2018.02.23
ともに日本代表のポイントガードであり、どちらも川崎に本拠地を置くクラブに所属。いくつかの共通点があり、近そうに見えながら、これまであまり接触がなかった篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)と町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)が、お互いのプレーやホームタウンの川崎、そして2018年の目標を語り合った。取材時間40分のうち30分強が笑いに包まれた、笑顔満開の対談をどうぞ。
インタビュー=安田勇斗
写真=新井賢一
――これまではどんな接点があったんですか?
町田 最初はゴミ拾いの時です(笑)。
篠山 あっ、憶えてる(笑)? 多摩川クリーンキャンペーンです。
町田 私が社会人1年目の時にご一緒しました。
篠山 あの時は18歳だよね? 今は?
町田 今年7年目で24歳です。
――多摩川クリーンキャンペーンとは?
篠山 川崎のスポーツクラブの選手やスタッフ、市民の方々が参加して、多摩川沿いを歩きながらゴミ拾いをするキャンペーンです。その中に町田選手もいました。僕は、篠原恵(富士通)選手とは、お兄さんが北陸高校の先輩だったこともあって、以前から知り合いだったんですよ。それでめぐちゃんと話している時に、富士通のスーパールーキーがいて。少し会話をしました。
町田 スーパールーキーじゃないです(笑)。
――それからもどこかで会ったんですか?
篠山 たぶんないですね。5、6年ぶりの再会です。
町田 そうですね。それからは会ってないですね。
――それでも、テレビなどをとおしてお互いの活躍は見知っていたと思います。それぞれプレーヤーとしてどんなイメージがありますか?
篠山 町田選手は日本を代表するポイントガードの1人で、スピードが一番の魅力の選手だと思います。速い選手はたくさんいるんですけど、町田選手の特にすごいところは緩急をつけられるところや、トップスピードでも止まれるところ、その中でも的確にパスをさばけるところで、見ていてすごく勉強になりますね。
町田 身長がないのでスピードを武器にしてますけど、今言われた部分はまだ課題でもあるので、もっとがんばらないといけないなと思っています。逆に篠山選手はディフェンスがすごいなと思います。……何か目の前で話すのは恥ずかしいですね(笑)。オフェンスは……。
篠山 さては俺のこと見てないな(笑)。
町田 見てます、見てます(笑)。オフェンスは、ドライブに行った時のシュートのセレクトや、パスの出し方がうまくて、すごく勉強になります。
――2人は川崎のクラブ所属、ポイントガードであることの他に、どちらもヘアバンドをしているという共通点があります。ヘアバンドをし始めたきっかけは?
町田 確か実業団3年目からだったと思うんですけど、それからずっとしています。1年目は今より髪が短くて、2年目は伸ばしました。で、3年目に思いきって切ってみたんですけど、前髪だけ邪魔でヘアバンドをつけるようになりました。それ以降はずっとこのスタイルです(笑)。
篠山 僕は今29歳なんですけど、辻(直人/川崎)が昨シーズン、茶髪にしたんですよ。その時に「30歳から髪を染めるのはカッコ悪いね」という話になって、自分も髪型を変えるなら今かなと。学生の頃から、サッカーの遠藤保仁(ガンバ大阪)選手が好きで、そのヤット(遠藤保仁の愛称)さんがヘアバンドをしてるんですよね。それで自分も20代のうちにヤットさんをヤットこうと思ったのがきっかけです(笑)。ただ続けるかどうかは常日頃悩んでいて、一部のファンの方からは短髪の方がいいと言われるんですよ(苦笑)。髪が長いと清潔感がないと。だから、切ろうかなという気持ちは、頭の片隅に常にあります。
――2016年リオデジャネイロ・オリンピックでの女子日本代表の活躍、男子ではBリーグ開幕があり、バスケット界は男女ともに注目されるようになりました。選手としてそういった実感はありますか?
町田 街を歩いてて声を掛けられるようになりましたし、応援に来てくれるファンの方も増えたのですごく実感しています。最寄りの駅前とか、練習場への行き来とか、川崎に出掛けた時とか、いろいろなところで声を掛けていただいています。
篠山 男子の試合もお客さんが増えましたし、僕も近所で声を掛けてもらうことが増えました。また、取材をしていただく機会も増えたので、本当に盛り上がっているなと感じます。
町田 女子も男子のようにもっと盛り上げられたらと思いますし、やっぱりプロになったことでうらやましさはありますね。
篠山 女子日本代表の活躍もうらやましいですよ。男子もそうですけど、身長差がある中で、しっかりとした武器を身につけて世界のベスト8まで来ているので、単純にすごいなと。男子ももっとがんばらないといけないなと思います。
――町田選手はリオ五輪でのベスト8進出をどう捉えていますか?
町田 アメリカにはボロ負けしましたけど(64-110)、前半は競っていましたし、オーストラリア相手にも勝てそうな感じはあったので(86-92)、快挙というよりもまだまだいけるという感覚はあります。
――男女ともに、さらに上に行くためにどんな部分を伸ばしていくべきだと思いますか?
町田 全体的に身長が小さいので、スピードやシュートの確率を上げて、みんなが外角のシュートを決められるようになれば、もっといい勝負ができると思います。
篠山 コートの中のどこにいる誰を使うか、どういう強みを活かして攻めるか、そういう共通意識を持たないといけないなと。ポイントガードで言えば、右から始めるか左から始めるか、2番(シューティングガード)を使うか3番(スモールフォワード)を使うか、パスにもドリブルにもメッセージをこめているつもりですけど、それを全員が共通意識として持っていないと攻められない。結局、ただパスを回して時間が過ぎてしまうことが多いので、そこは改善しないといけないと思っています。
町田 私も同じことを意識していて、練習でもチームメートに伝えてますけど、やっぱり難しいですね。
篠山 僕は周りをグイグイ引っ張っていくタイプではないので、個別に声を掛けて「次はこうしよう」と話しています。練習の時も、この選手がここでボールを持ったら、4番(パワーフォワード)と5番(センター)はピックに行こうとか、細かいプレーも話し合ってますね。まだまだ足りないかもしれないですけど。
町田 私もチームメートに「次はこうするから、こうしてほしい」とよく伝えてます。
――この先にはワールドカップや東京オリンピックも控えています。今後さらにバスケット界を盛り上げていくためには何が必要だと思いますか?
篠山 男子は日本代表がもっと結果を出さないと盛り上がらないと思いますし、代表選手の責任はより大きくなるかなと。あとは男女両方のバスケットを盛り上げるという意味で、もっと男女の交流を増やしていければと思っています。富士通レッドウェーブは同じ(川崎市)とどろきアリーナをホームとしていますし、お互いのファンが行き来するような環境にしていきたいですね。ブレイブサンダースを好きな方が富士通の試合に、逆に富士通を好きな方がブレイブサンダースの試合に。そういう流れができれば、男女ともにもっと盛り上がると思います。
町田 私も男子と女子が一つになってバスケ界を盛り上げていければと思います。女子で言えば、リーグ戦のテレビ中継がないですし、日本代表として結果を出しつつ、男子との交流の中で見ていただく機会をもっと増やしていければなと。
篠山 以前はブレイブサンダースと富士通のゲームの、同日開催があったんですよ。でもお客さん総入れ替えだったので、今後は両試合を見られる形が取れればいいですね。日程的に同日開催はしばらくなさそうですし、あってもチケットの問題などがあると思うんですけど。だから、同日開催は難しいとしても、合同イベントとか何かやりたいですね。
――パッと思いつくのはサイン会やトークショーですね。
篠山 そうですね。あとは……運動会(笑)。運動会は楽しいですね。バラエティー番組でたまにやってるじゃないですか。ああいうのをやりたいですね。シーズン中は難しいと思うので6月か7月に。
――どんな競技をやりますか?
町田 リレーがやりたいです(笑)。
篠山 あと玉入れ、騎馬戦。男女混合でやりましょう(笑)。それと町田選手のおばあちゃん家に行ってご飯を食べたいです。
――??
篠山 去年、『グラジオラスの轍』という番組で町田選手が特集されていたんですよ。
町田 大神(雄子/トヨタ自動車アンテロープス)さんと、吉田(亜沙美/JX-ENEOSサンフラワーズ)さんと、私の3人で。
篠山 女子バスケ界注目の司令塔3人という感じの特集で。大神選手はまさに日本代表を引っ張ってきた存在で、吉田選手は孤高でクールなポイントガード。で、町田選手はこれからの“顔”として紹介されるんですけど、1人だけテイストが違うんですよ。おばあちゃんと文通してたり(笑)。
町田 (笑)。
篠山 大神選手は自分のプレーを出せず苦しむ、吉田選手はトレーニングで追いこむ、町田選手はおばあちゃんと文通みたいな(笑)。今もやってるの?
町田 はい(笑)。年に4回ぐらい。
篠山 顔がめちゃくちゃそっくりで。
町田 それはないです(笑)。
――(笑)。話は変わりますが、どちらのチームも川崎を拠点としています。川崎という街にはどんな印象を持っていますか?
町田 北海道から出てきて一番驚いたのは人の多さですね。都会で何でもそろっているし、ちょっと出ればいろいろなところに行けるし、住みやすい街だと思います。
篠山 人の多さで言うと、川崎市は少し前に人口150万人を突破したんですよね。川崎駅や武蔵小杉あたりを中心に非常に活気づいていて、ショッピングモールなども多くてどこでも買い物ができる。多摩川を中心に自然もあって、いろいろな表情がある街だと思います。
町田 (武蔵)小杉はすごく栄えてきて、本当に変わったなと思いますね。
――普段はどんなところに出没するんですか?
町田 川崎駅が多いです。
篠山 えっ、ホント?
町田 はい、ラゾーナ(川崎プラザ)によく行きますよ。あと近場だと小杉にも行きます。自転車でグランツリー(武蔵小杉)に行ったり。
篠山 僕も川崎に行くことが多くて、ラ チッタデッラとラゾーナによく行ってますね。
――その川崎をより活気づけるべく、2018年はどんな1年にしたいですか?
篠山 2017年は天皇杯準優勝に始まり、日本代表にも呼んでいただきましたが、Bリーグも準優勝に終わりました。プロになったことによるクラブの成長、また自分自身の成長は感じられましたけど結果がついてこなかったので、2018年はさらなる成長を重ね、その上で結果を出したいです。代表にも引き続き呼んでもらえるような活躍を見せて、チームとしても結果にこだわる1年にできればと思っています。
町田 昨シーズン5位と悔しい結果だったので、まずはファイナルの舞台に戻れるようにしたいです。個人としては、今シーズンはアシストがメインになっているんですけど、それだけだとチームとしては苦しいですし、私自身も自分らしいプレーができていないと感じているので、もっと得点に絡んでいければと思っています。また、日本代表としてはワールドカップ(FIBA女子バスケットボール・ワールドカップ)もあるので、そこでメダルを取れるようにがんばります。
――では最後に、お互いへのエールをお願いします。
篠山 僕は結構女子の試合を見る方で、町田選手は特に応援しているのでぜひ日本一になってほしいです。富士通は町田選手が入ってから一度も日本一になってないと思うんですけど、ここでタイトルを取って女子バスケットボール界の“顔”になってほしいですし、その時はこうして対談させていただいたことを自慢させていただきます(笑)。
町田 私はあまり男子の試合は見てないんですけど(笑)、川崎の試合はテレビで見ますし、とどろきアリーナで観戦したこともあります。お互い優勝して、両チームで何かできたらいいなと思いますし、これからも一緒に川崎を盛り上げていきましょう。
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