2018.06.06
4月15日(現地時間14日)から、計16チームによる今シーズンの王座を懸けた激闘、「NBAプレーオフ2018」が幕を開けた。バスケットボールキングでは、プレーオフ出場チームやシリーズ勝敗予想に加え、これまでのプレーオフにおける名シーンや印象的なシリーズ、ゲームなども順次お届けしていく。
<プレーオフ特別企画33>
LOOK BACK AT FINALS Round.1 ~ファイナル振り返り①~
2015年NBAファイナル
ゴールデンステート・ウォリアーズ×クリーブランド・キャバリアーズ
今年のNBAファイナルへと勝ち進んできたのは、激戦を潜り抜けてきたゴールデンステート・ウォリアーズとクリーブランド・キャバリアーズ。昨年、NBA史上初となる3年連続同カードという記録を樹立した両チームが、またしても頂上決戦の舞台に立った。ここでは、ウォリアーズとキャブスによる直近3年のファイナルを1つずつ振り返ってみたい。
■ウォリアーズ
14-15シーズンのウォリアーズは、新任スティーブ・カーHCの下、シーズンMVPに輝いたステフィン・カリーを中心にクレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンらが脇を固め、開幕5連勝で勢いに乗ると、2連敗をはさんで怒濤の16連勝。23試合を終えて21勝2敗と、驚異的な成績を残す。その後も白星先行で勝ち進み、終盤には12連勝でさらに加速。前のシーズン(51勝)から16勝も上積みし、リーグトップの67勝15敗で意気揚々とプレーオフへ。
ニューオリンズ・ペリカンズとの1回戦をスウィープで勝ち上がると、メンフィス・グリズリーズとのウエスト準決勝を4勝2敗、ヒューストン・ロケッツとのウエスト決勝に4勝1敗で制し、1975年以来、40年ぶりとなるファイナル進出を決めた。
■キャバリアーズ
このシーズンのキャブスは、まったく新しいチームとしてスタートしたと言っていい。14年夏にレブロン・ジェームズが4年ぶりに復帰し、トレードでオールスターフォワードのケビン・ラブを獲得、指揮官にはデイビッド・ブラットが就任するなど、新しいことづくめだった。レブロン、ラブ、そして生え抜きのスコアリングガード、カイリー・アービング(現ボストン・セルティックス)による“ビッグ3”形成で、一躍優勝候補に。
ところが、新メンバーが多いこともあり、キャブスは開幕から連勝と連敗を繰り返す。12月末から1月中旬までレブロンが戦線離脱したこともあり、15年1月中旬には19勝20敗と勝率5割未満に低迷。しかし、そこから12連勝で一気に巻き返し、イースト2位の53勝29敗でレギュラーシーズンを終える。するとプレーオフではイーストを12勝2敗で駆け上がり、07年以来となるファイナルへ。1回戦でラブが肩の負傷により戦線離脱、カイリーも膝の痛みにより本調子ではなかったものの、レブロンが攻防両面でチームをけん引し、頂上決戦の舞台に立った。
■GAME1~3
初戦は第4クォーター終盤にカリーのレイアップをカイリーがブロックし、キャブスが延長に持ち込むも、そこでウォリアーズがキャブスを圧倒し、108-100で勝利。レブロン44得点の奮闘も実らず。だがその延長で、カイリーが左膝膝蓋骨の骨折により戦線離脱。キャブスはラブだけでなくカイリーをも失ってしまい、ウォリアーズとの戦力差は歴然だった。
カイリーの代役にマシュー・デラベドーバ(現ミルウォーキー・バックス)を抜てきして臨んだ第2戦は、キャブスがロースコアな展開に持ち込み、第3クォーター終了時点で62-59と3点をリード。第4クォーター残り約1分半で、キャブスが5点をリードするも、ハリソン・バーンズ(現ダラス・マーベリックス)の3ポイントプレーが決まり、残り8.0秒にカリーが鮮やかなレイアップを決めて同点。試合は再び延長に。
しかし、この日はキャブスに軍配。レブロンやデラベドーバのフリースローで勝ち越し、1勝1敗のタイへ持ち込んだ。レブロンはこの日、39得点16リバウンド11アシストのトリプルダブルを記録し、試合終了のブザーが鳴ると、勝利の雄叫びを上げた。
キャブスのホームで行われた第3戦も、前半を終えて44-37と、キャブスが徹底的にウォリアーズの爆発を阻止。第3クォーター終了時には72-55と、ウォリアーズから17点をリードする。ところが、最終クォーターにウォリアーズが本来の爆発力を取り戻してキャブスを猛追。残り2分45秒にはカリーの3ポインターで1点差まで詰め寄る。
するとキャブスは、デラベドーバが値千金の3ポイントプレーを決め、レブロンの3ポインター、トリスタン・トンプソンのフリースローも決まって8点差をつけた。その後もフリースローで着実に加点していったキャブスが96-91で接戦を制し、2勝1敗とリード。大黒柱レブロンはこの日も40得点と大活躍。デラベドーバの20得点も光った。
だが、第2戦から不調だったカリーがこの試合の第4クォーターだけで5本の3ポインターを含む17得点。キャブスが最も恐れていた男は、徐々にシュートタッチを取り戻していった。
■GAME4~6
2連敗を喫したウォリアーズは、第4戦を前にスターター変更の策に出た。センターのアンドリュー・ボーガット(元ウォリアーズほか)をベンチスタートにし、オールラウンダーのアンドレ・イグダーラをスターターに昇格。カリー、トンプソン、グリーン、バーンズにイグダーラという“スモールボール”でキャブスに襲い掛かる。
コート上の5人全員がボール運びから3ポイントシュート、ディフェンスもこなすラインナップの前に、キャブスは動揺を隠せず、第4戦は103-82でウォリアーズが圧勝。イグダーラはカリーと並ぶチームトップの22得点をマークしただけでなく、レブロンをフィールドゴール22投中成功7本と、“わずか20得点”に抑え込んだディフェンスでも際立っていた。
シリーズ第5戦。キャブスはレブロン、トンプソン、JR・スミスらを中心に、ウォリアーズに食らい付くものの、第4クォーターでカリーの爆発を許して敗退。カリーは最後の12分間だけで17得点を挙げるなど、このシリーズ最多となる37得点を奪い、ウォリアーズはファイナル制覇まであと1勝とした。
キャブスのホームで行われた第6戦は、レブロンやスミス、トンプソン、ティモフェイ・モズゴフ(現ブルックリン・ネッツ)らが得点を重ねてウォリアーズに対抗するも、ウォリアーズは5人が2ケタ得点を挙げるバランスの良さを見せ、28アシストをマーク。キャブスに的を絞らせないオフェンスを展開し、105-97で勝利。シリーズ戦績を4勝2敗とし、40年ぶりとなるNBAチャンピオンに。
この試合、ウォリアーズはカリーとイグダーラが共に25得点、グリーンが16得点11リバウンド10アシストのトリプルダブルを挙げる活躍で、粘るキャブスを打ち砕いた。
第5戦でゲームハイとなる40得点に14リバウンド11アシストを挙げ、シリーズ2度目のトリプルダブルを達成したレブロンは、2勝3敗で王手をかけられるも、ウォリアーズ撃破をあきらめたりはしなかった。
「俺は(シリーズ突破に)自信を持ってる。なぜなら俺は世界のベストプレーヤーだからだ」と豪語し、「シンプルなことだ」と言い残したレブロンだったが、第6戦の末に敗れてしまう。
15年のファイナル。レブロンはいずれも両チームトップとなる平均45.7分35.8得点13.3リバウンド8.8アシストと、超人的な個人成績を残した。しかし、フィールドゴール成功率は39.8パーセント、3ポイントシュート成功率31.0パーセントと、レブロン本来の“効率性”を欠き、がむしゃらに攻め立てていたことがわかる。
とはいえ、チーム第2、3の得点源であるカイリーとラブを欠いた状況では、これが最大限のパフォーマンスだったと言っていいだろう。
イグダーラやトンプソン、グリーンといったディフェンダーが交代でマッチアップしてきたウォリアーズに対し、攻め手を欠いたキャブスとしては、レブロンが攻め続けるしかなかったと言わざるをえない。
一方のウォリアーズは、カリーがシリーズ平均26.0得点5.2リバウンド6.3アシスト1.8スティール、イグダーラが同16.3得点5.8リバウンド4.0アシスト1.3スティール、トンプソンが同15.8得点4.3リバウンド、グリーンが同13.0得点8.3リバウンド5.0アシスト2.2スティール1.2ブロックとバランスの良いオフェンスを展開。
シリーズMVPに輝いたのは、第4戦からスターターに昇格したイグダーラ。シリーズの流れを変え、一気にウォリアーズを加速させたことが高く評価された。
15年8月。チャンピオントロフィーとファイナルMVPトロフィーを持ち込んで来日したイグダーラは、相手をシャットダウンさせるディフェンスのコツとして、“Step ahead”、つまり相手の一歩先を読んで対応することを挙げていた。イグダーラはレブロンという強敵相手にもひるまず、一歩先を読んだ動きでターンオーバーを誘発。この男はレブロンにショットを決められようとも、イージーショットを決して許さないタフなディフェンスを見せ、ウォリアーズ優勝の大きな要因の1つとなったのである。
若手が多くを占めた当時のウォリアーズにおいて、キャリア10年目のイグダーラの存在は、スタッツ以上に大きなものだった。
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