ウィギンズ、パーカー、エンビードというトップ3争いとなった2014年
2014年のNBAドラフトは、クリーブランド・キャバリアーズが全体1位でアンドリュー・ウィギンズ(現ゴールデンステイト・ウォリアーズ)、ミルウォーキー・バックスが2位でジャバリ・パーカー(現サクラメント・キングス)、そしてフィラデルフィア・セブンティシクサーズが3位でジョエル・エンビードを指名した。
キャリア6年目を迎えたこの年のドラフト指名選手のうち、オールスターに選出されたのはエンビードと2巡目全体41位指名のニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)のみ。ウィギンズや4位指名のアーロン・ゴードン(オーランド・マジック)、6位指名のマーカス・スマート(ボストン・セルティックス)など、所属チームで主力として活躍している選手は多いものの、現段階でこの年のベストプレーヤーはエンビード、ヨキッチという現在リーグを代表するビッグマンたちなのは間違いない。
この年のドラフト前の時点で、トップ3候補はウィギンズ、パーカー、エンビードという評価は堅く、誰がトップ指名になるのかと注目を集めていた。ウィギンズとエンビードは同じカンザス大学、パーカーはデューク大学出身のアーリーエントリー組(1年生)で、同年のドラフトロッタリー(指名権の抽選)でキャブズはわずか1.7パーセントという確率ながら、全体1位指名権を引き当てていた。
2010年9月にキャブズのフロント入りを果たし、14年2月にジェネラルマネジャー(GM)へと昇進したデイビッド・グリフィン(現ニューオーリンズ・ペリカンズ)は、カンザス大のビル・セルフHC(ヘッドコーチ)へウィギンズとエンビードについて聞いたところ、ウィギンズはオールスターになれるポテンシャルを持ち、エンビードは同世代に1人の才能を持ち、フランチャイズを変えることができるかもしれない選手と絶賛していたという。
実際、キャブズはドラフト当日から2週間を切った時点でエンビードとワークアウトを実施。そこでエンビードは、当時のビタリー・ポタペンコAC(アシスタントコーチ/元セルティックスほか)とポストでマッチアップして圧倒。すると今度はミドルレンジでショットを放ち、流れるようにスムーズなフォームで決め切ると、今度は3ポイントラインからショットを放つこととなった。
「アキームの再来」とグリフィンが絶賛も、ケガのためエンビード指名を回避
3月18日(現地時間17日、日付は以下同)に『Bleacher Report』へ掲載された記事の中で、エンビードが最初のショットを放り込むと「どうして僕を1位指名しないの?」とグリフィンへ向かって叫んだという。
そこから、もう1本決めると「僕がどれだけいい選手か見てくれ!」、その後も連続して沈めたエンビードは「君は僕のことが必要でしょ、グリフ!」「そうだろ、グリフ! 僕をドラフトしなきゃ!」と連呼。
5本目を決めると「僕は本当にいい選手だ!」、6本目も決まると「僕が1位指名されるべきだ!」、そして7本目も成功させると「僕を指名しない理由なんてある?」とまくしたてた。
グリフィンはエンビードとのワークアウトについて「これまで見てきた中で、ベストなワークアウトだった。彼はアキームの再来のようだ」と語ったという。アキームとはもちろん、1984年のドラフトで全体1位指名されたアキーム・オラジュワン(元ヒューストン・ロケッツほか)のこと。センターの体格で攻防両面に渡って大車輪の活躍をしたNBA史上最高級のビッグマンで、軽やかかつ巧みな動きと柔らかいシュートタッチでマッチアップ相手を圧倒した“ドリームシェイク”はあまりにも有名な必殺技である。
ワークアウトを終えると、エンビードはキャブズのフロント陣とディナーを共にしたのだが、翌朝にエンビードの右足が悲鳴を上げた。「歩けない」と当時の代理人へ明かしたエンビードは、結局3位でシクサーズにドラフト指名された後、NBAデビューするまで2年間を要した。
2016-17シーズンにようやくNBAデビューを飾ったエンビードは、ケガのため31試合のみの出場に終わるも、平均25.4分20.2得点7.8リバウンド2.1アシスト2.5ブロックをマーク。昨季までの2シーズンも60試合以上に出場しており、昨季は平均27.5得点13.6リバウンド3.7アシスト1.9ブロックという驚異的な成績を残し、シクサーズをけん引している。
当時のサム・ヒンキーGMと、現在も指揮を執るブレット・ブラウンHCにとって、エンビードのケガはフランチャイズの将来を変えたと言っても過言ではない。