2月16日に青山学院記念館で行われた、サンロッカーズ渋谷とのB1リーグ第20節第1戦を70-57で制した琉球ゴールデンキングス。チャンピオンシップクォーターファイナル敗退という昨季の結果を受けて大型補強を敢行した成果は、第19節終了時点で西地区首位という結果に表れている。新加入選手の中でも特に大きな期待を背負っているのは、昨季の王者である栃木ブレックスから移籍してきた古川孝敏だ。ファイナルMVPにも輝いた男は、ケガで開幕から11試合欠場したものの、復帰後は安定したパフォーマンスを発揮し、期待に応えている。
この日は7得点に終わったが、第3クォーターでチームがなかなか相手を突き放せない時間帯に中央突破のドライブで連続得点をマーク。流れを押し戻してチームを救った。
「大事なところで自分が攻めなければという意識はありますし、常に隙があればと思っている。あそこで点を取れたことは良かったと思います」
古川の武器といえば外角シュートを中心とした得点力であり、チームとしても大きく期待する部分であることは間違いない。ただ、彼に求められているのはプレー面だけではない。昨季チャンピオンを経験していることこそが、古川の最大の強み。そのことは古川自身もよく理解しており、今季はチームメートに積極的に声をかけ、鼓舞する姿が目立つ。
「自分が今まで経験してきたこと、厳しい試合の中でどういう精神状態で戦っていくか。自分が感じてきたことをみんなに伝えていくのが自分の役割だと思います。ただプレーで結果を出すということより、みんなでコミュニケーションを取ることで『チームで戦う』というところを上げていけるようにやっていきたいです」
前述のとおり、チームは西地区首位を快走しているが、強豪ぞろいの東地区所属チームとの対戦となると、栃木から移籍してきた古川としては負けられないという意識も特に強くなりそうなもの。しかし、古川自身は「自分たちがやるべきことをやるだけで、それによって勝ちがくるのかこないのかというだけ。ああだこうだ言われますけど、僕はそんなことは気にしてないです」と意に介さない。
「もうシーズンも半分を過ぎている。1試合1試合を大事にしていきながら、自分たちのバスケットボールをしっかり作りあげていけるように。その中で個人としてもパフォーマンスを上げていくことがチームのためになる」
周囲の声に惑わされることなく、チームが目指す場所に向かって“ブレない意志”を見せる古川は、琉球にとって欠かせない存在だ。
文=吉川哲彦