川崎ブレイブサンダースとの上位決戦は、サンロッカーズ渋谷にとって最悪の結果となった。ホームの青山学院記念館で2連敗を喫し、B1中地区首位の座を三遠ネオフェニックスに明け渡して3位に転落。クォーターごとに見ればSR渋谷が上回る時間帯もあったが、2試合続けて10点差以上をつけられ敗れたことによるダメージは決して小さくないだろう。
もっとも、タイトなディフェンスや多彩なオフェンスなど見どころもあった。とりわけアイラ ブラウンのはつらつとしたプレーは明るい材料だ。日本代表にも名を連ねる帰化プレーヤーは2戦連続でチームのトップスコアラーとなった。
15日の第1戦では24ポイントを挙げ、4本のダンクをぶち込んだ。1試合4本のダンクは、ここまでのB1リーグで最多記録だ。続く16日の第2戦では、「(リバウンド争いで苦戦した)前日の結果を受けて、インサイド中心のプレーを意識」し、得点こそ15ポイントにとどまったものの、6つのディフェンスリバウンドを含むチームトップの11リバウンドを記録した。トランジションからの速攻を武器とするSR渋谷において、ブラウンの攻守にわたる貢献は必要不可欠と言えるだろう。
193センチのブラウンは、2メートル超えの選手がひしめくゴール下において、当然ながらサイズでは勝負できない。そのため、「激しく動いて相手を消耗させる」機動力と持ち前のパワフルさを武器に戦い、並みいる外国籍選手とも互角のバトルを繰り広げている。加えてシュートレンジの広さも大きな魅力で、ここまで3ポイントの決定率はリーグナンバーワンの68パーセント。中あり外あり、的を絞らせないオフェンスでマークにつく相手選手を混乱に陥れている。
アメリカのテキサス州出身で2011年に来日し、今年8月に日本に帰化。日本国籍を取得した理由として「妻が日本人だし、もっと日本に近づきたかった」と話す。5年間を過ごして「日本人の優しいところが好き。温泉や相撲など、日本の文化も非常に気に入っている」と愛着も持っている。
日本国籍取得直後の9月には2016 FIBAアジア・チャレンジを戦う日本代表にも選出された。「自分より大きな選手たちと戦うのは非常に良い経験になっている。今日のような試合にもその経験を活かすことができた」と話すように、国外で得た経験をSR渋谷でのプレーにも還元している。
次節、三遠ネオフェニックス戦に向けては「三遠はここまでとても良いバスケットをしている。僕たちも自分たちの良さを出せるように戦っていきたい」と語り、特に日本代表で同僚となった太田敦也について、「彼とはとても仲が良くて、兄弟のような間柄だよ。非常にハードなプレーをしてくるし、スキルも高い」と警戒する選手の1人に挙げた。「次の試合が待ちきれない」と語るブラウン。三遠とのアウェイ決戦は、10月22日、23日に浜松アリーナで開催される。
文=山口晋平