2016-17シーズンのB.LEAGUE AWARD SHOWにて、ベストタフショット賞を受賞したのは横浜ビー・コルセアーズに所属する川村卓也だ。2月4日に行われた千葉ジェッツとの試合で決めたブザービーターがノミネートされたが、B1残留プレーオフ1回戦の秋田ノーザンハピネッツ戦で沈めた劇的な逆転弾も踏まえても、Bリーグ初年度のアワードで最も納得がいくのは彼の受賞だろう。
放たれたボールがゆっくりと弧を描き、その瞬間は時が止まったようにも感じる。“放物線と時計のマジック”は、まさにバスケットボールの醍醐味であり、最大の魅力の1つでもある。この瞬間を演出する初代キング・オブ・タフショットが、ボールを託された際の心構えや、自身も愛用するG-SHOCKの魅力についてたっぷりと語ってくれた。
インタビュー=村上成
写真=山口剛生
――川村選手は重要な局面でボールを託されるシーンが多いと思います。「責任感」という言葉を日頃から口にしていますが、チームのエースとして「俺が責任を持って打つんだ!」という責任感が芽生えたのはいつ頃ですか?
川村 チームの主力として試合に出してもらえるようになった中学3年生くらいからです。責任感の重みは今とは違いますが、勝利を目指す姿勢はいつでも変わりませんし、チームのエースと言われる限りは、1本のシュートにはチームメートのものよりも責任があると感じています。「このショットを決めればチームに流れが来る」、「このショットを決めれば勝ち星が手繰り寄せられる」と思ってシュートを打っているので。そういう考え方を中学、高校、そしてプロで積み重ねていくうちに、徐々に責任が大きくなりました。
――そういう場面が増えたことで経験を積んできたんですね。
川村 責任感を持ってシュートを打つシーンがいつ来てもいいよう、自分のシュートタッチを40分間常に最高に保ちながらショットを打つことを意識しています。それは打ち続けないとできませんし、経験を積み重ねなければ結果として表れないと思います。
――ボールを要求した後のシュートを落として弱気になったり、「今日は大事な場面でボールを欲しくないな」と思う試合もあったりしましたか?
川村 そう思ったら、自分はコートを去るべきだと思います。今はシュートが入っても入らなくても、「自分に打たせてくれ」という気持ちでいますし、その自信を持ってコートに立っています。
――今回のベストタフショット賞はファンによるSNS投票で選出されました。自分のシュートが印象、記憶に残り、大勢の方に拡散されたことについてはどう思いますか?
川村 記録より記憶に残るプレーが自分に似合っていると思うし、自分らしさがより際立って伝えられると思っています。記録は積み重ねないと出ないことが多く、数字に表れない活躍も大切だということをチームのベテラン選手から教えられています。そういう意味では、会場に来ているブースターやファンの皆さまの記憶に残らないと、「また応援に行こう」、「負けたけど、次は勝てたらいいね」、「勝ったから次も勝てるかもよ」といったアクションにつながらないと思います。今後も『川村卓也』というキャラクターを存分に活かして、多くのファンの記憶に残りたいですね。
――Bリーグ元年の最優秀選手賞はニック・ファジーカス選手(川崎ブレイブサンダース)が受賞しましたが、“記憶に残るナンバーワンプレーヤー”は川村卓也だったということですね。
川村 そうであれば、ベストタフショット賞は自分に適した賞だったと改めて思います。「B1の全18チームがリーグ戦60試合を戦って、全部で何本のシュートを打ったのか?」と考えた時、無数のシュートの中から自分の1本を評価してもらったことはとても大きいと思うし、今後の自信にもつながります。
――受賞の記念品として贈呈された『MR-G』は、G-SHOCKシリーズの最高峰モデルで、強さ、強度、形にこだわった「孤高の存在」というテーマです。川村選手らしいアイテムだと思いますが、時計を選ぶ際は何を気にしますか?
川村 もともと、G-SHOCKが大好きで10個くらい持っています。2人の子どもがいる父親としては、強度や水に強いことは重要な要素です。子どもと公園に行ったり、水遊びをしたり、ぶつけたり、時には子どものおもちゃにされるし(笑)。それでも安心して身につけられる時計がG-SHOCKだと思います。あまりの高級感と賞の名誉もあるので、この最高級の時計はなかなか使いにくいですが(笑)、大切にしたいと思います。
――子どものおもちゃにされないよう、目につかない場所に置いておかないといけませんね。
川村 そうですね(笑)。G-SHOCKは水に濡れても全然へこたれない強さを、そのフォルムが醸しだしています。私服でもスーツでも、カジュアルとフォーマルの両面で使えるので、シーンを選びませんよね。来年も、もしベストタフショット賞をいただけるようなら、両手に時計をつけますね(笑)。
――G-SHOCKブランドを表現するコピーの1つに「どこまでも強く。その先の強さを目指して。G-SHOCK、その挑戦に終わりはない」というワードがあります。川村選手にピッタリな言葉だと思いますが、ご自身は来シーズンやこれからの日本のバスケットボールを考えた時に、どのような挑戦をしたいですか?
川村 1シーズンに1回か2回タフショットを沈めて、「奇跡」とか「まぐれ」とか言われるのも嫌なので、仲間に託された重要なシーンで、できる限り多くのシュートを決めたいです。挑戦に終わりがないのと一緒で、自分が自分のキャリアにとどめを刺すまでは、突き進まなければいけないし、ショット1本に対しての責任感を背負ってプレーしたいと思います。また、ショット1本で人の気持ちを変えることが自分のできる仕事の1つですし、そういうところはプロ選手としての自覚を持って、言葉だけではなく現実的な夢や希望を体現できるように取り組んでいきたいです。