昨年華やかに開幕して、日本バスケットボール界の新時代を切り開いたBリーグ。ゲーム会場となるアリーナでは、各クラブが趣向を凝らしたイベントを開催している。冬真っただ中の2月に入ってすぐのこと、「三遠ネオフェニックスのホームゲームにブラックサンダーマスクマンが登場!?」という興味をそそられる情報を耳にした。
コンビニで手軽にゲットでき、女性を中心に絶大な人気を誇るチョコレート菓子『ブラックサンダー』。疲れた体にエネルギーを与えてくれる、言わずと知れた名菓だ。そのブラックサンダーの製造元である有楽製菓株式会社が、2月1日に三遠のスポンサーになることが決定したと同時に、“ブラックサンダーマスクマン”という謎の男がアリーナに登場するというニュースが流れてきた。
試合開催日は冷たい雨が降るあいにくの天気だったが、連勝を続ける三遠の勢いもあってか、豊橋市総合体育館はブースターたちの熱気で溢れていた。会場ではバレンタインデー企画として選手にお菓子を贈る企画が実施されており、各選手の等身大パネルの前に置かれた箱にはブースターたちから選手に向けた贈り物でいっぱいだった。お菓子を贈ったブースターには3月の試合で選手たちからホワイトデーのお返しがあるそうだ。
仙台89ERS戦の2戦目となる2月6日、この日の試合は、第1戦の反省を活かした三遠が序盤から安定した試合運びを見せ、加入から約2カ月が経ちチームに順応してきたジョシュ・チルドレスや、日本代表候補重点強化選手のポイントガード、鈴木達也らが奮闘。試合の大半で10点以上の差をキープしたまま最終スコア73-61で勝利を収めた。
気になる“ブラックサンダーマスクマン”は第2クォーター中盤のタイムアウトで登場。鮮やかなフリースタイルのテクニックを見せつけたかと思いきや、マスコットの『ダンカー』やチアガールたちとともに『パーフェクトヒューマン』を踊り、ブースターたちを大いに盛りあげた。「これは並の人物ではない。いったいその正体は何者なんだ!」という疑問を早速クラブにぶつけてみたところ、有楽製菓のマーケティング担当である牧宏郎さんを紹介された。
「ブラックサンダーマスクマンは何者か?」という率直な質問に対し、牧さんからは「ガチャピンのように驚きと興奮を提供する存在」との答えが返ってきた。それはつまり、ジャンルを問わずスポーツ全般においてプロ顔負けのパフォーマンスを披露するキャラクターということだろうか。
その仮説を裏付けることになったのが2日間にわたるパフォーマンスだ。登場2回目となった6日にバスケットのフリースタイルを披露した“ブラックサンダーマスクマン”は、初登場となった前日には体操のパフォーマンスを見せ、軽やかなバク転やバク宙を繰りだしたという。名前と容姿から“キャラ先行タイプ”を想像したが、実際はハイスペックな運動能力を持ったマスクマンだった。今後は三遠のホームゲームすべてに登場し、バスケットの枠を超えた様々なアクションを展開する予定とのことだ。ガチャピンはもちろん、NBAシカゴ・ブルズのマスコット『ベニー・ザ・ブル』のように、リーグを代表するキャラクターになることに期待したい。
ところで、なぜ“ブラックサンダーマスクマン”が誕生したのか。詳しく聞いてみると、『ブラックサンダー』はもともと豊橋で生まれたお菓子で、現在も有楽製菓の豊橋夢工場で製造されている。豊橋市民がどこかに訪問する際は手土産に持っていくほど地域に根付いたもので、その有楽製菓がクラブをとおして三遠地域の人たちに恩返しをしたいという想いから、三遠にスポンサードすることが決定した。「いかにして三遠地域を盛りあげることができるか」、クラブと一緒に企画を練った結果、誕生したのが“ブラックサンダーマスクマン”だった。「自分たちが楽しめないと、お客様を楽しませることはできない」という同社のマインドから生まれたキャラクターだと牧さんは語り、話題性のあるコラボレーションを次々と実施している有楽製菓のスタンスを垣間見た気がする。
そして有楽製菓の盛りあげは“ブラックサンダーマスクマン”のパフォーマンスだけにとどまらず、試合中にダンクが決まった数だけブラックサンダーをブースターに贈る「ブラックサンダーダンク賞」や、スコア予想が的中するとブラックサンダーがもらえる「ブラックサンダースコア賞」など、ブースターたちをチョコで魅了する企画を実施している。
この日は「Bリーグの面白さはバスケの試合だけではない」というのを改めて実感させられた。次はどんなパフォーマンスを披露してくれるのか、今後も三遠と“ブラックサンダーマスクマン”のコラボに注目したい。
文=大盛聡