あいつが決めるとチームが勢いづく――。
そう思わせてくれる選手はどのチームにも1人はいる。川崎ブレイブサンダースでは、野本建吾がそういうポジションの選手だ。1月26日に行われた千葉ジェッツとのホームゲームでは、約11分の出場で8得点。その得点効率もさることながら、スケールの大きなプレーで2940人の観衆を沸かせ、チームの勝利に貢献した。
しかし、試合後に野本の口から出たのは反省の弁だった。「第3クォーターまでは相手の外国籍選手を止めて、速攻で得点を決めて自分自身もいい流れでプレーできたが、終盤の勝負どころで2つ続けてミスをしてしまったのが心残りです」
出場時間を得るためにミスを減らさなければならないというのは誰しもが通る道だが、それを意識しすぎて思いきりの良さを失ってしまう選手も少なくない。だが、この日の野本はミスを恐れない果敢なプレーが目立った。特に、第2クォーター終了間際にボール運びから中央突破してゴール下のジョシュ・デービスにパスしたプレーは、デービスがシュートを外して得点にはつながらなかったものの、チームのムードを高めるビッグプレーだった。
「ちょうどあの時は僕がボールハンドラーで、残り時間も少なかったので『自分で行こう』と思ってプレーしたのが良かったと思います。試合に出してもらっている以上は自分ができることをやりたいと思っています」
北卓也ヘッドコーチも「あれだけの上背でスピードがあって、アタックもできる。自信をつけてくれればもっと活躍できる」と期待を口にする。指揮官のみならず、野本がいいプレーを見せるとベンチが派手に盛りあがるのは、チームの誰からも期待されている証でもある。「みんながそうやって盛りあがってくれるのは嬉しいです。それだけ自分に期待してくれているんだと感じます。もっとしっかり責任を感じてプレーしていきたいと思います」
200センチというサイズと機動力を併せ持った将来性豊かな選手であることは間違いなく、チームの中心選手や日本代表へという期待も抱かせるが、本人はいたって謙虚。「もちろん選手をやっていればそういう意欲もありますが、そればかり考えていると自分はいいプレーができない。まずはチームのためにできることをやって、それが成功した時に次に何ができるかを考えて、プレーの幅を増やしていきたいです」
目の前にある道を一歩ずつ着実に進む野本がスポットライトを浴びる日は、必ず訪れるはずだ。
文=吉川哲彦