2021.06.09

ドラフト2巡目指名からNBAのMVPとなったニコラ・ヨキッチが語る「最大の業績」とは?

MVPに輝いたヨキッチが母国セルビアの子どもたちへ語った[写真]=Getty Images
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「僕が本当に望んでいること、それは子どもたちが外へ出て、スポーツをすること。もし僕が故郷の子どもたちへそうしてあげることができたら、自分にとって最大の業績になると思う」

 6月9日(現地時間8日、日付は以下同)。NBAは2020-21レギュラーシーズンのMVP(最優秀選手賞)に、デンバー・ナゲッツニコラ・ヨキッチが選ばれたことを発表した。

 1976-77シーズンにNBAとABAが統合してからというもの、シーズンMVPに輝いた選手たちのうち、ドラフト全体1位で指名された9選手が計17度、2位から5位までに指名された6選手が計10度も手にしており、世界最高のリーグでMVPに輝くことは選手たちにとって最大級の名誉以外の何物でもない。

 そう考えると、今季ヨキッチが選ばれたことは歴史的快挙と言っていい。ナゲッツが誇る万能型センターが「正直な話、僕はNBAにいなかったかもしれないと思っている」と『Inside The NBA』へ話したように、ヨキッチは2014年のドラフト2巡目41位でナゲッツから指名された時はタコベルのCMが流れていて、当の本人は寝ていたのだから驚きだ。

「ホーム(セルビア)でバスケットボールを始めた時の僕のゴールというのは、ユーロリーグでプレーすることだったんだ。自分の国では最も近いトップリーグであり、いつかセルビアのビッグクラブでプレーし、実力を磨いていけると思っていた。でもデンバー・ナゲッツが僕をドラフト指名してくれたことで、僕はNBAプレーヤーになる機会を手にすることができたんだ」。

 MVP受賞後に同メディアへそう語ったように、ヨキッチは15-16シーズンからナゲッツへ入団。公称211センチ128キロのサイズに柔らかいシュートタッチと抜群のバスケットボールセンスを兼備した男は、着実に成績を伸ばしていき、キャリア4シーズン目となった18-19シーズンにオールスターへ初選出。

 チームは2シーズン連続でウェスタン・カンファレンス9位に終わり、1勝差でプレーオフ進出を逃すという悔しい経験を経て、同シーズンにプレーオフ出場。ナゲッツはヨキッチ、ジャマール・マレーという強固な核を軸に、強豪ぞろいのウェストでリーグ有数のチームへと変貌していった。

 ルーキーシーズンからヨキッチを間近で見てきたマイケル・マローンHC(ヘッドコーチ)が「我々は長い間、アンダードッグ(勝ち目の少ない)のチームとしてやってきた。アンダードッグのチームを代表する存在であるニコラがMVPを勝ち取ったんだ」と大黒柱を称えるのも無理はない。

 キャリア6シーズン目となった今季、NBAではジョエル・エンビード(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)やステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)、ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)、クリス・ポール(フェニックス・サンズ)といったMVP候補が乱立する中、ヨキッチは72試合にフル出場し、いずれもキャリアハイ(またはタイ)となる平均34.6分26.4得点10.8リバウンド8.3アシストを残し、ナゲッツをウェスト3位となる47勝25敗へと導く殊勲者となった。

  

 ナゲッツは4月中旬にマレーが左膝の前十字靭帯を断裂したことで今季絶望という窮地に陥るも、ヨキッチを中心に白星を重ねていき、3年連続のプレーオフ進出を決めた。

「これまでと今シーズンの違いは、すごくいい状態でシーズンを始めることができたこと。今シーズン全体を通じて、僕は人生でもベストなシーズンを送ることができたと思う。このトロフィーを手にしたことができたから、人生でベストなシーズンになったね」とヨキッチは振り返っていた。

 とはいえ、ヨキッチはまだ26歳。現在はサンズとプレーオフのウェスタン・カンファレンス・セミファイナルを戦っている最中で、この男のキャリアはまだまだ続いていくのだが、自身のレガシーとして母国セルビアの子どもたちへこんな言葉を残している。

「僕が本当に望んでいること、それは子どもたちが外へ出てバスケットボールをプレーすること。それがバスケットじゃなくてもいい。彼らがやりたいと思うスポーツをしてくれればいい。外へ出て、スポーツをすること。もし僕が故郷の子どもたちへそうしてあげることができたら、自分にとって最大の業績になると思う」。

 NBAという世界最高のプロバスケットボールリーグで確固たる地位を築き、オールスター、オールNBAチーム選出を経てMVPまで到達したヨキッチ。今後は母国セルビアでも、今まで以上に影響力をもたらすヒーローとして絶大な支持を集めるに違いない。

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