5得点2リバウンド2アシスト。東地区首位を快走するアルバルク東京のスターティングファイブに名を連ねる菊地祥平が、10月25日のB1リーグ第5節川崎ブレイブサンダース戦で残したスタッツだ。約22分間の出場で残した数字としては物足りなさも感じるが、菊地は「任務を果たすことができた」と胸を張る。第5節までの9試合中5試合でスタメンを務めた菊地。“タレント軍団”A東京の層の厚いロースターの中、彼がスタメンを勝ち取ることが多い理由は、“エースキラー”という特殊任務のスペシャリストだからだ。
25日の試合、菊地が課された任務は川崎のシューター、辻直人のマークだ。辻はこの試合、約29分間の出場で3得点。ボールを受ける回数も少なく、シュートの試投もわずか5本にとどまった。試合後、ミックスゾーンに姿を見せた菊地は「僕の役割としては、辻選手にシュートを打たせないこと。打たせないというか、ボールを持たせない気持ちでプレーをした」と、自身のミッションについて語った。
辻は爆発力を備え、一度乗せると簡単に20得点以上を稼ぎだすことができる日本でも有数のシューターだ。A東京が勝利を収めるには、辻を抑えることは必要不可欠だったわけだが、191センチ91キロと恵まれた体格に加え、鋼のように鍛えあげられた肉体を活かし、ハードマークを徹底する菊地は、この試合も見事に任務を遂行してみせた。相手が嫌がっているのを感じていたかとの問いに、「(辻は)イライラしているのもあったと思うが、最後の2本、3本入らなかったのは、試合を通じてボールを触っていなかったことも大きいのではないかと思う」と分析する。
菊地のディフェンスは、自身が語るとおり、まずは相手にボールを持たせないところに特徴がある。ボールとマークマンの位置をしっかりと確認すると、相手を覆いかぶさるように密着マーク。振りきろうと動き回り、スクリーンを使ってフリーになろうとする相手を粘り強く追いかけ回す。マークされる側の選手にとって、屈強な外国籍選手のスクリーンを突破する強じんなフィジカルと、無尽蔵のスタミナを誇る菊地を振りきって、自分のペースでオフェンスを仕掛けるのは、なかなか骨の折れる作業となる。
エースの田中大貴や、日本代表にも名を連ねるゴールデンルーキーの馬場雄大ら派手な選手が多い中、愚直に課された任務を遂行する菊地は、自身の果たすべき役割についてこう明言する。
「アルバルクには得点を取れる選手はたくさんいるので、献身的にチームに尽くすのがベテランである自分の役割です」
そんな菊地だが、多忙なシーズンを送る自身を支えているのは3人の子どもと献身的な妻だという。「シーズンが始まると、子どもと土日に接する機会がないので、月曜日にしか触れあえないのですが」と寂しそうに語ると、「妻が『パパは、今がんばってくれてるからね』と子どもたちに言ってくれているので、今は触れあう機会が減っていても、子どもたちが思春期の時に、嫌われるようなことはなさそうです」と笑顔を見せる。
強豪チームを支える献身的な“殺し屋”だが、プライベートではBリーグナンバーワンの“イクメン”を目指す素敵なパパの顔も持っていた。
文=村上成