2018.04.21
川崎ブレイブサンダースのキャプテンを務め、日本代表でも活躍を続ける篠山竜青。コート内では激しく、コート外では明るく周囲をもりたてるポイントガードをもっと深く知るために母親の幸子さんへの取材を敢行。人柄がよくわかる5つのエピソードを明かしてくれた。
インタビュー・文=安田勇斗
写真=山口剛生
■エピソード1
「そっくり」
篠山3兄弟は、3人ともお母さんの幸子さん似だ。
「特にお兄ちゃんと竜青はそっくり。小さい時にね、竜青がお兄ちゃんとお姉ちゃんの写真を見て『何で僕、お姉ちゃんよりも大きいの?』って聞いたんですよ。『これはあなたじゃなくてお兄ちゃんなの』って」(幸子さん)
竜青が北陸高校1年生の時、幸子さんは竜青に間違えられたそうだ。思い出し笑いをしながら振り返る。
「寮に行って竜青の部屋にいた時、友達のお父さんに『竜青、何で学校に行かないんだ』って言われて。いくらそっくりだと言っても、着てるものも全然違うのにね」
■エピソード2
「勉強」
勉強はできたのか。幸子さんは竜青が中学校を卒業する時に手紙をもらった。
「『僕はお母さんのおかげで3年間勉強せずにすみました。ありがとうございます』って。勉強しないでいいなんて言った覚えはないんですけどね」。あまり得意ではなかったようだ。
それでも先生からは人気があった。
「小学生の時は、みんなが騒いでいる時に、『静かにしよう』って声を掛けたりしてたみたいなんですよ。真面目ではなかったですし、ふざけてばかりだったと思いますけど、そういう一面もあったみたいで。中学校でもテストでふざけた答えを書いたりしてたんですけど、先生からは『竜青いいですよ、面白くていいですよ』って。先生方にはかわいがられていたみたいで、今も試合を見に来てくれるんですよ」
大学時代は単位取得に苦しんだ。幸子さんは満面の笑みで話す。
「2年で終わってる科目を4年まで引っ張ったり、高校の同級生だった多嶋朝飛(現レバンガ北海道)にもずいぶん助けてもらったみたいですよ。卒業が決まった時はよほどうれしかったみたいで写メが来ました」
■エピソード3
「反抗期」
反抗期はあったのか。幸子さんは申し訳なさそうに言う。
「それがなかったんですよ。何かあっても、うらめしそうにチラッ、チラッと見るぐらいでしたね」
竜青が大人になってから、人づてに聞いた。
「『反抗期はありましたか?』と聞かれた時に、竜青はこう答えたそうなんです。『お兄ちゃんの反抗期がすさまじくて、それに対抗するお母さんがもっとすさまじくて。それを見てたら、反抗する気も起きませんでした』」
どのぐらいすさまじかったのか。今だから笑って話せる。
「『うるせーばばあ』って言われて、『ばばあじゃねえ、おかあちゃんだ。ばばあはあっちに住んでるよ』って言い返して。ドアは壊すし、枕も破るし、もうお兄ちゃんの時は大変でしたよ」
■エピソード4
「サプライズ」
インカレ(全日本大学バスケットボール選手権大会)で優勝した2009年、会場で試合を観戦していた幸子さんに、竜青から“サプライズ”があった。
「私の誕生日の12月3日に準々決勝があったんですけど、試合の後、会場で選手のみんなが『ハッピーバーズデー』を歌ってくれたんですよ。東芝(ブレイブサンダース)に入ってからも、試合後に『今日はうちの母、幸子の誕生日です』って言ってくれたり、本当にうれしかったですね」
■エピソード5
「大ケガ」
2014年12月、竜青は左脛骨骨折により長期離脱を強いられた。復帰後も心配だった幸子さんは息子に連絡に入れた。
「『大丈夫?』って送ったんですけど、返事を返してくれるのはそういう時だけ。かなり苦しかったみたいで『もっと褒められたいわー』って。で、ちょっとしてから『俺にどういうプレーヤーになってほしい?』って来たんですよ」
幸子さんは自分の思うままにつづった。
「『超攻撃的なディフェンスをする、超攻撃的なポイントガードになってほしい。もっともっと個性の強い選手になってほしい』って送りました。それから、(多嶋)朝飛たちとご飯を食べる機会があって、その時はみんながいたからか、あまり話せなかったんですよね。でもその後すぐ『がんばります。竜青という名に恥じないプレーヤーになります』ってメッセージが来てね。それを見た時は泣きましたよ」
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