5月13日、「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2017-18」クォーターファイナルの第2戦、第3戦が船橋アリーナで行われた。ワイルドカード1位の川崎ブレイブサンダースは東地区1位の千葉ジェッツと対戦。第2戦に71-61で勝利を収めて第3戦に持ちこんだが、15-22で敗れ、準々決勝敗退となった。
「ガードとして最悪なプレーでした」
川崎のポイントガード、藤井祐眞が絞りだすような声で振り返ったのは、第3戦のタイムアップまで残り1分を切ろうかという時に選択したプレーだ。
スコアは15-16の1点ビハインド。相手のボールを自身の好守で奪った直後のオフェンスで、藤井は自らのレイアップシュートを選択。しかしそのシュートをレオ・ライオンズに大きくブロックされ、絶好の逆転チャンスをつぶす格好となった。
「自分でフィニッシュすべきなのかパスすべきなのか、迷いながらシュートを打ってしまった。ゴール下にいたジョシュ(デービス)にパスしても良かったし、ボールを浮かせてブロックされないシュートにしても良かった。判断ミスです」
この直後、千葉はポイントガードの富樫勇樹が、待ち構えたデービスのブロックを「浮かせたシュート」でかわし、15-18とリードを広げた。両者の明暗がくっきりと分かれたシーンだった。
川崎は第3戦、ポイントガードの篠山竜青とシューターの辻直人が絶不調。大黒柱のニック・ファジーカスも疲労で精彩を欠き、「ほとんどの選手が足をつっていたか、つる寸前」(篠山)という状況で、藤井は彼らを補って余りあるエナジーで戦った。
攻めてはチームハイの7得点。守っては持ち前の豊富な運動量でこぼれ球に飛びつき、チームの攻撃回数を何本も増やした。北卓也ヘッドコーチも「素晴らしかったですね。第3戦の前半は少し点差が離れましたが(6-14)、そこから彼のディフェンスで流れを呼んでくれました」とその活躍を称えた。
しかし、藤井本人は「いらないターンオーバーもしてしまったし、コントロールもまだまだ」と、ひたすら悔やんだ。
「僕の終盤の判断ミスがチームを悪い方向に行かせてしまった」。仲間たちへの謝罪の言葉を口にしたのち、「ニックと辻さんには特に申し訳ないです」と、涙で言葉を詰らせた。「どの相手からも激しくマークされる中で苦労して攻めてくれていたのに、周りがそこをサポートしきれなかったし、僕もサポートしきれなかった……」。最後は言葉にならなかった。
今季の開幕前、篠山は藤井のことを「ジョーカー」と称えた。ジョーカーはしばし、“最強の切り札”に例えられるが、実際に今季の藤井は篠山、もしくは辻の控えとして試合を引っ掻き回し、リーグ最強のシックスマンとして輝きを増した。
第30節京都ハンナリーズ戦の第2戦からは、欠場した篠山に代わって先発を務め、出だしのリズムを作ることの難しさを知った。大一番となったこのクォーターファイナルでは前述のとおり、判断の至らなさを痛感した。
「練習を積み重ねて、強くなって帰ってきたいです」。大きな経験を手にしたジョーカーは絶対無二の“スペードのエース”に進化し、来シーズンのコートに帰ってくるはずだ。
文=青木美帆