勝敗を分けた第2Qの攻防。JX-ENEOSの佐藤清美HCが打った一手

JX-ENEOSは5大会連続22回目の優勝を果たした[写真]=山口剛生

 1月7日、最終日を迎えた「第93回天皇杯・第84回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」ファイナルラウンド(男女準々決勝〜決勝)は、さいたまスーパーアリーナで女子決勝が行われ、JX-ENEOSサンフラワーズがデンソーアイリスを84−62で破り、22回目の優勝を果たすとともに、大会5連覇を達成した。

 過去3回、決勝でJX-ENEOSに敗れているデンソーは、試合開始からペースをつかむ。エースの髙田真希が第1クォーターだけで10得点をマークする活躍を見せれば、センターの赤穂さくらがJX-ENEOSの大崎佑圭とインサイドで互角の攻防を見せる。さらにリバウンドでもJX-ENEOSの7本に対し、デンソーは16本も奪い、試合の流れを引き寄せた。

 第2クォーターに入っても伊集南と稲井桃子に連続得点を奪われたJX-ENEOSはタイムアウトを請求。佐藤清美ヘッドコーチは大崎をベンチに下げて、4アウトのフォーメーションを組む。ここが勝負の分かれ目となった。試合後の記者会見で佐藤HCは「立ちあがりからインサイドばかり見てしまい、ボールの動きが悪かった。そこでメンバーを入れ替えた」と振り返る。一方、デンソーの小嶋裕二三ヘッドコーチは「JX-ENEOSに対応されてしまった。ここから反対にアウトサイドからの攻撃にうちが対応できなかった」と、悔しがった。

「対応されてしまった」と悔やんだデンソーの小嶋HC[写真]=山口剛生

 JX-ENEOSはタイムアウト直後からスパートした。メンバーチェンジにより宮澤のマッチアップが赤穂さくらに代わったデンソーは、機動力の面で後れを取る。さらにそれを見逃さなかった宮澤がここから9得点を挙げてデンソーからペースを奪い取った。リズムを取り戻したJX-ENEOSは、後半に入っても攻撃の手を緩めない。吉田亜沙美から渡嘉敷来夢のホットラインで確実に得点を挙げれば、デンソーが繰り出したゾーンディフェンスをあざ笑うかのように宮澤が3ポイントシュートを撃ち抜いた。

計9アシストで攻撃を組み立てたキャプテンの吉田[写真]=山口剛生

渡嘉敷は第2、第3Qだけで計17得点を稼いだ[写真]=山口剛生

 対するデンソーは後半に入ると髙田頼みのオフェンスになってしまう。それでも高田は両チーム最多の27得点を挙げるものの、他のメンバーの点数が伸びずJX-ENEOSのペースを崩すまでにはならなかった。終わってみれば、22点もの大差をつけてJX-ENEOSが快勝。佐藤HCの采配がさえたとともに、チーム力の厚さを示す結果となった。

 佐藤HCは「ファイナルラウンドの3試合とも20点差をつけて勝利することができたのでとても満足している。やはりリーグ戦でトヨタ自動車に負けたことが薬になったのだろう。自分としては連覇のプレッシャーで眠れない時もあったが、今はホッとしている」と、最後は笑顔で記者会見を締めくくった。JX-ENEOSにはこれからリーグ10連覇を目指す戦いが待っている。

文=入江美紀雄

モバイルバージョンを終了