11月2日、西地区首位の琉球ゴールデンキングスは、昨シーズン王者アルバルク東京のホーム、アリーナ立川立飛に乗りこんだ。
2016年9月22日、LEDコートの演出でも話題となった歴史的な開幕戦では「エリート(A東京)対雑草(琉球)」という打ちだしでプロモーションが行われた両チームによる対戦だが、琉球で当時のメンバーから残っているのは金城茂之、岸本隆一、田代直希の3名のみ。ほんのわずか前に開幕したばかりのBリーグだが、時の流れの速さと選手移籍の活発さを感じさせる。2年前の一戦では追いあげむなしく75-80と敗れた琉球だが、当時とは戦力の厚みも積みあげた自信も異なる姿を見せたいところだ。
琉球は試合開始直後からエンジン全開。橋本竜馬、ジェフ・エアーズを中心に苛烈とも言えるプレッシャーを掛け続け、前半をわずか27得点、シュート確率を31パーセント(3ポイントの成功を0本)に抑えこむ。攻めてはジョシュ・スコット、岸本隆一らを中心に、内外のバランス良く41得点を挙げるなど、常時試合の主導権を握った。
後半に入っても激しいディフェンスは衰えることなく、相手を圧倒。高い位置からファウルをいとわない激しいコンタクトを続けることで、A東京の代名詞でもあるピック(スクリーンを仕掛けること)を封じ、オフェンスリズムを狂わせることに成功した。第4クォーター5分を超えてディフェンスの足が鈍ったところでファウルがかさみ始めたが、ゴール下をしっかりと固めて要所を締めると、最後までA東京のオフェンスを自由にさせずファイナルスコア67-53。琉球にとっては、エネルギッシュなプレーで相手をコントロールする完勝を収めた。
日本代表のアシスタントコーチ時代、A東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチの下で苦楽をともにした琉球の佐々宜央HCは試合後の会見で「最後まで守りきれて良かった」と語ると、「チームルールが守れている時間帯が長かった。集中して(ゲームプランを)遂行してくれた」と自チームの奮闘を称賛。一方、「これを続けられるかどうかで真価が問われる」と、貴重な勝利に浮かれることなく、第2戦に向けて気を引き締めた。
敗れたA東京のパヴィチェヴィッチHCは「琉球が強く、より良いプレーをされて負けてしまった。自分たちのプレーが全くできていなかった」と完敗を認め、「現段階のリーグの中では、琉球がナンバーワンの力を持っている。千葉(ジェッツ)、川崎(ブレイブサンダース)、栃木(ブレックス)と比較しても琉球の完成度が高い」と、最後まで闘志を前面に押しだして会場を魅了した相手チームに賛辞を送った。
この試合、久しぶりのポイントガードのポジションでプレーした岸本は、3ポイント2本を含む8得点に5リバウンド7アシストを記録。ボールを長く保持することで調子を上げ、伸び伸びとした姿をコートで披露した。
「今はもう雑草軍団ではないかもしれないが、エリート軍団ではないです。僕は琉球の在籍年数も長いですし、チームへのプライドも持っている。(エリートと言われていた相手に対し)今日勝てたことは感慨深い」と2年前に想いを馳せつつ、当時は「いろいろと背負いこみすぎて、できれば2度とああいう環境ではやりたいくないと思っていた」。しかし、調子が上がらない時期や、タフなシーズンを乗りきったことで、「今では、もう1回晴れやかな大舞台に立ちたいと思えるようになった」。続けて「ああいった環境で試合をやって、自分たちの力を証明したいし、リアルに大舞台に立つ姿を想像できる自分がいる」とメンタル面での成長を2年間の変化として挙げた。
記念すべき開幕戦に匹敵する大舞台と言えば、チャンピオンを決めるファイナルの舞台。琉球、そして岸本がその舞台にたどり着くには、「現時点でベスト」(パヴィチェヴィッチHC)のチーム力とそれを支えるハードワークを維持できるかに尽きるだろう。
激戦の東地区に注目が集まりがちなBリーグだが、西から虎視眈々と栄冠を狙う琉球と、キャプテン岸本の活躍にも目が離せない。
文=村上成