新しいスタイルを模索するシーズン
シーズンの5分の1を消化して4勝8敗。中地区優勝を果たした昨季は、同じ12試合目の時点で8勝4敗として地区首位に立ったタイミングだった。そこから一度もその座を譲ることなくレギュラーシーズンを駆け抜けた新潟アルビレックスBBにとって、今季は試練の序盤戦となっている。その要因は言うに及ばず、チームの中軸を3シーズン担った絶対的得点源が去ったことで、チームスタイルの変更を余儀なくされたことだ。
もちろん、目覚ましい結果を残したチームのスタイルを変えることは簡単ではない。ピック&ロールやトランジションを増やすべく試行錯誤しているものの、遂行力という点では昨季よりも格段に劣ってしまっているのが現状。もう1人の軸として在籍4シーズン目に入った五十嵐圭は、チーム最年長に加えてオフェンスを司るポイントガードという立場もあり、もどかしい思いを抱えながらプレーしている。
アウェーで臨んだ第8節のサンロッカーズ渋谷戦も、11月9日の1戦目は72-83で敗戦。前節の時点で東地区首位を走っていた好調なチームに対し、ターンオーバーなどで相手を波に乗せてしまう必然の黒星だったと言っていい。五十嵐も「こちらのミスから得点を取られている。自滅してしまった感じです」と反省しきり。その前の第7節では西地区首位に立っていた名古屋ダイヤモンドドルフィンズから2勝を奪っていたが、その2戦についても「手応えは全くないです」と振り返る。相手あっての試合とはいえ、その前にチームのスタイル構築にフォーカスしなければならないのが現状だ。
「相手どうこうというよりも、自分たちのバスケットをコートで出しきること。どういうバスケットをやりたいかがまだ確立されていないので、相手への対策の前にまずは自分たちがしっかりしなければいけないと思います」
「まずは自分たちのプレーをしっかりやりきること」
そんな中、翌10日に行われたSR渋谷との2戦目では、相手の外国籍選手のベンチ登録によって「インサイドでは我々に分がある」(庄司和広ヘッドコーチ)状況となったことから、外国籍選手を中心に果敢にアタックするオフェンスに変更。五十嵐はピック&ロールからパスやドライブを使い分けて今季最多の16得点、アシストも2番目に多い8本をマークした。チームは最大15点リードしながら第4クォーター残り2.8秒にバスケットカウントで追いつかれ、かつフリースローを決められると逆転を許すという瀬戸際だったが、そのフリースローが外れて命拾い。延長では両外国籍選手に加えて五十嵐もアグレッシブに攻め、5分間で17得点を積み上げて白星をつかんだ。
その延長で五十嵐は、残り1分23秒にドライブから体勢を崩しながらレイアップをねじ込み、残り22秒にはドライブからニック・パーキンズのダンクをアシスト。この2つのプレーは勝利を大きく手繰り寄せるビッグプレーだった。試合終盤は森井健太との2ガードで負担が減ったとはいえ、41分17秒に出場しながらも最後までドライブのキレが失われなかったのは驚異だ。
「今日は結構長い時間コートにいたので、ボール運びは森井に任せながらハーフコートでしっかりコントロールすることを心がけました。第4クォーターと延長では僕が中を割っていって得点につなげることができたのが良かったと思います」
シーズンがまだ序盤とあっては、この1勝で喜んでばかりもいられない。「悪いなりにディフェンスで我慢するところは我慢できた」とある程度の手応えも感じてはいたが、この試合で変更したオフェンスの形については今後も試行錯誤が続く。五十嵐は自身の立場を踏まえ、コーチ陣と積極的に意見交換していきたいという。
「ラモント(・ハミルトン)が昨日『ボールに触れなかった』と言っていたので、スタッフもそこを汲んでインサイドにボールを集めて、彼もそこで信頼を勝ち得るようにしっかりやってくれた。これからもそこを起点にするのか、そこを絡めながら違う形を作るのか、そのあたりはスタッフと話し合っていきたいと思います。要所で僕が誰を使うのかということをもっと考えていかないといけない」
手探りの中でも、最近3試合は他地区上位チームに土をつけて3勝1敗。五十嵐も「内容が良くて勝った試合は全くないんですが」と前置きした上で、結果が少しずつついてくるようになったことはポジティブに受け止めている。そしてもちろん、強さを取り戻すためにフロアリーダーとして突き詰めていくことも忘れてはいない。
「ここ数試合なんとか勝ちにつなげられているのは、昨シーズン培った地力があるのかなとも感じます。ただ、もう少しうまくやっていれば勝率も順位も変わっていたと思いますし、昨シーズンと比較するわけではないんですが、これは確実に通用するという絶対的なものを見つけていかないといけないと思います。今はもうとにかくチャレンジャーの気持ちで、まずは自分たちのプレーをしっかりやりきることだと思います」
文=吉川哲彦