2018.01.07

「個の力ではなくチームで戦う」、大野篤史HC体制で千葉ジェッツが2年連続の栄冠に輝く

三河を決勝で退け2年連続で天皇杯を制した千葉[写真]=山口剛生
大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 1月7日、「第93回天皇杯・第84回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」のファイナルラウンド男子決勝がさいたまスーパーアリーナで行われた。前大会王者の千葉ジェッツシーホース三河を89-75で下し、2年連続2回目の優勝を達成した。

 Bリーグ屈指のシューター集団・千葉が、その真価を大いに発揮した。3ポイントの試投本数25本に対し、成功本数は10本。40.0パーセントという高い確率のシュートをここぞというところで沈め、三河を大きく突き放した。

 桜木ジェイアールのファウルトラブルに苦しみながらも、比江島慎アイザック・バッツダニエル・オルトンらの得点で、5点ビハインドで前半を終えた三河。三河の鈴木貴美一ヘッドコーチはハーフタイムに「第3ピリオドで追いつき第4ピリオドで勝負」と選手たちに伝えたが、その第3ピリオド開始早々に9連続得点を奪われ、一気に22点離された。契機となったのが千葉・小野龍猛が決めた3連続3ポイントだった。

千葉に流れを呼び込んだ小野[写真]=山口剛生

 鈴木HCは「簡単にスリーを打たせないといって試合に入ったけれど、ビハインドになったところで一番やられてはいけないことをやられた。ダメージは大きかった」とコメント。ポイントガードの橋本竜馬も「みんな混乱していた。あそこは我慢の展開。全員で守って、大切に攻めるべきだったのに、その意識が抜けてターンオーバーが続いてしまった」と振り返っている。

 一方、千葉の大野篤史HCが勝因に挙げたのはリバウンドだった。「(前半の)我慢比べの中でディフェンスリバウンドをとって走れる展開を作ったことが一番のポイント」と話した上で、「第3ピリオドの10分間はやるべきことと自分たちのスタイルを貫くことができた」と続けた。拮抗した展開の中、小野やギャビン・エドワーズら長身選手を筆頭に、選手全員がさぼることなく徹底して走った。この土台があったからこそ、「入ると確信して打ち続けた」小野の連続3ポイントをきっかけに、ジェット気流のような爆発力を発揮できたのだ。

大野HCはBリーグ初年度の2016年から千葉を率いる[写真]=山口剛生

 不動のスタメンポイントガード・富樫勇樹のケガによる欠場が選手たちに伝えられたのは、大会前日のことだった。それでも、一昨年10月の負傷離脱から復帰した西村文男が富樫不在を見事にカバーし2連覇を達成。大野HCは、その最大の要因を「個の力ではなくチームで戦うことを表現できたこと」と言う。「『誰かがハドルを組んでくるんじゃないか』『誰かが指示してくれるんじゃないか』と当事者意識が薄かったチームが、共通理解を持って戦えたことが今大会の収穫だと思う」と大会を総括した。

試合後には選手たちが大野HCを胴上げ[写真]=山口剛生

文=青木美帆

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