今シーズンからサンロッカーズ渋谷の一員になった長谷川智也、菊池真人、山内盛久はいずれも1989年、1990年生まれで、いわゆる“平成元年世代”だ。その他、チームメートの満原優樹、伊藤駿、ロバート・サクレも同期にあたり、SR渋谷に所属する11人中6人が同い年。そんなこともあり、新戦力の3人はそれぞれが自分の色を出し、早くもチームに解けこんでいる。SR渋谷のユニフォームを身にまとい戦う山内、菊池、長谷川が、チームの雰囲気や渋谷の印象などをざっくばらんに語ってくれた。
インタビュー=酒井伸
――サンロッカーズ渋谷はどんなチームなのか教えてください。
長谷川 黄色! こんなにも出してくるかってくらい黄色です。チームジャージも黄色だし。
菊池 俺はナイナーズ(仙台89ERS)にいたからそんなに違和感ないかな。プロ選手になってから、(デイトリック)つくばでも、ナイナーズでも黄色だったので、黄色を見ると安心します。
――長谷川選手は昨季までのシーホース三河で、青色と黒色のユニフォームを着用していました。
長谷川 サンロッカーズの練習着が黒色なのでチームメートから「お前、三河のままじゃん」と言われていますが、ユニフォームは黄色のため違和感しかないですし、明るくてまぶしいと思っています。特に菊池はバッシュも黄色なのでとても目立ちます。
――菊池選手は黄色が好きなんですか?
菊池 こだわりがあるわけではありませんが、自分のラッキーカラーが黄色なので、黄色のバッシュを履いています。
――山内選手は琉球ゴールデンキングスでゴールドのユニフォームでしたね。
山内 色が似ているので抵抗ないと思っていましたが、実際にユニフォームを着ると違和感しかなくて、周りからは「変だ」、「似合っていない」とよく言われます。ずっと琉球でプレーしていたのでゴールドの印象が強く、黄色のイメージは全くなかったのです。
――長谷川選手と山内選手はこれから似合っていけるようにといった感じでしょうか?
長谷川&山内 そうなりたいです。
長谷川 ただ、これからずっと着るので、「似合っている」って言われないと悲しいですよ。個人的にはもう少し黒を多くしてほしかったです。(同席したスタッフに向け)黒色の3rdユニフォーム作成をお願いします(笑)。
――今季からSR渋谷へ加わって、新たにわかったことや感じたことはありますか?
長谷川 昨季のチームがどうだったのかわかりませんが、今季からコーチ陣が大きく変わって、体制がしっかりしていると思います。こういった環境でやるのは初めてで、チームのルールや決まりごとがあって、“固いチーム”だなと。
山内 俺は外から見ていて「やっぱり旧NBLチームらしく固いな」と思っていたけど、サンロッカーズに入って緩さにビビッて。いい意味で緩かったこともあるかもしれませんが、今はいろいろと見直して、立て直して、勝利のためにもっと締めていこうとしています。当たり前のことですが、例えば練習開始の30分前には来るとか。
――琉球の時にはそういった決まりごとはあったんですか?
山内 練習生の時からチームに帯同していたので、その頃から1時間前には練習場に来て、準備や自主練をしていました。逆に、集合時間に合わせて来ると遅いくらいでした。練習生の時は「なんでプロ契約の選手がこんなに早く来て練習しているのに、お前はなんで先に来ないの?」といった感じだったので、先に来ないといけないという習慣が身についていました。
――菊池選手はどうですか?
菊池 僕も、チームルールがしっかりしていて固いなと思いました。アウェイ遠征の時、ホテルに戻ってからの行動も管理されてビックリしました。
――コート外のルールで厳しいと思うことを教えてください。
長谷川 基本的にはそんなにありませんが、SNSは夜遅くにアップしちゃいけない。このルールはビックリしましたが、確かに夜遅くに何しているんだと思われるかもしれないし、誰がどう見ているかわからないですよね。けど、その時間に面白いことが起こるんです(笑)。
山内 あとは、ヘッドコーチが真面目です。
長谷川 たぶん世界一真面目だよね(笑)。
山内 もっとラフにしてもいいのにと思います。
長谷川 オフの時に会うと、がんばって作ろうとしていて(苦笑)。コート内外での違いに驚きます。
――他のチームから移籍してきてチームメートになりましたが、代表活動などで一緒になったことはありますか?
一同 ないよね。
――SR渋谷に来て初めて絡むということですか?
長谷川 狩俣(昌也/三河)さんと山内が仲良いこともあって、去年会いました。僕はインターハイ(平成19年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール大会2回戦)で対戦したのを憶えていてずっと知っていましたが、お互いが謙遜していて(笑)。
山内 インターハイの時は長谷川に34点も決められました。
長谷川 けど、自分たちは負けたんですよ。(新潟商業高校 66-74 興南高校)
――高校時代から知っていたんですね。去年会ったというのはどういったきっかけですか?
長谷川 狩俣さんが前に琉球に所属していて、山内の高校の先輩でもあるんです。琉球との試合後、狩俣さんに山内とのご飯に誘われ、絡んだことはなかったですけど同級生だったので行きました。
山内 自分は気が合いそうだなと思っていました。
長谷川 けど、最初は顔も見ないんです。
山内 めちゃくちゃ怖くて、変なこと言って怒らせたらどうしようかなと思って(笑)。
長谷川 すぐに打ち解けたよね。いろいろと話のネタがあったから。その後も連絡は取り合っていて、僕の加入が決まった後に、「マジで(SR渋谷に)来い!」といったラブコールは送っていました。それがどこまで響いたかわかりませんが……(苦笑)。
山内 かなり影響されました。僕は家族と離れることが決まっていたので、コート内外問わずに多くの同級生が支えてくれる環境は大きかったです。他のチームと悩んでいましたが、彼の誘いは一つの決め手になりました。サンロッカーズへの加入を決めた後はまず、彼がどこに住んでいるのか確認しました。近くに住みたかったので(笑)。
長谷川 なぜかこいつに物件を紹介していました。「この辺はいいよ」とか。
山内 土地勘がないので。けど、家を悩んでいる時に、こいつはハワイに行っちゃって(笑)。
――菊池選手はいかがですか?
菊池 2人とは何も接点がないです。プロになってからは、長谷川の大塚商会(アルファーズ)と対戦して「めちゃ点を取る奴いるな」と思ったくらいです。山内はbjリーグの時に一度も試合をしていないみたいですし。
山内 そうだっけ?
菊池 去年が7年ぶりの対戦だったみたいよ。
山内 俺が練習生の時に仙台と対戦したことはあるけどそれからないのか。
――ほぼ初対面なんですね。多くの同級生がいるのはどうですか?
菊池 仙台の時は同級生がいなく、基本的に年下の選手ばかりでした。サンロッカーズに来て、同級生同士で絡むことがあって楽しいです。
長谷川 本当にそうか(笑)? 俺は、チーム内の『LINE』グループがあって「菊池真人が追加されました」って出た時、「誰だ?」と思って。顔を見ればわかって、苗字も知っていたけど、「真人」っていう名前がわからなかった。山内と僕で「菊池真人って誰」というやり取りがあって、スタッフだと認識していました。
菊池 この話は酷いですよね(苦笑)。
山内 自分の写真をプロフィール画像にしておけよ。あれは何?
菊池 『ぶりぶりざえもん』(『クレヨンしんちゃん』のキャラクター)です。
長谷川 『ぶりぶりざえもん』のアイコンなんてスタッフだと思うじゃないですか。わかんないですよ。
――どのタイミングで気がつきましたか?
長谷川 他のチームのある選手に「仙台の菊池が入るね」と言われ、「えっ、あの菊池真人がもしかして」と思って、調べてわかりました。
――チームが始動して約2カ月が経ちましたが、それぞれの選手を紹介していただけますか?
山内 (菊池は)すごい無口なので、もっと喋ってほしいです。プレーは「お前ここにいるの?」みたいなことがよくあります。でも、疲れている時間帯でもリバウンドに飛びこんでくれるのでありがたいです。(長谷川は)見てのとおり派手で、渋谷に来てからオシャレ度が増しました。
長谷川 三河でちょっとサボっていたから(笑)。
山内 街に合わせていたけど、渋谷に来てから自分を出してきた。
菊池 本領発揮だね。
――菊池選手から見て2人はどうですか?
菊池 2人はよくしゃべる。
山内 それ文句(笑)?
菊池 文句じゃないよ。2人の絡みを遠くから見るのが好きです。2人を見ていると、「もっと絡んでこいよ」とか「話せよ」と言われます。
長谷川 振っても返してこないんです。
山内 自分は人を気遣うタイプなので、「楽しくないのかな?」とか「入りたいんじゃないかな?」と思ってしまうんです。
菊池 自分の引き出しが少ないんだよね。
――長谷川選手はいかがですか?
長谷川 (山内は)話すことが好きですし、ムードメーカーでもあります。試合中は真面目に自分の仕事を遂行するタイプの選手です。(菊池は)僕自身はあまり話さないという印象はなく、逆に俺のことを下だと思っているんですよ。馬鹿にされることもありますし。この前、わからないことがあったらしく、「これどうするの?」と『LINE』で聞いてきました。僕は1時間くらい見れず、他の人に聞いたかと思ったのですが、「ごめん。この件、終わった?」と返したら、「まだ終わってない」と返信があって、誰にも聞けないんだなと思いました。
山内 誰かに聞けば良かったのに。
菊池 長谷川に聞いてダメだったら、次の日に練習場で聞けばいいやと思って。見下してないよ。
――満原優樹選手、伊藤駿選手、ロバート・サクレ選手も同期ですが、この年代の特徴を教えてください。
山内 個性が強く、意外にバスケ好きです。「疲れた」と言いながらも、バスケになると責任を持ってプレーしています。言葉とは違う真面目さがあると思います。
――特に該当する選手は誰ですか?
山内 怖いんですけど……。
長谷川 髭がすごくて金髪の選手で、白熊みたいな……。
山内 文句とか言うくせに、やることを徹底している。
長谷川 能代(工業高校)だから“徹底”なんですよ。
山内 朝早くてだるいとか言いつつ、コートに来てシューティングしているんですよ。「俺より早いじゃねーか」って。
長谷川 副キャプテンなので、いろいろ言いながらもどうすればいいか考えているんでしょうね。
山内 一緒にコーチライセンスの研修に行った時、練習メニューを考える講座があって、自分は箇条書きで書いていたんですが、あいつはめちゃしっかり埋めているんですよ。「お前すごいな」と言ったら、「見るなよ」と恥ずかしそうにしているんです。すごい真面目じゃんと思いました。
――キャプテンの伊藤選手はいかがですか?
菊池 真面目だと思ったんですが……。
長谷川 いい意味でフランクで、うまい選手です。締めるところはしっかりしているし、固くなりすぎずにしてくれる、そんな存在です。
――サクレ選手は?
菊池 ノリがいいよね。誰にでも仲良くしている。
――渋谷の街についての印象を聞かせてください。
山内 すごい人が多いですよね。自分は人間観察が好きなので、いろいろな人がいて楽しいです。まだイベントでしか行ったことがなく、自分にとって渋谷は「何があるの?」という印象なので、どんどん見つけていきたいです。『ハチ公』を初めて生で見て、写真を撮ろうかなと思った時、観光客がしっかりと順番待ちをしていて驚きました。一緒に写真撮影できて良かったです(笑)。
菊池 前所属チームの時に遊びに来ていて、人と建物が多くて、何でもある印象です。あと、やたら高級車が多いイメージがあります。関東は道が狭くて大変です。
山内 お前は体がデカいからな(笑)。
菊池 いや、車だよ。基本一車線なのが嫌で、渋滞も多いじゃないですか。交通量が多いんだから車線を増やせばいいのにと思います。
長谷川 自分は「帰ってきた」という感じです。大学4年間と社会人3年間の計7年間を東京で過ごしたので、渋谷で買い物をしたり、友だちと遊んだりすることが多かったです。街の雰囲気はあまり変わりませんが、センター街が『バスケットボールストリート』という名になっているので、もっとその名前を浸透させ、渋谷にバスケがあることをもっとアピールしたい。パレードをした時に、改めて盛りあげたいという気持ちになりました。
――最後に、マスコット「サンディー」はリーグトップの人気度を誇りますが、今後彼とはどのように関わっていきたいですか?
山内 今は戸惑っています。もっと絡んでいきたいですし、ハイタッチも増やしていきたいです。
菊池 選手だけでなく、観客にも積極的に絡んでいてすごいなと思います。自分のところは来なくていいので、周りで盛りあげてくれればそれでいいです(笑)。
長谷川 まだあまり関わっていなく、たぶん僕と距離を置いていて、ビビっているかもしれません。まだまだ未知数なので、これから探っていきます。
1989年4月22日生まれ、新潟県出身。法政大学を経て2012年に入団した大塚商会アルファーズでは、営業担当のビジネスマンとしての過去を持つ。その後、計2シーズン在籍したシーホース三河を離れ、今季からサンロッカーズ渋谷に所属。3ポイントシュートが最大の持ち味。
1990年3月23日生まれ、沖縄県出身。尚学院国際ビジネスアカデミー卒業後に琉球ゴールデンキングスの練習生になり、2011年に同クラブと選手契約を締結。bjリーグで3度の優勝を経験し、今オフシーズンにサンロッカーズ渋谷への移籍を決断。琉球で培った粘り強いディフェンスや、チームメートを操るパスに秀でる。