『W雄』対談<2>では、お互いがキャプテンを務めた高校時代の話に突入。まさしく、仙台高校(宮城県)と桜花学園高校(愛知県)という日本一のチームで勝利をつかむための取り組みを学び、リーダーシップを形成した年代だった。そして、2人が高校時代から際立っていたのが、みずからの考えを伝える「発信力」だ。
「パッションとエナジー」を感じて刺激しあう存在
――2人が出会ったのはいつですか?
志村 小学校ですね。お互いミニバスをやっていたので知ってはいました。
大神 とくに認識したのは中学校の時かな。山形、宮城、福島の南東北3県で、オールスターチームの練習会を何度かやったんですよ。その中でやたら元気なやつがいて。それが雄彦でした(笑)。コートにいても、遠征先のホテルのロビーにいても、めちゃめちゃ目立ってました(笑)
志村 元気なのは君もでしょ(笑)
――それぞれが目立つ存在の中で、お互いをどう見ていたのですか?
大神 中2のジュニアオールスター(春休みに行われる都道府県別対抗ジュニア大会)の時に自分の試合が終わって山形男子の応援に行ったんですけど、そこでも雄彦が宮城代表で試合をしているわけですよ。「うわ、あの宮城のやつ、マジ目立ってるよ」ってみんなで言っていました(笑)。そうしたら準優勝したでしょ。すごいよね(笑)。雄彦はプレーでも目立つんだけど、何がすごいかというと一番はパッション。コートからパッションが溢れている。だから男女の枠を超えて私のロールモデルでしたね。東北にこんなパッションある選手がいるんだって、自分のモチベーションになりました。そんな中学時代でした(笑)
志村 逆に自分もそう思っていましたね。男子とか女子とか関係なく、シンはエナジーがすごいから周りを巻き込む力があった。「女子でもこういうパッションがある選手がいるんだー」という感じでした。それまでは男子、女子というフィルターにかけて選手を見ていたけど、シンはそうじゃない。「大神雄子」という存在感は中学生の頃から天性のものじゃないかな。
――お互い「パッション」や「エナジー」という表現が出てくるほどの存在で、高校では仙台と桜花学園で日本一。しかも、高校でもU18代表でもキャプテン。まさしく、その年を象徴するリーダーに成長しましたが、高校でも刺激しあっていたのでは?
大神 そうですね。それこそ、高校は日本一を目指すチームだったので、会場で会っても自分の試合があったのであんまり話をする時間はなかったけど、仙台ですごく頑張っているという情報は入ってきました。それと、自分らの代はなぜかジュニアの遠征が男女一緒だったんですよ(当時はU18~U19代表は「ジュニア」というカテゴリー)。しかもロス遠征! そこでまた雄彦と一緒になって。縁があるなあとは思いましたね(笑)
志村 あれ、なんで男女一緒の遠征だったんだろうね? 今の時代だと、男女で遠征ってありえないよね。「あの大神さんと一緒に遠征……!?」って男子は言ってたよ(笑)
大神 いやいやいや、それは女子もそうだって(笑)。男子と遠征なんてビックリだったよ。ホームステイもしたりして、あの遠征は本当に楽しかった。ロス遠征で思い出すのは、試合がローカルルールだったこと。選手がタイムアウトを取れるんだけど、雄彦がいいところでタイムアウトを取るわけですよ。「こいつバスケットを知ってるな」と思って見ていましたね。
志村 シンも大きな声を出してプレーしているのが目立っていた。普段は女子の試合を見ることがないので、ジュニアの遠征で見た時は新鮮だった。やっぱり同い年で、高校でもジュニアでもキャプテンで出身も同じ東北。そういう意味では共通項が多くてシンには頑張ってほしかった。僕は全中オールスターで2位だったけど、シンは全中で2位。だから高校で日本一になりたいというのがお互いにあったと思う。シンも言ってくれたけど、大神雄子はモチベーターですよ。
リーダーシップを磨き、勝利への道筋を学んだ高校時代
――2人とも自分の考えを自分の言葉で話せるという意味では、高校でリーダーシップが磨かれて成長したと思います。何より、伝えたい熱といいますか、その発信力は取材のたびに感心していました。そうしたエネルギーの源はどこにあるのでしょうか。
志村 たぶん、好奇心がすごいんですよ。普段、インプットしている量が多いから、アウトプットしないと自分の中で溜まって消化しきれないので、情報や気づきを出していこうというのがありますね。取材で質問されるじゃないですか。そうすると、頭の中にしゃべりたいことがたくさん浮かんでくるんですよ。僕らが伝えたいところに入ってきた聞き手には「それ、僕も話したいんです。聞いてほしいんです」と、うれしくなって話しまくりましたね(笑)
全国大会になったらたくさんの記者が取材に来るけど、僕らは試合の時だけバスケットをしているわけではなくて、コートに立つまでの積み重ねがあっての40分間なんです。練習とか、先生やチームメイトと毎日の積み重ねがあって、それを試合の40分間で出し切る。そのことを仙台高校で学びました。だから試合のことだけじゃなく、試合に行きつくまでの過程とか、プレーひとつをとっても、どうしてそのプレーを選択したとか、そういうことを聞いてくれた方には、自分の思いをたくさん話したかったというのがありますね。
大神 それ! 本当にそう! 雄彦と同じ考えで、結果に行きつくまでには練習とか、チーム状況とか、葛藤とか、いろんなことを乗り越えていることを知ってもらいたいんです。それは自慢したいわけではなくて、最初から強かったり、うまかったり、勝ったりしているわけではないんですよね。ここまで来るにはこうした過程があったから、今こうなんです、というのを認めてもらいたい思いはありますね。勝利することは自分一人ではできず、コーチがいて、チームメイトがいて、スタッフがいて、家族が支えてくれている。となると、本当に感謝の気持ちや思いが自然と出てくるんですよね。だから自分は質問が1なのに、答えを10くらいバーッとしゃべってしまうんですよね(笑)
――お互い日本一になった高校時代に学んだことは、バスケットボールはコートに立つまでに、どれだけのやるべきことを積み重ねて臨んでいるか。そして、その取り組みがコートに出るということですね。
志村 その通りです。いろんな積み重ねを怠らずにやったから、40分が終わった時に勝利できるのだと高校時代に学びました。そうした取り組みが重要なのは、大学に行っても、プロに行っても変わらないことでした。
※対談〈3〉に続く。
取材・文=小永吉陽子