Bリーグ2017-18レギュラーシーズンは第15節までの28試合を消化し、残すところ32試合となった。前評判どおりの安定した戦いを見せるチームや、指揮官交代や外国籍選手獲得などで巻き返しを図るチームなど様々だ。そこで今回、元日本代表ヘッドコーチで、現在は早稲田大学スポーツ科学学術院教授を務める倉石平(くらいし・おさむ)氏に、B1東地区に所属する6チームの戦いぶりを評価してもらった。(12月9日取材)
インタビュー=村上成
写真=Bリーグ
――開幕前、東地区は激戦区になると予想されていました。現在、アルバルク東京が1位、千葉ジェッツが2位につけています。
倉石 予想外だったのがサンロッカーズ(渋谷)です。開幕前はA東京、千葉、川崎(ブレイブサンダース)のあとにSR渋谷が続くと思っていましたが、(10月29日から12月9日にかけて)10連勝もありました。連勝を続けていると必勝パターンが出てくるんです。「こういう状況ならこうなる」と、いくつかの勝ちパターンがわかってきます。追いあげられたり、リードしていたり、様々な展開を経験しているからもっと強くなると思います。
――チームが成長過程に入っているということですか?
倉石 いつまで連勝が続くのか興味深く見ていましたが、面白い存在ですよね。ただ、A東京が虎視眈々と優勝を狙っているのもわかるし、(ルカ・パヴィチェヴィッチ)ヘッドコーチがうまくチームを作っています。試合をこなすごとに強くなっていて、ディフェンス力が違いますね。
――具体的には?
倉石 ボールマンにプレッシャーを掛けたり、ディナイしたり、相手の攻撃の意図をすべて見ています。今日(12月9日)の大阪(エヴェッサ)は入りの部分でディナイされて、面を食らってボールを持てず。ボールを持ったプレーヤーが“アリ地獄”のようにハマっていました。
――確かにそう見えました。
倉石 行かされ、その行かされるところにダブルチーム、トリプルチームをされて全く攻められない。24秒オーバータイムも、ターンオーバーもあったので、A東京のディフェンスが前から比べると磨かれ、洗練されていると思います。
――オフェンスでは個の力が注目されがちですよね。
倉石 相当すごいと思います。今日(99-55で勝利)の試合では2ケタ得点を挙げた選手が6人(安藤誓哉が12得点、馬場雄大が16得点、菊地祥平が13得点、ブレンダン・レーンが10得点、田中大貴が14得点、アレックス・カークが16得点)もいて、尋常じゃないくらいバランスがいいです。相手がゾーンディフェンスを敷いたこともありますが、外からキレイに得点を取れて、後半になったらインサイドでも得点を取り始め、最後は中と外の両方になりました。相手の隙を見て速攻もありましたし、全部がディフェンスからうまくつながっていて。チーム全員がHCを信用していることはもちろん、うまくいっているように見えます。
――千葉はいかがですか?
倉石 開幕前の予想どおりある程度は勝つとわかっていましたが、途中で失速したり、内容の悪いゲームもあったり。少し安定感を欠いて、試合によっては少し辛いかなということもあります。ただ、チーム自体は成長過程で、徐々に上がっていると感じます。
――昨季準優勝の川崎は少し苦しんでいます。
倉石 川崎は(ライアン)スパングラーがいなくなったのが大きいですね。彼の穴を埋めることができず、得点の取り方が安定していないと思います。そのため、日本人選手が得点を取らなければいけない試合が多くて。新加入の2人(ジョシュ・デービス、ジュフ・バンバ。※12月下旬、バンバの負傷によりルー・アマンドソンが加入)が悪いというわけではなく、彼らは多くの得点を挙げるタイプじゃないんですよね。けど、彼らが今以上に得点を取れると、相乗効果で周りの選手の得点が増え、(ニック)ファジーカスももっと得点が取れると思います。今はファジーカス頼みになっていて、少しかわいそうですよね。最近はそこを狙われて、攻められることもあり、彼のエネルギー消耗量が多くなっています。
――ファジーカスの負荷が増えることによって、ディフェンスにも影響していますか?
倉石 篠山(竜青)がしっかりチームをコントロールすべきですが、日本代表に選ばれて疲労がたまり、小さなケガをしたり。(北卓也)HCが藤井祐眞を先発で起用して打開しようとしても、チームの歯車が少し狂うケースもあります。うまくいかずにギクシャクしちゃって。藤井はゲームをコントロールするより、チームがダメなら自分で得点を取ってやろうという点取り屋です。そういうケースがあるから、彼の得点が多くなっていると思います。そのため周りが活きなくなっているかなと。藤井と篠山が一緒に出ると、最強だと思います。それに辻(直人)も相当な破壊力とシュート力がありますから。昨季はスパングラーもいて、そのパターンで勝ち続けていたと思います。
――スパングラーの存在は攻守両面で大きかったです。
倉石 彼はシーズン途中にケガをして、何試合か欠場していました。しかし、あの間にチームがさらに強くなり、戻ってきたら万全になりましたよね。
――初代王者の栃木ブレックスは選手の入れ替わりがあり、かなり苦戦しています。
倉石 昨季から選手だけでなくHCも入れ替わり、新チームと言ってもいいくらい一新されたので、それを受け止められない部分もあったのかなと。開幕前から戦力ダウンは否めないことがわかっていて、それをどう持ちこたえてつなげていくのかの戦いだったと思います。ただ、最初のきっかけ作りが非常に難しく、1勝1敗ならまだしも、2連敗することもあってダメージを受けていました。それでも早いうちに歯止めして、戻ってきてくると思いますけど。普通は開幕前までにチームの入れ替わりを受け入れなければいけませんが、チームの財産のような人間がいなくなるのは辛いことですよね。優勝したがために苦しい部分もあったと思います。
――レバンガ北海道はいかがでしょうか?
倉石 今季はかなりいいと思います。新加入の外国籍選手2人(マーク・トラソリーニ、グレゴリー・ウィッティントン)はシュート力、ディフェンス力があって、昨季もいた選手(ダニエル・ミラー)とうまくマッチしています。選手はあまり変わっていませんが、一人ひとりが明確な武器を持っているというか。チームの歯車がかみ合っていて、とてもバランスがいいです。派手に大量得点もなく、得失点の差異がものすごく小さい中で試合をしています。
――常にいい試合をするということですね。
倉石 勝負強いベテランシューターの折茂(武彦)もいるので、競っていてもどうにかなるだろうと。だから延長戦も多いと思います。(水野宏太)HCが若く、選手たちも競っていればどうにかなると思っているかもしれません。
――台風の目になりそうですか?
倉石 これ以上背伸びするのは難しいので、キープするか、周りがコケるの待っているしかないかなと。台風の目になりそうなのはSR渋谷です。
――SR渋谷はディフェンスがいいんでしょうか?
倉石 (ロバート)サクレがしっかりしていて、チーム全体のディフェンスもいいですよね。サクレは昨季の経験を活かして、さすがNBA経験者というプレーを見せています。(第10節第2戦の)川崎戦では終了間際に逆転の3ポイントを決めていますよね。彼はあまり3ポイントシュートを打ちませんが、あんなプレーができるとは奇想天外です。
■B1東地区(第15節終了時点勝敗/勝率/得点/失点/得失点差)
1位:アルバルク東京(22勝6敗/0.786/2192/1926/266)
2位:千葉ジェッツ(19勝9敗/0.679/2189/1971/218)
3位:川崎ブレイブサンダース(18勝10敗/0.643/2286/2180/106)
4位:サンロッカーズ渋谷(18勝10敗/0.643/1997/1949/48)
5位:レバンガ北海道(16勝12敗/0.571/2219/2207/12)
6位:栃木ブレックス(13勝15敗/0.464/2031/2073/-42)