ヒーローインタビューが始まると、国立代々木競技場第二体育館に驚きの声が上がった。
12月16日に開催されたB1リーグ第13節第1戦のアルバルク東京とレバンガ北海道の一戦で、A東京を勝利に導いたザック・バランスキーが流暢な日本語でインタビューに応え始めたからだ。
「僕が話を始めると、だいたいアリーナがざわつきますね」と苦笑いしながら語るバランスキーは、日本に生まれ、幼少期に一時帰国したものの10歳で再び来日した、長野育ちのアメリカ人だ。
高校時代は長野の東海大学付属第三高校(現東海大学付属諏訪高校)で2008年から3年連続でウインターカップに出場し、2010年には宮崎の延岡学園高校に勝利してベスト8入りを果たした。「最初に全国で名前を知ってもらえるきっかけになったのが1年生の時のウインターカップ。会場に入った瞬間に『これがウインターカップだ!』というのを感じ、あの雰囲気にすごい憧れがありました」と本人が語るとおり、ウインターカップを経て飛躍を果たし、東海大学に進学。昨季、アーリーエントリーで国内有数の強豪チームへ仲間入りした。
ヒーローとなった北海道戦は第1クォーター3分32秒から菊地祥平に代わりコートイン。サイズに勝る相手に闘志溢れるプレーで対抗し、要所でアウトサイドシュートを鮮やかに決めると、このゲームのカギを握った第3クォーターでは、退場処分を受けたトロイ・ギレンウォーターに代わり、献身的なディフェンスと勝負どころでの決定力の高さを発揮し、チームをけん引した。
伊藤拓摩ヘッドコーチが「ザックが良いプレーでチームを引っ張ってくれた」と語ったとおり、今季最多の20点を挙げ、チームを窮地から救う大活躍。「身長は小さいが安定した仕事人を目指している。スタッツには残らずとも、泥臭いプレーでがんばりたい」とバランスキーが語ると、この“いぶし銀”らしいコメントに場内は拍手喝采。「僕が話をすると驚く人が多いということは、試合ごとに新しいお客さんが見に来てくれている証拠だと思います。そういう意味ではとてもうれしく思っています。(僕の日本語に)そろそろ慣れてほしいですけど(笑)」と、にこやかに微笑んだ。
元NBA選手のディアンテ・ギャレット、エースの田中大貴へと注目が集まるA東京だが、好調を維持する“仕事人”の活躍からも目が離せない。
文=村上成