2017.02.11

日本代表がイラン代表に5点差惜敗、インサイドで弱さ露呈も、田中や比江島が見せ場作る

田中大貴がチームトップの14得点を挙げたが、日本はイランに敗戦 [写真]=上野公人
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 2月10日、2020年に向けての国際強化試合初戦で幸先の良いスタートを切った“AKATSUKI FIVE”こと、男子バスケットボール日本代表。試合後の記者会見において、ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチが「数少ない練習の中で、ボールを動かすオフェンスの規律を作ることができた」と語ったように、時間が限られている中で、ガード陣がピック&ロールを使いながらボールを動かすオフェンスを披露した。一方、ディフェンス面では、1対1でのマッチアップにおいて、コンタクトの緩さや、簡単にファーストブレイクを許すシーンも散見された。貴重な国際親善試合の機会を活かし、浮き彫りとなった課題を少しでも解決したいところだ。

 イラン代表から連勝を狙う日本のスターティングファイブは、ポイントガードに橋本竜馬シーホース三河)、シューティングガードに田中大貴アルバルク東京)、スモールフォワードに馬場雄大(筑波大学)、パワーフォワードにアイラ・ブラウンサンロッカーズ渋谷)、そしてセンターに太田敦也三遠ネオフェニックス)が名前を連ねた。第1戦からメンバーを大きく入れ替えて臨むこととなり、この試合も新しいチーム構築の重要な過程であることを感じさせる。

 日本は、第1ピリオド途中から入った比江島慎(三河)が思いきったスティールを見せると、そのままダンクに持ちこむなど会場を沸かせた。だが、強度の高いディフェンスに苦しみリズムを作ることができない。第1戦でオフェンスの軸となった日本のピック&ロールは、イランのファイトオーバー(スクリーンプレーに対するディフェンス)を前に、簡単にシュートまで持ちこむことができず、苦しいシュートが続く。司令塔の富樫勇樹千葉ジェッツ)が「第1ピリオドの入りが悪かった」と語ったとおり、10-18とリードを許し、最初の10分間を終えた。

 第2ピリオド、日本は失ったリズムをディフェンスで取り戻す。イランのカットインに対してもしっかりとコースを抑え、相手に負けじと、スクリーンプレーに対してファイトオーバーで付いていく。すると、徐々に主導権を手繰り寄せ、終盤に田中が連続で3ポイントを沈めて逆転。勢いに乗る田中がゴール下にカットインしてディフェンスに体を預けながらベビーフックを放つと、これがブザービーターに。このピリオドで35-30と試合をひっくり返して後半に突入した。

 勢いを維持して試合を決定づけたい日本だったが、ゴール下の争いで後手を取ると、アウトサイドシュートを立て続けに沈められ、逆転を許す。試合の主導権を保つ難しさを露呈したものの、明るい発見もあった。日本はこのピリオドの途中から永吉佑也川崎ブレイブサンダース)が入り、屈強な体を活かして、スクリーナーとして活躍。右に左に休むことなくスクリーンを掛け、ボールを引きだしては再度動き直す。永吉は、フィジカル面で課題を抱える日本において、縁の下の力持ちとして、貴重なオプションとなり得ることを証明した。

 試合は白熱したまま最終ピリオドに突入すると、“比江島タイム”が幕を開ける。相手の厳しいディフェンスに対し、果敢にゴールへのカットインを試みバックシュートで得点。直後にトップオブキーからのジャンパーを沈めると、さらにフローターシュートも見せて、連続で得点を記録する。個でゲームを作る力を発揮し、会場に詰めかけた北海道のバスケットボールファンにその存在をアピールした。この勢いで一気に押しきりたい日本だったが、メッヘラン・ハタミヘッドコーチが「昨日のゲームより全選手が集中していた」と語ったとおり、昨夜の雪辱を期すイランの気迫の前に、あと一歩及ばず試合終了。ファイナルスコア68-73で接戦を落とした。

 日本は田中の14得点を筆頭に比江島、竹内公輔(栃木ブレックス)が2ケタ得点。終盤まで見せ場を作り続けたが、ハタミHCが「ゴール下でよくリバウンドが取れていた」と述べたようにトータルリバウンド数で10本以上の差をつけられるなど、インサイドの弱さを露呈した。

 パヴィチェヴィッチHCが試合後の会見で「連勝すれば、もっと良い気持ちでいられたが、フィジカルが強いイランとやれたことは、今後の成長材料になるのではないかと思っている」と語ったように、新生日本代表の船出は始まったばかり。2020年までの道のりは決して平たんではないが、選手個々の高いモチベーションに、まだまだ成長の余地を感じることができる。次に日本代表を見ることができるのは6月に予定されている東アジア選手権。そこでのさらなる飛躍に期待したい。

文=村上成

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