2017.10.22
川崎ブレイブサンダース一筋、在籍7年目。不動のポイントガードとして、そしてキャプテンとしてチームを引っ張る。試合では味方のポテンシャルを引き出しながら、勝負を決める得点力も発揮。明るいキャラクターでも人気があり、その一挙手一投足はとどろきアリーナの空気を変える。押しも押されぬリーグ屈指の司令塔、篠山竜青。バスケットをとことん楽しむ背番号7がその時々の想いを打ち明ける。
インタビュー=安田勇斗
写真=山口剛生、Bリーグ
――Bリーグ関東アーリーカップ2017では準決勝でアルバルク東京に敗れましたが(62-63)、3位決定戦ではBリーグ初代王者の栃木ブレックスにリベンジを果たしました(79-71)。大会全体をとおしていかがでしたか?
篠山 思ったよりもできたなというのが正直な印象です。僕はアーリーカップがあった週の月曜日から本格的に合流しました。準備期間が5日しかない中、外国籍選手を含めたオフェンスのフォーメーションや、ディフェンスの基本的な部分をインストールするだけだったので、大会前は不安の方が大きかったんです。優勝はできませんでしたけど、いいプレーをたくさん出すことができましたし、いろいろなものを得られた大会でした。
――敗れたA東京戦、勝った栃木戦では何か違いを感じましたか?
篠山 A東京と対戦した時はジョシュ(デービス)がいい形で点を取れていましたし、ボールプッシュも「こんなにスムーズにいけるんだ」という手応えを全員がつかむことができました。それを経て栃木戦では、ジョシュがリバウンドを取ったら全員で走ろうと話していて、ジョシュがそのままプッシュしたり、あるいは野本(建吾)を起点にしたり、オフェンスの引き出しが増えた感覚がありました。今まではインサイド陣がリバウンドを取ったらガード陣が下がってボールを受ける形が主流だったんですけど、今シーズンは4番ポジションがプッシュしていく形も増えてくると思います。栃木戦ではそういう形が機能して結果にもつながりました。
――アーリーカップでは辻直人選手と小澤智将選手が不在でした。
篠山 辻はいるだけでアドバンテージを生むことができる選手です。辻が立っていればそこにディフェンスが張りつきますし、その選手はヘルプにも行けなくなります。また、辻がスクリーナーになってジョシュにオンボールスクリーンを掛ければ、ジョシュがそのままゴール下にドライブできますし、オフェンスのパターンも広がるかなと。小澤もそうですけど、彼らが入った時のオフェンスのイメージもできています。
――自身のパフォーマンスはいかがでしたか?
篠山 僕は全然良くなかったです。全体的に息切れしてしまいましたね(笑)。ただ原因はわかっていますし、開幕までには改善できるので大丈夫だと思っています。
――なるほど。ではアーリーカップをとおしてチームが得られた収穫は?
篠山 新外国籍選手のジョシュが予想以上にフィットできたことですね。もう一つは昨シーズンまで(ジュフ)磨々道が帰化枠として入りアドバンテージを取っていた4番ポジションに、野本が入っていいアピールをしてくれたことです。チームとしても収穫ですし、2人にとっても自信を得られた大会だったと思います。
――今シーズンの目標は天皇杯とBリーグの2冠になると思います。達成するために今、重点的に取り組んでいることは?
篠山 まだいろいろなシステムを採り入れている段階で、具体的にフォーカスしている練習はないんですが、北(卓也/ヘッドコーチ)さんからはディフェンスとリバウンドを強調するように言われています。昨シーズンのBリーグファイナル(栃木戦、79-85で敗北)では勝負どころでオフェンスリバウンドを連続で取られ、最後は簡単なディフェンスの連係ミスでやられました。川崎はオフェンスが武器ですけど、ああいう一発勝負ではディフェンスとリバウンドが重要だとみんなが痛感しましたし、僕自身もチームとしてディフェンスを強化することが必要だと思っています。
――その中で個人的に強化しているところはありますか?
篠山 川崎だけでなく日本代表でもそうなんですが、より激しくプレッシャーを掛けていこうと思っています。ここ最近は、その役割を藤井(祐眞)に譲ってしまっていましたけど、もっともっと突き詰めないといけないなと。ポイントガードのプレッシャーはチームのスイッチになりますし、そこを自分自身見つめ直してやろうと今意識して取り組んでいます。
――代表戦ではかなり激しくプレッシャーを掛け、相手ガードが嫌がっているように見えました。あのプレスをどうやって高めていくのでしょうか?
篠山 がむしゃらに行くのは誰でもできるので、いかに頭を使いながら激しく行けるかだと思っています。行ったはいいけど簡単に縦に行かれたり、ファウルを取られたり、そういうエラーをどれだけ減らして、相手の嫌がるディフェンスができるか。そこを突き詰めていきたいです。ただ、相手ガードによって守り方を変えることも必要で、代表戦では安全にボールを運ぶガードとマッチアップすることが多かったので、抜かれる不安を持たずにどんどん行きましたけど、例えばBリーグで富樫(勇樹/千葉ジェッツふなばし)や並里(成/滋賀レイクスターズ)のような、抜きにくる相手だったら距離を取って守らないといけません。当然ですけど、相手に合わせたディフェンスも考えながらやっていきます。
――相手の特徴にはかなり細かく注意を払う方ですか?
篠山 そうですね。セットプレーなども含めて結構見る方だと思います。チームスタッフが映像をわかりやすくまとめてくれるので意識して見ています。それを活かしてディフェンスをするのですが、正直に言うとうまくサボることもあったので(笑)、今シーズンは胸を張って「自分の武器はディフェンスです」と言えるようにしたいです。
――オフェンスで変えようとしている部分などはありますか?
篠山 昨シーズンのチャンピオンシップでは得点で貢献できたという手応えを得られたので、今シーズンもどんどんリングにアタックしていくつもりです。もちろんチャンピオンシップのような好調な状態を60試合続けるのは難しいですけど、隙があれば打つという積極的な姿勢は貫いていければと思っていますし、精神的にブレずに継続していくことが大事だと思います。
――今シーズンは小澤選手、ジュフ・バンバ選手、ジョシュ選手の3選手が加入しました。小澤選手の特徴、活かしていきたいところは?
篠山 僕がチームに合流する前にケガをしてしまったのでまだわからないところもありますけど。小澤は東海大九州の出身で、ウォン(ビョンソン/部長)さんという厳しい監督の下で鍛えられただけあって、ディフェンスではハードワークをしますし、走力もあり、一方でオフェンスではクレバーさもあります。派手なタイプではないかもしれないですけど、チームプレーヤーなので川崎に合っていると思います。たぶん、外のシュートも得意だと思うので一緒にプレーするのが楽しみですね。
――バンバ選手はいかがですか?
篠山 身長が2メートルないので4番としては少し小さいかもしれないですけど、その代わりウイングスパンがかなりあります。身体能力も高くて、リバウンドにはすごいパワーで入ってきます。ドライブもできるし、3ポイントも打てるので、オフェンス面でもすごく期待しています。3番もできますし、“ストレッチ・フォー”として4番でも活躍できると思います。意外と真面目でワーワーはしゃぐタイプではないですけど、いつも明るくてナイスガイです。
――では先ほどから何度か話に挙がったジョシュ選手は?
篠山 ジョシュはまだ様子を見ているのか、少しおとなしいですね(笑)。試合中もあまりカッとしないですし温厚な感じがします。来日して3年目で日本語もある程度わかるので、これからもっとコミュニケーションを取っていければと思っています。プレー面はさっき話したとおり、予想以上にチームにフィットしています。ルーズボールもリバウンドも40分間ハードに取りに行くし、すごく期待しています。
――今シーズンの川崎のここが違う、という部分を挙げるなら?
篠山 野本が成長したところを見てほしいですね。昨シーズンの4番は走ることとリバウンドが特徴でしたけど、今シーズンはハンドリングがいい野本がいるので、ポイントガードがボールを運ぶというより、1、2、3、4番の誰もがボールを運べてそのまま速い展開のバスケットを見せられますし、オフェンスの幅は大きく広がると思います。ディフェンスで言うと、ジョシュがポストアップのディフェンスでいい働きを見せていましたし、インサイドはより強力になると思います。代わって野本が出た時は運動量を駆使した激しいディフェンスもできますし、メンバーによっていろいろなディフェンスができることも強みになると感じています。
――では自身の注目してほしいところは?
篠山 今シーズンはキャプテンとして4年目のシーズンになります。これまでは磨々道というリーダーシップがあるベテランがいて、自分はキャプテンとしては頼りなかったと思いますので、今シーズンは名実ともにリーダーとしてチームを引っ張っていきます。これまで以上にコート内外でキャプテンシーを発揮する自分を見てほしいですね。
――最後に、今回から始まった連載のタイトルを決めたいのですが、例えば座右の銘などはありますか?
篠山 「日々努力」と「おかげ様です」です。
――「おかげ様です」とは?
篠山 北陸高校の久井茂稔先生がよく言っていた言葉です。常に周りの方々に対して「おかげ様です」という気持ちを忘れないようにと。……『篠山竜青の「おかげ様です」』。悪くないタイトルですね(笑)。
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