■「京都だから、炎さんのチームだから移籍した」
今シーズン、片岡は環境を変える決断をした。昨季まで2シーズン在籍した仙台89ERSは、得点でもリーダーシップの面でも、チームに必要な選手へと飛躍した愛すべき故郷のチームだった。だが、今季はその愛着があるチームを離れる決意をした。2012年にbjリーグのドラフト指名を受け、1年在籍した京都への移籍を決意したのは、決して仙台がB2に降格したからではない、という。
「B1でプレーがしたいとか、B2に降格したからという、そんな理由で仙台を離れたわけではないんです。B1ならどこのチームでもよかったわけではなく、京都だから、(浜口)炎さんのチームだから来たんです」
2012―13シーズン、たった1年間、京都でプレーしただけだが、片岡は浜口ヘッドコーチに対し、「『一人一人の人間性を作ることから勝負は始まる』という、炎さんの考え方が僕は好きなんです」と口にする。その浜口ヘッドコーチやフロントに口説かれたことで心は動いた。難しい決断だったが、「まだまだ成長したい」との思いで新天地への移籍を決意した。
京都の強化編成担当を務める麻生卓志アシスタントGMは、片岡に全面的な信頼を寄せている。
「京都はこれから飛躍していくチームなので、片岡のように明るい選手がどうしても必要でした。明るい選手はたくさんいるんですけど、片岡の明るさは質が違うのです。岡田(優介)は自分がやるべきことをやって背中で見せるリーダー。片岡は負けた時や苦しい時に声を出せる選手であり、1試合1試合の重要性を語り、目の前の試合に対して取り組みができる選手。チームが上に行くためには、戦う意欲を作って引っ張ってくれる選手が必要だったのです。今ではケビン(晴山)や達哉(伊藤)たち、若い選手が片岡についていってますからね。ドラフトの時も口説きましたが、今回も口説きました。ソルジャーが必要だから一緒にやろうと」
チームにエネルギーを与えることは、どこにいても求められる片岡の一番の仕事なのだ。
■チャンピオンシップ出場に向け、今後さらに必要なソルジャーの出番
プレーの面では、30歳を超えても年々少しずつ成長している。特に、ゴールをねじ込むフィニッシュ力が上がっている。ドライブで切れ込んでからは、ディフェンスをかわしてバックシュートやフローターシュートに持ち込んだり、ショートコーナーに出て1対1を仕掛けたり、こうしたバリエーションが増えてきているのは、経験により判断力が上がっているからだろう。そしてシックスマンである今シーズンは、コートに立つ時間に流れを変える役割と向き合っている。
目標は「チームを勝たせること。30歳を超えても成長すること」だと言い、一昨年、はじめて代表候補の重点強化選手として招集された「日本代表でプレーすること」はずっと持ち続けている変わらぬ目標だ。
「仙台高校のようにボールへの執念があるプレーは誰でもできることだけど本当に大切なこと。能力やスキルがある日本代表こそ、そういうプレーをしたらもっと強くなれし、しなきゃいけないと思うので、僕はやり続けます」
今季のハンナリーズはオールジャパンで初の4強の舞台に立ち、警戒されるチームになってきた。昨シーズン逃したチャンピオンシップに出るためには、片岡のリーダーシップや体を張るプレーが今以上に必要だ。ここからの正念場は、さらにソルジャーの出番である。
文=小永吉陽子
第2回片岡大晴(京都ハンナリーズ)『普通の子』からの飛躍。その名は『ソルジャー』<前編>:(https://basketballking.jp/news/japan/20180207/46312.html)