NBAプレーヤーにとって、チャンピオンリングは他の何にも変えがたい勝者の証である。多くの選手がリングを獲得することなくキャリアを終えるなか、選ばれし者のみが手にすることのできるこのリングは、優勝チームのアイデンティティを表現した特別なデザインをあしらい、チャンピオンチームに授与される。
多難な2020-21年シーズンのプレーオフを駆け上がり頂点に立ったロサンゼルス・レイカーズは、今シーズンの開幕前にチャンピオンリングを受け取った。新型コロナウイルスの影響により、セレモニーは無観客での開催に。コミッショナーのアダム・シルバーは『Fox Sports』に対して「極めて異常な時を過ごしており、ファン不在の異例のリングセレモニーとなりました。本当であれば、ここには2万人のレイカーズファンがいたはずです。なので、我々はどこかで埋め合わせをするつもりでいます」とコメント。しかし、そんな困難ななかで授与されたリングは、レイカーズにとって生涯忘れられない存在となるだろう。
LAを拠点とするジュエリーブランド、ジェイソン・オブ・ビバリーヒルズが、ジョーダン ブランドとのコラボスニーカーなどで知られるDon Cの協力のもとデザインした今回のチャンピオンリングは、合計804個ものストーンが散りばめられ、15.50カラットのイエロー/ホワイトダイヤモンド、16.45カラットのパープルアメジストストーンを使用した、NBA史上最も高級なリングとなっている。
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リング上部には、0.95カラットのパープルアメジストを並べ、レイカーズのアイコニックなロゴをデザイン。また、サイドにはロスターに名を連ねた選手の個人名と、レギュラーシーズンおよびプレーオフの成績が刻まれている。
そして、このリングにはレイカーズの歴史を支えた往年のレジェンドと、ヘリコプター墜落事故により命を落とした故コービー・ブライアントへのトリビュートが込めらている。実は、このリングのリングトップは、取り外しが可能。そこを開けると、昨年のマンバエディションを彷彿とさせるブラックマンバのテクスチャーの上に、ウィルト・チェンバレン、マジック・ジョンソン、カリーム・アブドゥル・ジャバー、ジェリー・ウエストら、永久欠番を受けた往年のレジェンドたちのジャージが隠されており、最下部にはコービーが現役時代に着用した「8」と「24」のプレートが色違いで配置されている。
ジェイソン・オブ・ビバリーヒルズのデザイナー、ジェイソン・アラシェベンは『ESPN』のインタビューにおいて、レイカーズのリングデザインが自身にとって大きな挑戦であったと語っている。
「僕たちは記録的な早さでリングを仕上げなければいけませんでした。なぜなら、僕たちに与えられた時間は、たったの4~5週間だったのです。正直、これは前例のないことで、通常であれば不可能でした。ですが、従業員たちが一晩中滞在して遅くまで作業してくれたからこそ、成し遂げることができました。そんなリングには、語るべきストーリーが数多く込められています」
また、本プロジェクトに携わったDon Cもアラシェベンの仕事を賞賛している。
「この仕事に携われたことに、ただただ恐縮しています。ジェイソン・オブ・ビバリーヒルズが、この瞬間を私に共有してくれたことには、感謝の気持ちしかありません。だから、私からリングについて多くを語ることはありません。なぜなら、彼の口から話してほしいと思っているからです。私たちは、このリングに誰もが楽しめるサプライズを詰め込みました。ジェイソンは、正真正銘のGOATです」
リーグの誰にも否がないなかでの突然の中断、そして観客のいない隔離施設での開催。2019-20年シーズンが過去に類を見ないタフなシーズンだったことに、疑いの余地はない。だからこそ、昨季の優勝は、レイカーズにとっても格別だろう。
球団は、ファンが帰ってくるまでステイプルズセンターに優勝旗を掲げないことを誓った。レイカーネイションが再び集結する日には、この唯一無二のリングとともに盛大なセレモニーが行われるはずだ。
文=Meiji