昨季のファイナルでのアキレス腱断裂からおよそ8カ月。栃木ブレックスにBリーグ初代チャンピオンという栄光をもたらした男が、いよいよその頼もしい姿を披露し始めた。リーグ戦が再開された1月18日の滋賀レイクスターズ戦で、ジェフ・ギブスが今季初めてスターターで出場。ファウルトラブルに見舞われて出場時間は17分余りにとどまったが、立ち上がりで滋賀に先手を取られて苦しんだ第1クォーターはチームの19得点のうち12点を1人で稼いだ。ギブスの働きに救われたチームは第2クォーター以降主導権を握り、80-64で後半戦スタートを白星で飾った。
復帰後最多となる18得点を挙げたギブスは自身の活躍を振り返り、「自分のパフォーマンスには満足している。ケガからの復帰という中でこういう試合ができたことは自分の自信にもつながる」と語った。プレーを見るかぎりでは完全復活と言っていいレベルまでコンディションが戻ってきているように感じられるが、「ケガの前よりも強くなれるようにトレーニングは積んできたが、ジャンプ力に関してはケガの前と比べてまだ100%までは戻せていない」と、本人はまだ”完全体”ではないと感じている様子だ。
しかし、安齋竜三ヘッドコーチも「100%になるにはもう少しかかると思う」と語る一方で、「ゲームをこなす度に良くなっている。安心してゲームに出せる」と、すでに十分なクオリティーに達していることは断言。前半戦は「1」に設定することが多かった第1クォーターのオンザコートを「2」にしてギブスをスターターで起用したのも、期待と信頼の表れに他ならない。
強豪揃いの東地区で出遅れ、いまだ地区最下位という状況の栃木だが、この勝利でついに”借金”が1まで減った。HCが代わり、引退していた渡邉裕規が現役復帰、そしてギブスの完全復活も間近となれば、後半戦の巻き返しの期待も大きくふくらむ。「ナベ(渡邉)がコートに立てばチームの流れも良くなるし、自分もカムバックに時間はかかっているが、100%のパフォーマンスを出せるようになればチームの勢いにつながると思う」と語るように、ギブス自身にもキーマンの自覚はある。
ギブスが”完全体”となった時、チームも”完成形”が見えてくる。王者を経験している栃木が本来の姿を取り戻せば、東地区はますます混迷を極めることになるだろう。現在東地区最下位の栃木が再びリーグの主役に躍り出るかどうか、それはギブス次第だ。
文=吉川哲彦