最後は無念の負傷交代も「誰よりも努力したことは胸を張って言える」
3月8日(現地時間7日)のアトランティック10トーナメント1回戦を制した渡邊雄太所属のジョージワシントン大学は、その翌日となる9日(同8日)、続く2回戦でセントルイス大学と対戦した。
カンファレンスゲームでの順位が11位のジョージワシントン大に対し、セントルイス大は6位のチーム。 しかし、前日12点差を覆したジョージワシントン大はその勢いを持ちこみ、いいスタートを切った。開始から約4分間で2-7とされたものの、そこから連続得点で逆転。10-7で迎えた前半開始7分45秒に渡邊がディフェンスリバウンドを奪い、コースト・トゥ・コーストでジャンプシュートを記録し10連続得点で12-7とした。その直後にタイムアウトとなり、ベンチへ戻った渡邊は、チームメートとジャンプして体をぶつけ合う。残り9分54秒には16-15とされたが、渡邊がゴール下にチームメートを集めて声をかけると、再びジョージワシントン大のエンジンがかかった。
ボー・ジグラーのフリースロー1本とジャイアー・ボルデンの3ポイントで5点リードとすると、2分弱のベンチから戻って来たばかりの渡邊が、ドリブルしながらショットクロックのブザーとともにフリースローライン内側からジャンプシュートを決めた。22-15とした同5分9秒には、ゴール下に入ったジグラーに外角から好アシストを繰りだし得点につなげる。さらに、同4分12秒には自らもフリースローを2本成功させて8点差。終了間際、必死についたディフェンスがファウルとなり、フリースロー1本を決められてしまう。32-21で前半を折り返したが、渡邊はやや不満げな表情でコートを後にした。
常に周りを気づかい、キャプテンとしてチームを鼓舞
前半終盤の場面では、相手からチャージングを取って倒れこんだチームメートへすぐに手を貸しに行った渡邊。後半開始早々には、アーノルド・トロがリバウンドで競って相手と睨み合いになると、すぐさま詰め寄って2人を突き放した。シード的には差のある相手との1戦。チームを精神的にも引っ張ろうとする様子が前半から随所に感じられた。
しかし、後半に入るとジョージワシントン大はシュートに苦しむ。一方、セントルイス大は徐々に調子を上げていき、開始9分9秒に38-39と逆転を許してしまう。何とか踏んばるジョージワシントン大は、残り9分36秒からテリー・ノーランのフリースロー、渡邊の3ポイントで47-47と粘りを見せる。ここから追いあげようというムードが高まり、渡邊自身も「今から流れに乗っていける」と思った貴重なシュートだった。その後、4点リードをされたが、同8分に渡邊が2本のフリースローを成功させ再び2点差に。
後半中盤、渡邊にまさかのアクシデント
さらに同7分43秒、渡邊がスティールを奪って速攻から同点となるレイアップを試みた。 だが、それは現実にならなかった。同点になる代わりに渡邊は右足をつかみ、床に倒れこんでしまった。足首をひどくねん挫して歩くことさえできなくなり、患部は大きく腫れていた。それでも、試合に戻りたい気持ちでいっぱいで、トレーナーに訴えテーピングを巻いてもらったが、「コートに戻るなら、ちゃんと走れるところと飛べるところを見せろ」と言われてしまう。渡邊はその姿を見せたかった。しかし、できなかった。
ベンチで真っ赤になった顔を手で覆った渡邊は、「コートに立てなくても、チームの一員として最後までしっかり応援しよう」 と最後は声を振り絞って仲間を鼓舞したが、エースのいなくなったチームはみるみる点差を広げられ、最終スコア63-70で敗退。
この敗戦で、渡邊の大学4年間のバスケット生活が終わった。 試合後、渡邊は流れる涙をこらえきれなかった。 しかし、5年前に英語もわからないまま渡米した少年が、大学で優秀な成績を収め、チームのキャプテンとなり、エースとして奮闘した。誇るべき4年間だった。「誰よりも努力したというのは胸を張って言えることだと思う」
近い将来、日本バスケット界を担う23歳は、言葉を詰まらせながらそう言った。
"All Our Lives We'll Be Proud to Say"…We have the best fans around!!! Thank you for always supporting the Buff & Blue! #LoyalToGW #RaiseHigh pic.twitter.com/u0xlGz92sJ
— GW Men's Basketball (@GW_MBB) March 9, 2018
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