高位安定したプレーでディファレンス・メイカーとして期待されるビッグマン
4月26日から幕を開ける「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2018-19」。クォーターファイナル、セミファイナルを勝ち上がり、5月11日に横浜アリーナで開催される決勝戦「B.LEAGUE FINAL 2018-19」で、3シーズン目のチャンピオンが決定することとなる。
今季のBリーグ王者を予想するうえで、千葉ジェッツを挙げないわけにはいかないだろう。昨季のファイナルでアルバルク東京に敗れた千葉は、開幕から白星先行で勝利を重ね、Bリーグ初年度に川崎ブレイブサンダースが残したリーグ最多勝記録(49勝11敗)を上回る52勝8敗でレギュラーシーズンをフィニッシュ。
バックコートに富樫勇樹と石井講祐、フロントコートにアキ・チェンバース、マイケル・パーカー、ギャビン・エドワーズを配置する千葉のスターター陣は、攻防両面で相手チームの脅威になっていることは間違いない。
そしてベンチからは主に西村文男や田口成浩、原修太、キャプテンの小野龍猛が控えており、外国籍選手としてジョシュ・ダンカン、トレイ・ジョーンズが在籍している。
今季から新たに千葉へ加わった選手としては、田口、ダンカン、ジョーンズ、藤永佳昭、大宮宏正がいるのだが、ここではエドワーズ、パーカーに次ぐインサイドの柱として活躍しているダンカンに注目していきたい。
レギュラーシーズンの出場49試合のうち、47試合でベンチスタートとなったダンカンは、そのうち35試合で2ケタ得点を奪取しており、パーカー(平均15.8得点)に次ぐチーム2位の14.0得点に6.4リバウンド1.9アシストを記録。千葉がチャンピオンシップを勝ち上がり、初優勝を成し遂げるうえで、ダンカンはディファレンス・メイカー(違いを生み出す男)になる要素を秘めていると言っていいだろう。
ベンチスタートながら2ケタ得点を連発できるダンカンのメンタリティーとは?
好きな選手は1990年代中盤に一世を風靡した長身ポイントガード、アンファニー“ペニー”ハーダウェイ(元オーランド・マジックほか)と語ったダンカンだが、これまでのキャリアにおいて最も影響を受けた選手については「おそらく父だと思います。父はプロとしてはプレーしなかったものの、バスケットに関してたくさんのことを教えてくれました」とコメント。地に足の着いた強じんなメンタルを持ったダンカンらしい言葉に、思わず好感を抱いた。
205センチ111キロという屈強な体格を誇るダンカンは、デイビッド・ウェスト(元ニューオーリンズ・ホーネッツほか)やブライアン・グラント(元ポートランド・トレイルブレイザーズほか)、タイロン・ヒル(元クリーブランド・キャバリアーズほか)といったビッグマンを輩出したザビエル大学で4年間プレー。
2年目からはNCAAトーナメントに出場しており、チームトップの平均12.4得点を挙げた4年目には、エリート8(準々決勝)に進出。ラッセル・ウェストブルック(現オクラホマシティ・サンダー)やケビン・ラブ(現キャブス)を擁するUCLAに敗れたことで、カレッジキャリアを終えた。
その後イスラエルやトルコでキャリアを積み、昨夏千葉へ加入したダンカン。「高校生の時から3ポイントには自信がありました」と本人が語ってくれたように、ザビエル大では4年間すべてにおいて3ポイント成功率38.0パーセント以上を記録しており、いずれも平均1.0本以上を決めるシュートレンジの広さを見せていた。4年次には成功率41.7パーセント、平均1.5本成功と、見事な数字を残している。
Bリーグで主にパワーフォワードとしてプレーするダンカンは、ポストプレーからミドルレンジジャンパー、さらには3ポイントも放ちながら、フィールドゴール成功率52.9パーセント、3ポイント成功率42.5パーセント、フリースロー成功率79.0パーセントと、高い精度を誇っている。
屈強な体格ながら多彩なレパートリーで点を取ることができるダンカンは「大学では4番ポジション(パワーフォワード)でプレーしていましたが、システム的にペリメーターとしてプレーすることも多くありました。プロになってからインサイドプレーヤーとしてやっています」と自身のプレースタイルについて明かしてくれた。
ベンチスタートというのは、主力であれば安定した出場時間を得ることができるものの、チームの流れが良くない時や先発陣がファウルトラブルになった時など突如出番が回ってくることも少なくない。そこでダンカンへ、安定して2ケタ得点を挙げることができるメンタリティーについて聞いてみると「自分のペースで試合ができるよう、変に意識せず、むりやり何かをすることもなく、自信を持ってプレーすることです。もちろん、個人練習やエキストラで何かすることで、その自信にも繋がると思います」という答えが返ってきた。約8割を誇るフリースロー成功率が示しているように、安定したパフォーマンスを発揮できるダンカンの存在は、チャンピオンシップを戦い抜くうえで大きいはず。
豊富なレパートリーを駆使して相手ディフェンス陣を悩ませるダンカン
レギュラーシーズンを終えて、「千葉ジェッツでとても楽しくプレーしていますし、Bリーグもレベルの高いすばらしいリーグだと感じています」と振り返ったダンカン。チャンピオンシップでもジョーンズと交互に出場していく可能性こそあるものの、サイズとスキル、機動力と3拍子そろったエドワーズ、攻防両面で絶大な影響力を誇るパーカーと共に、ダンカンは千葉の初優勝へ向けて活躍が期待されている。
千葉に在籍する外国籍3選手とパーカーは、プレースタイルや体格こそそれぞれ異なるものの、いずれもディフェンシブ・リバウンドを奪って自らボールプッシュし、ファストブレイクでフィニッシュまで持ち込むことができる。これはリーグトップの平均86.0得点をたたき出す千葉を象徴する要素の1つと言っていいだろう。
そしてダンカンは、リング下でダンクやフックショット、レイアップやフェイドアウェイジャンパーなど多彩なフィニッシュで得点を稼ぎ出す。「私の強みは、幅広くいろんなことをこなすことで、ディフェンスを守りづらくしていることだと思います」と語ったように、ダンカンは豊富なレパートリーを繰り出して、チャンピオンシップでも2ケタ得点を連発するに違いない。
チャンピオンシップ開幕まで1週間を切り、ダンカンはチームとして「まずは目の前の試合を1試合ずつしっかり戦うことです。もちろんチームの目標は優勝です」と力強い言葉を発すると「個人的にフォーカスしていることは、チームの目標達成のために自分にできることは何でもするという覚悟でやっています」と自身の意気込みを語ってくれた。
27日に船橋アリーナで行われる富山グラウジーズとのクォーターファイナル第1戦から、盤石の態勢でBリーグ初優勝を目指してチャンピオンシップに臨む千葉。その中には、ベンチから献身的なプレーで活躍するダンカンの姿があるはずだ。
取材協力=千葉ジェッツ
文=秋山裕之