「試合のリズムを変えたかった。チームにエナジーを持ち込みたかった。できたら笛も変えたかったんだ。だからハードファウルに踏み切ったんだ」
昨季ウェスタン・カンファレンス・ファイナルまで勝ち上がったデンバー・ナゲッツは、最後まであきらめずに戦い抜いたものの、6月14日(現地時間13日、日付は以下同)に行なわれたフェニックス・サンズとのウェスタン・カンファレンス・セミファイナル第4戦を118-125で落とし、シリーズ4連敗で姿を消した。
見事ナゲッツをスウィープし、ウェスト決勝進出を決めたサンズでは、クリス・ポールがゲームハイの37得点に7アシスト2スティール、デビン・ブッカーが34得点11リバウンド4アシストと、この日も両ガードが大暴れ。
さらにミケル・ブリッジズが14得点6リバウンド、ディアンドレ・エイトンが12得点7リバウンド、ジェイ・クラウダーが9得点10リバウンド4ブロックをマークして勝利に貢献。
ナゲッツはウィル・バートンが25得点5リバウンド2スティール、マイケル・ポーターJr.が20得点3スティール、モンテ・モリスが19得点6アシスト、ファクンド・カンパッソが14得点を残すも、試合終了の場にMVPのニコラ・ヨキッチの姿はコートになかった。
この日のヨキッチは22得点11リバウンド4アシストを残していたものの、第3クォーター残り3分52秒にキャメロン・ペインへハードファウル。自らのショットミスによってサンズボールとなり、ボールを手にしたペインの顔面へ右腕を振り回してしまい、フレグラントファウル2が宣告されて一発退場となってしまったのである。
「僕は試合のリズムを変えたかった。チームにエナジーを持ち込みたかった。できたら笛も変えたかったんだ。だからハードファウルに踏み切ったんだ。僕が彼に(腕を)ぶつけたかって? 分からない。だから僕は彼に謝ったんだ。彼をケガさせようとは思っていなかったから」。
その時点でナゲッツは8点ビハインド。サンズのペースでゲームが進んでおり、流れを変えるべくヨキッチはハードファウルを断行。「正直に明かすと、まさか退場になるとは思わなかった」と語ったものの、ペインがコートに倒された直後にブッカーがヨキッチへ歩み寄り、一触即発の状態に。
ブッカーは「僕が言いたいのは『何やってんだよ?』ってこと。あれはエモーショナルなプレーだった。フラストレーションがたまったことで起こったファウルだ。辛いことだ。僕はチームメートを守ったんだ」とその瞬間を振り返る。
この試合の会場はナゲッツのホームだったものの、公称211センチ128キロのビッグマンが勢いよく振りかぶったこともあり、ヨキッチとナゲッツにはあまりにも厳しいコールとなった。「僕は何度もジョーカー(ヨキッチの愛称)と対戦してきた。彼が悪意のある選手じゃないことは知っている」とブッカーが補足したように、故意にペインをケガさせようとしたプレーではなかったものの、ヨキッチが繰り出したハードファウルは思わぬ展開へと発展し、ナゲッツの今シーズンは事実上の終焉を迎えた。
「あのファウルはやってはいけなかった。もちろん、それは僕の責任だ。でも今となっては変えられない。起きてしまったんだ」と自らのハードファウルを悔やんだヨキッチ。ナゲッツのフランチャイズ史上初のMVPに輝いた男にとって、悔やんでも悔やみきれない瞬間となってしまったことは残念としか言いようがない。
それでも、今季NBAで唯一72試合にフル出場し、相棒ジャマール・マレーがケガで離脱した後もナゲッツへ勝利をもたらし続けたヨキッチの働きぶりは、MVPに十二分に値する。
「次のシーズンをフレッシュかつ健康体でスタートして、また新たなランができることを願っている」とマイケル・マローンHC(ヘッドコーチ)が話したように、ヨキッチとナゲッツの選手たちには今季味わった悔しい思いをモチベーションに変えて、来季リベンジすべく臨んでほしい。