4本のシュートはどれも見事だった。第1クォーターでのあいさつ代わりの3ポイントシュート、第2クォーターでの反撃の狼煙を上げるスティールからのワンハンドダンク、第3クォーターでは得意のドライブからバスケットカウントを奪い、最終クォーターでは1on1を仕掛けステップバックからジャンプシュート。2ケタ得点には届かなかったものの、十分なインパクトを残した。
レギュラーシーズン最終戦となるアルバルク東京対京都ハンナリーズの一戦は、106-68と予想外のワンサイドゲームとなった。その中でA東京の馬場雄大は9得点をマーク。しかし自身は「もう少しやりようがあった」と、京都のディフェンスに対して持ち味を発揮しきれなかったと反省を口にした。それでも切れ味抜群のドライブや、今季テーマに掲げていたアウトサイドシュートを決めるなど、魅せるプレーでスタンドを沸かし今シーズンの1試合平均8.5点を上回る得点を挙げた。
プロ1年目はケガなどもありレギュラーシーズン60試合中40試合の出場にとどまったが、その中で「いろいろな経験ができた」。外角シュートはこの日は成功1本だったが、前日は4本決め「少しずつ打てるようになってきたし、ここに来て良くなってきた」と一定の手応えをつかんだ。ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチのバスケットにおいて肝となるピック&ロールも「使い方がうまくなってきた」と自信を深める。
さらに成長するために、どこを伸ばしていきたいか。この質問に馬場はこう答えた。「目標が高いところにあるので、全般的に伸ばしていきたい。外角シュートもそうだし、ディフェンスもそうだし、挙げたらキリがない。外国籍選手に当たり負けしない強さも課題になる」
「高いところ」とはどこを指しているのか。「NBAでプレーすることに強い想いがある」。馬場は昨春、将来的なNBA入りを目指し、渡米して現地の大学に編入することも検討していたが、迷った末に“現役大学生Bリーガー”としてA東京への加入を決めた。アメリカ行きは先延ばしとなったが、その夢を今も追いかけている。
日本人離れした身体能力を備え、スケールの大きいプレーでバスケットファンを魅了。筑波大学時代から日本代表で輝きを放つ大器は、初挑戦のBリーグでも随所に違いを見せつけた。NBA入りは壮大な夢だが、馬場は到達するまでのストーリーも描いている。「東京五輪は大きなチャンスになる。そこで活躍することがNBAにつながっていく」
まだ22歳。順調に進めばあと2シーズンBリーグを戦って、24歳でオリンピックの舞台に立つことになる。まだ東京五輪出場もNBA挑戦も現実味はないし、五輪においては1人でどうこうできるものではない。だが、馬場には期待させる何かがある。観衆を味方につけるダイナミックでアトラクティブなプレーは、実現困難な状況下でも希望を感じさせる。
文=安田勇斗