富山グラウジーズにとってクラブ初の天皇杯ファイナルラウンドは、準々決勝で宇都宮ブレックスに敗れて初戦で幕を下ろした。
最終スコアは65-74。チームの支柱である宇都直輝とジョシュア・スミスを欠く中でも昨年のファイナリストに善戦したが、2点ビハインドで迎えた試合終了残り2分4秒からの連続5失点が大きく響き、あと一歩及ばなかった。
「一つひとつの細かいプレーの質、ボールに対する思いが僕たちより宇都宮さんの方が勝った結果」と敗因を分析したのは葛原大智。最終クォーターでコートに立ち続けたシューティングガードは、この10分間に5得点と2つのオフェンスリバウンドをもぎ取って存在感を示し、試合をとおして8得点4リバウンドを記録した。
しかし試合後は「自分のプレーができなかったです」と反省しきり。その言葉を裏付ける1つのプレーが第3クォーター終盤にあった。同クォーター残り2分25秒、味方がスティールからボールを奪い、いち早く走り出していた葛原にボールが渡りワンマン速攻の状態となったが、相手に追いつかれてプレッシャーがかかり、レイアップを決めきることができなかった。
「ああいう決めきるところで決めきれないのは僕の練習不足。あそこで決めていればもうちょっと違う展開になったのかなとも思います」
外した直後は両手を頭の後ろで組み、悔しさをあらわにした葛原。それでも、この日はベンチスタートながら22分35秒のプレータイムを与えられた。「激しいディフェンスだったり3ポイントが僕に求められているところ。それができれば(ドナルド・ベック)コーチからも使ってもらえるということが今日の試合で確信に変わったので、残りの試合も継続してやっていきたい」と、手応えをつかんだ一戦となった。
天皇杯は準々決勝で涙をのんだ富山だが、休む間もなく再びリーグ戦へと戦いの場を移す。2017-18シーズンに特別指定選手として富山に加入した葛原は、在籍3シーズン目を迎えている。今季は開幕当初こそ先発出場が続いたが、現在はシューターとして頭角を表してきた前田悟が代わりに先発の座をつかんでいる状態だ。
年齢が1つ年下の後輩が結果を出していることについては「前田選手が活躍するのはすごく嬉しいですし、それと同時に僕も負けてられないという気持ちもある」と、やや複雑な心境のよう。だが、「欲を言えば先発で出たいですけど、今チームとして求められているのはそこではない」と葛原はしっかりと自分の役割を把握している。
「どんな場面で使われても、期待に応えられるように準備していくだけだと思います。今はコーチの信頼を獲得して少しでもプレータイムを伸ばすことが目標。それを継続していけば、3ポイントなどの結果もおのずとついてくると思うので、まずは下を向かずに頑張っていきたいです」
2020年、“年男”となり新たな気持ちでBリーグ後半戦に臨む葛原の活躍が楽しみだ。
文=小沼克年