絶不調カリーが終盤に決めた起死回生の一発
6月7日(現地時間6日)、ゴールデンステート・ウォリアーズ(2勝)とクリーブランド・キャバリアーズ(0勝)によるNBAファイナル第3戦が、キャバリアーズのホーム、クイックン・ローンズ・アリーナで行われた。
先制点を挙げたのはキャブス。ジョージ・ヒルのアシストでケビン・ラブの長距離砲が決まると、JR・スミスの3ポインターもネットを潜り抜け、キャブスが好調な滑り出しを見せる。
その後もキャブスはレブロン・ジェームズの2連続アシストでスミス、トリスタン・トンプソンが加点。さらに残り9分36秒にはレブロンが1人アリウープを破壊力満点のボースハンドダンクで締めくくり、会場のボルテージは最高潮に。
ラブとレブロンの2連続レイアップでキャブスが残り7分38秒で16-4と12点リードを奪うと、ウォリアーズはドレイモンド・グリーンとKDことケビン・デュラントのショットで反撃開始。
そして残り6分21秒、ヒューストン・ロケッツとの第4戦以降、左膝の負傷で欠場していたアンドレ・イグダーラが登場すると、ウォリアーズはステフィン・カリー、クレイ・トンプソン、デュラント、グリーンと共に“死のラインナップ”を久々に形成。徐々にだがウォリアーズにリズムが生まれる。
イグダーラのビハインド・ザ・バックパスから右コーナーでトンプソンが鮮やかな3ポイントシュートを決めると、デュラントの3ポインターも続き、キャブスを射程圏内に捉える。
キャブスはレブロンやヒル、ジェフ・グリーンらのショットで追加点を挙げる中、デュラントがプルアップジャンパーとフリースロー2本を沈めて、28-29と、ウォリアーズが1点差まで追い上げて最初の12分間を終えた。
第2クォーター開始から約3分、ウォリアーズが無得点に終わる中、キャブスはレブロンとロドニー・フッドのショットでリードを7点に広げていく。その後もラブやスミスの長距離砲がとびだし、残り4分6秒には50-37とし、13点差をつける。
するとウォリアーズは徐々に点差を詰めていき、前半残り約1分からデュラントが3ポイントプレー、残り1.3秒には3ポインターを沈め、52-58の6点差まで追い上げて試合を折り返す。
ジャベール・マギーのアリウープで始まった第3クォーター。ウォリアーズは序盤からマギーのレイアップ、デュラントの長距離砲、カリーのフリースロー2本で逆転に成功。
その後、両チームはリードチェンジを繰り返す。キャブスのヒルとスミスによる3ポインターに対し、ウォリアーズはデュラントとトンプソンの3ポインターでお返し。するとウォリアーズが抜け出し、83-81とウォリアーズ2点リードでこのクォーターを終える。
迎えた最終クォーター。両チームはリードチェンジとタイスコアを繰り返し、緊張感漂うゲーム展開になる中、どちらかといえばウォリアーズ優勢で進んでいく。
残り3分11秒、ラブがフリースロー2本を着実に決めてキャブスが97-96とリードするも、カリーがバランスを崩しながらもレイアップを決めてウォリアーズが逆転。
直後のポゼッションで、再びラブがポストから攻めるも、イグダーラが巧みなディフェンスでボールを奪う。するとカリーがボールを運び、ビハインド・ザ・バックのドリブルからフリーの状態を作った。
ここまで徹底マークに遭い、9本放った3ポイントシュートをすべてミスしていた男が起死回生の3ポインターを成功させ、残り2分38秒でウォリアーズ4点リードに。
キャブスはスミスの3ポインターがリムに嫌われるも、ラブが執念のオフェンシブ・リバウンドでつなぎ、レブロンが長距離砲をさく裂。粘るキャブスが1点差まで追い上げる。するとウォリアーズはイグダーラが強烈なダンクをたたき込み、3点をリードすると、残り49.8秒、デュラントがディープ3ポインターをねじ込み、決定打となる6点差をつける。
タイムアウト後、キャブスはレブロンのドライブで4点差にするも、カリーからグリーンへ絶妙なアシストがとおり、試合を決定づけるダンク。最後はカリーがフリースロー2本を決めて、最終スコア110-102、ウォリアーズが激戦を制し、シリーズ3連勝で連覇に王手をかけた。
レブロンがKDについて「これまで対戦した中でベストな選手」と絶賛
ウォリアーズではデュラントがプレーオフキャリアハイとなる43得点に13リバウンド7アシストと文句なしの大活躍。フィールドゴール23投中15本、3ポイントシュート9投中6本成功に加え、フリースロー7本をすべて決め切った。
カリーはフィールドゴール16投中成功わずか3本の11得点5リバウンド6アシストだったが、試合終盤に重要な一発を沈めるなど依然として危険な存在であり続けた。なお、トンプソンは10得点、グリーンは10得点9アシスト2スティール、マギーが10得点2ブロック、ジョーダン・ベルが10得点6リバウンドをマーク。
敗れたキャブスは、レブロンが33得点10リバウンド11アシスト2スティール2ブロックを記録し、今年のプレーオフでは4度目、ファイナルでは通算10度目のトリプルダブルを達成。ほかではラブが20得点13リバウンド、フッドが15得点6リバウンド2ブロック、スミスが13得点3スティールをマークするも、終盤にリードを守り切れずに3連敗。
「俺はベストなチームメート、そして選手になろうとしているだけさ」と試合後の会見で語ったデュラント。高確率でショットを沈めただけでなく、7アシストを記録しており、チームメートへの得点機会を演出していたことも見逃せない。
また、残り49.8秒に決めたディープ3ポインターは、奇しくも昨年のファイナル第3戦で沈めた決定打に近いものがあった。この試合、デュラントは血管に冷水が流れているかのような冷徹さを終始保ち、自らの実力をいかんなく発揮していた。そのショットについて聞かれたデュラントは「ショットクロックが進んでいく中、よく見たら俺は(3ポイントラインから)かなり離れていた。でも走り込んでバッドショットを打つわけにはいかなかった。ただ、俺の周りにはキャブスの選手が何人もいたから、プルアップで放つことを決断したのさ」とコメントしている。3点差から6点差へと広げたデュラントのショットは、シリーズ初勝利を狙うキャブスとそれを心底願う会場のファンの思いを引き裂いたと言っていいだろう。
一方、敗れたレブロンは「今日の負けは間違いなくタフなものだった。この試合、俺たちには勝つチャンスがいくつもあったから」と落胆するも、「俺たちにはまだ、金曜日(第4戦で勝つ)チャンスがある。ホームで戦うポストシーズンはとても調子がいいからね。シリーズを引き伸ばすべく、48分間ハードにプレーするだけ」と口にし、最後のチャンスに懸けた。
また、43得点を記録したデュラントについて聞かれると「彼は俺がこれまで対戦してきた中でもベストな選手。ボールハンドリングにたけ、シュートまで持ち込めるだけでなく、ゲームメークもできる。彼のようなスキルとサイズとスピードを兼備した選手は、これまでのリーグにいなかったと思う」と称賛したレブロン。一昨年までのウォリアーズと、直近2年間のウォリアーズの違いについても「デュラント。それが俺の答えだ」と迷うことなく切り返していた。
キャブスが絶体絶命のピンチの中で行われるシリーズ第4戦は、9日(同8日)に行われる。ウォリアーズがスウィープでファイナルを制するのか。それとも、キャブスがホームで意地を見せるのか。クライマックスを迎えた今季の覇権争いの行方を、最後まで見逃してはならない。
WOWOW NBAファミリー伊藤大司選手(B.LEAGUEレバンガ北海道)が語る
「2018NBAファイナル ウォリアーズvsキャバリアーズ第3戦」
「やはり、KD(ケビン・デュラント)が活躍するとうれしいですね。カリー、トンプソンのシュートが入らなかったので、ウォリアーズはKDにボールを集めたのが良かった。そして、KDは大事な場面で冷静に決めて期待に応えてくれました。高校時代から強心臓でメンタルが強くて、今日はシュートタッチも良く、最強でした!一方のキャブスも前半から積極的にアタックしていて、このシリーズの中で一番良かったと思います。ただ、ディフェンスのところでミスコミュニケーションが目立ってしまい、ウォリアーズの攻撃を止められなかった。レブロン、ラブだけでなく、ロドニー・フッド、JR・スミスも積極的なプレーが良かったので、第4戦はディフェンスで頑張ってもらって、気持ちよく攻撃に切り替えられる流れを作って欲しいです」。