1990年代後半から2000年代中盤にかけて、アレン・アイバーソン(元フィラデルフィア・セブンティシクサーズほか)はリーグ最高級のスコアラーとして恐れられてきた。
アイバーソンは公称183センチ74キロと小柄ながら、無尽蔵のスタミナと電光石火のクイックネス、ボールハンドリングを駆使してショットの雨を浴びせて高得点を連発。歯に衣着せぬ言動や練習嫌いな点など強烈な個性も持ち合わせており、今なお絶大な人気を誇るレジェンドである。
NBAキャリア14シーズンで新人王、得点王4度、スティール王3度、オールスター選出11度、オールNBAチーム選出7度を誇り、01年にはシーズンMVPにも輝き、16年にバスケットボール殿堂入りも果たしている。
5月8日(現地時間7日、日付は以下同)に『95.7 The Game』の「Damon, Ratto & Kolsky」へゲストとして出演したゴールデンステイト・ウォリアーズのスティーブ・カーHC(ヘッドコーチ)は、アイバーソンについて「思い返すと、私はアイバーソンが大好きなんだと思うね。彼の持つ情熱、エナジー、気持ちが大好きでね」と語り、似ている現役選手としてラッセル・ウェストブルック(ワシントン・ウィザーズ)の名を挙げていた。
「私が思うに、多くの点で、(アイバーソンは)ラッセル・ウェストブルックに似ていたんだ。この見方は皆が好むものじゃないかもしれないがね。もしかすると、彼のゲームについて好かれていない面もあるのかもしれない。でも彼が持つ恐ろしいまでのアスレティック能力と、毎晩勝利を求める欲望の強さは認めざるをえない。それこそ、私がA.I.(アイバーソンの愛称)について大好きなところなんだ」。
キャリア平均41.1分26.7得点3.7リバウンド6.2アシスト2.2スティールのアイバーソンに対して、ウェストブルックは平均34.7分23.2得点7.4リバウンド8.5アシスト1.7スティール。前者は強烈なスコアラーで、後者はオールラウンドな能力を持つポイントガードなのだが、カーHCは両選手についてこう話す。
「あの2人を今観てみてくれよ。両者のゲームは、ボールハンドリングの緩急とそこからの突破がベースになっている。アイバーソンはそのハンドリングでル―ルを変えたんだ。彼は自らのプレーによって、次世代の選手たちをも変えてしまったのさ」。
アイバーソンは左右に大きく振って相手選手を幻惑させるクロスオーバー、ディレクションチェンジやストップ&ゴーでいとも簡単にマッチアップ相手を置き去りにしてきた。
さらに04-05シーズン以降、NBAではディフェンダーがマッチアップ相手の手や腕に接触するとファウルをコールされるようになった。このハンドチェックルールの変更によって、ドライブを得意とする選手たちがリーグを席巻。自由自在にコートを暴れ回り、ショットやパスを繰り出せるようになった。
ウェストブルックもその例外にもれず、32歳となった今でもリーグ屈指のクイックネスを駆使し、ヘジテーションから一気にギアを上げてペイントエリアを強襲し、レイアップにダンク、アシストで持ち味を十二分に発揮している。
アイバーソンがシーズンMVPに輝いたのは今から20年前のことだが、その影響力は健在で、現役選手たちにも強烈なインパクトを与えてきたことは間違いない。