし、キャブスはコーバーの3ポインターとレイアップ、ラブのレイアップが続けて決まり、ラプターズを引き離す。デローザンとイバカ、OG・アヌノビーが奮闘するも、キャブスはレブロンをはじめ、ジョージ・ヒルやコーバー、スミス、ラブが波状攻撃を繰り出し、前半終了時には63-47と、16点ものリードを奪った。
第3クォーター序盤。レブロンとデローザンによるエース同士のスコアリングが展開され、点差は変わらず。しかしレブロンの4連続得点でキャブスが抜け出し、残り7分55秒で20点差をつける。
ラプターズはマイルズやイバカ、バランチュナスが得点を挙げていくものの、キャブスとの点差は開いていき、一方的な展開へ。このクォーター残り1分1秒には、レブロンがリング裏から苦し紛れに放ったはずのフェイドアウェイ・ジャンパーが鮮やかにリングへと吸い込まれ、このクォーター終了時点で100-72。キャブスが28点の大量リード。キャブスのワンサイドとなる中、残り23.6秒にはラプターズのエース、デローザンがフレグラント・ファウルで退場処分を下されてしまう。
最終クォーター。ラプターズはデロン・ライトらベンチ陣が必死で点を取りにいくものの、キャブスはジェフ・グリーンの3ポインターやトンプソンの3ポイントプレーがとびだし、レブロンが容赦なくジャンパーを決めてさらにリードを広げる展開。一向に点差は縮まらず、ラプターズはお手上げ状態。最終スコア128-93とし、キャブスがラプターズを2年連続のスウィープで下した。
ラプターズは現行体制に限界が来ているのか?
キャブスではレブロンがゲームハイとなる29得点に8リバウンド11アシスト、ラブが23得点6リバウンド2スティール2ブロックと大活躍。5投中4本の3ポイントシュートを決めたコーバーが16得点、フィールドゴール6投すべて(うち3ポイントシュート3本)を成功させたスミスは15得点に2スティール、ヒルが12得点5アシストと続いた。
この日のキャブスはチーム全体でフィールドゴール成功率59.5パーセント、3ポイントシュート成功率でも46.2パーセントと、ショットが絶好調。ラプターズとの第2戦に並ぶ今年のプレーオフ最多タイの128得点をマーク。
結果的にはプレーオフでキャブスはラプターズ相手に10連勝。2年連続でスウィープという形となったのだが、レブロンは試合後の会見で、ラプターズを称賛していた。
「彼らはとてもバランスに優れていた。今季はチーム一丸となって戦っていた。ポストシーズン(プレーオフ)でも成功できるようなすばらしいチームを構築してきた。だから俺は、このシリーズを迎えるにあたり、俺たちにとってタフなシリーズになると思っていた」。
昨年のシリーズでは、キャブスが平均15.3得点差でラプターズ相手に4連勝を飾ったのだが、今年は初戦で延長戦の末に1点差、第3戦もレブロンのブザービーターにより2点差で勝利と、昨年よりもラプターズはキャブスを苦しめたのは間違いない。だからこそ、レブロンも彼らの健闘を称えたのだろう。
ラプターズではベンチスタートとなったバランチュナスがチームトップの18得点に5リバウンド3ブロック、デローザンとマイルズが共に13得点。カイル・ラウリーが4リバウンド10アシストを記録するも、シーズン最後となった試合で35点差という惨敗。
「メンタル的なものだ。それこそが、彼らが俺たちを最も傷つけた要素だった。バスケットボールではないと俺は思う。もちろん、俺たちが勝ちたくなかったと言ってるんじゃない。でも俺たちにはメンタル面が彼らよりも不足していた。それがフラストレーションとなって、集中力を失ってしまったんだと思う」とバランチュナス。
ドウェイン・ケイシーHCは「我々はすばらしいシーズンを送ることができていた。だが今夜、(キャブスとの)レベルの差を見せつけられてしまった。皆がクリーブランドと叫んでいた。レブロンという男がいる限り、彼らにはチャンスがあるのだろう」と口にし、今季を終えている。
今季のラプターズは、フランチャイズ史上最高成績を残し、ファイナルまでのホームコート・アドバンテージも手にしていた。打倒キャブスというテーマ以前に、優勝することを目指していたはずだった。
しかし、シリーズをとおしてレブロンを抑えきることができず、第3戦途中には不振に陥ったエース(デローザン)がベンチに引っ込められ、この日の試合では退場処分を食らい、一足先にシーズン終了。デローザンを筆頭にラプターズは今年のプレーオフ以上に苦々しい経験をしたことはないのではないだろうか。
昨季までのデローザン&ラウリーによるピック&ロールとアイソレーション頼みのオフェンスから、ボールムーブを増やしたオフェンスにシフトしたラプターズだったが、結果は変わらず。
新陳代謝の激しいNBAにおいて、ラプターズのコアであるケイシーHCは就任7シーズン目、デローザンは9シーズン目、ラウリーは6シーズン目を終えた。
イーストでは現在、ボストン・セルティックスとフィラデルフィア・セブンティシクサーズという、若くて才能あふれるヤングコアを擁するチームが台頭している。今季イーストトップの59勝を挙げたチームにはおかしなことのように映るかもしれないが、現行体制では限界が来ているのだろう。
ラプターズは今夏、ロースターとコーチングスタッフに大きなメスを入れることになりそうだ。