2018.04.06
■B2からの這い上がりを仙台で見せたい
Bリーグ2年目。今、志村雄彦はバスケットボール人生最大の試練と向き合っている。
仙台高校、慶應義塾大学時代はサイズや環境のハンデを覆す反骨精神で下克上を起こしてきた。関東2部からのスタートだった慶應義塾大時代、4年次にリーグ優勝とインカレ制覇に導いたのは、日本一になった高校時代にチーム力を発揮する勝ち方を知り、大学のチームメートに諦めずに伝授し続けてきたからだ。JBL時代に3年在籍した東芝(現川崎ブレイブサンダース)では出場機会こそ恵まれなかったが、オールジャパンで日本一を経験し、これまでの学びのすべてを2008年から所属する仙台89ERSでぶつけ、bjリーグ時代はプレーオフに進出するチームにしている。だが、Bリーグではなかなか勝ち星をつかむことができない。
Bリーグ初年度の昨シーズン、仙台89ERSは14勝46敗で最下位。残留プレーオフで富山グラウジーズに敗れて無念のB2降格となった。昨季の仙台は強豪が集まる東地区の中で、特にサイズの面で不利だと言われていた。だが、ただ黙って屈していたわけではない。
「東地区が不利だという考えはまったくなかった。むしろ、強いチームとやるほうが得るものは大きい。僕たちが成長するには、強いチームと戦って成長していくチャレンジが必要でした」
実際、東地区のレバンガ北海道には勝ち越し、オールジャパン(全日本総合選手権)ではベスト8に入ることができた。しかし降格に至ってしまったのは、オーバーカンファレンスでの戦いで標的にされて勝てなかったことや、サイズの低さよりも国内選手の層の薄さや長引くケガ人、指揮官のキャリア不足など、チーム力が総合的に不足していたからだ。
「チームが成熟していない中で60試合を戦い抜くだけの力がありませんでした。B1にいるチームというのは、シーズンをとおして戦い抜けるチーム。それができないとこのリーグでは生き残れない」と初年度のチーム状態を振り返る。今、仙台に必要なのは昇格を目指すチーム作りであり、同様に重要視しているのが、「仙台の地でバスケを楽しむファンを増やすこと」だと志村は言う。
「僕自身のことでいえば、Bリーグ1年目に故郷の仙台でプレーできたことはありがたいことでした。でも昨シーズンは仙台の人たちに辛いところを見せてしまったので、次は這い上がって、一緒に喜びを共有したい。僕たちの仕事は、勝つことはもちろんですが、プロリーグは興行なので、会場に来て良かったと思わせることが大前提にある。大切なのは成長が見えるチームにしていくこと。成長することで観客に応援してもらい、楽しんでもらうことがプロチームだと思います」
■何よりホームで勝つことでチームを成長させる
今シーズンは、指揮官にWリーグのトヨタ自動車アンテロープスで経験を積んだ後藤敏博ヘッドコーチを迎えて再スタートを切ったが、11月12日現在、6勝9勝で苦しい船出となっている。今季もサイズのある国内選手は不在とはいえ、リードする場面はある。それでも敗れてしまうのは、ディフェンスで我慢できなくなって崩れてしまうからだ。これは、今まで志村のやってきたバスケットではないし、ナイナーズが目指すものでもない。学生時代から苦しい時こそチーム全員のディフェンスで耐え、オフェンスではチャンスを確実に活かすバスケをやり続けてきた。今こそ、その原点を見つめ直さなければならない。そして志村のあとに続く者も出てこなければならない。
チームの成長を訴え続ける志村は、そのカギとなるのは“ホーム”にあると言う。
「僕たちに一番必要なのは、ホームで勝つこと。ブースターの前で勝つ、ブースターとともに勝利を分かち合うという目標を実現していくことが、チームの上昇につながる。頭を使ってタレントチームに勝つことは高校時代からやってきたこと。それをなくしたら自分ではないし、そういう姿勢をこの仙台の地でチームカラーとして植えつけて、恩返ししていきたい。時間が掛かっても、です」
魂がほとばしるがごとくのプレースタイルは、今も昔も変わらぬトレードマークであるが、その奥底にある反骨精神こそがチャレンジし続ける理由。志村雄彦のようなガードを目指し、今も全国から仙台にある明成の門を叩く高校生がいるように、160センチで生き抜く仙台の象徴は、杜の都を盛りあげる使命でプレーし続ける。
文=小永吉陽子
前編:反骨精神で生き抜く志村雄彦のバスケ人生。だからこそバスケは楽しい(https://basketballking.jp/news/japan/20171110/36098.html)
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