演出家・映画監督の堤幸彦氏がホームゲームの演出をプロデュースすることになった今シーズンの名古屋ダイヤモンドドルフィンズ。昨日掲載した堤幸彦監督特別インタビュー「今ここでやるべき仕事だと感じています」では、堤氏自身に故郷・名古屋への思いや今後の展開について話していただいた。そして、ここでは新しいエンターテイメントの具体的な内容を紹介していく。
文=吉川哲彦
『誇らしいドルフィンズ』というゴールに向かう新たな取り組み
「Dream of NAGOYA」というコーポレートステートメントの下、名古屋のシンボルとなるべく本格的に動きだした名古屋D。もちろん、ホームゲーム運営の中で大きな割合を占めるアリーナ演出が大きな軸の1つであることは言うまでもない。今季はそのアリーナ演出を映画監督・演出家の堤幸彦氏がプロデュースし、趣向を凝らした様々な演出を準備しているという。
ご存じのとおり、名古屋DはNBL時代までは企業形態のクラブだった。フロントスタッフの園部祐大によれば、ホームタウン活動はもとより、アリーナ演出の面も決して十分なものとは言えず、それはB.LEAGUEになってからの2シーズンでもまだ足りない部分があったという。
「実業団時代は照明の暗転も、天吊りのビジョンもありませんでした。B.LEAGUEになったタイミングで劇的に変わったということは言えますが、お手製感は否めませんでした。ワクワク、ドキドキがたくさんある楽しいアリーナということをテーマに、私たちのビジョンである『誇らしいドルフィンズ』というゴールに向かっていこうというのが今回の取り組みです」
注目すべきはやはり、堤監督のプロデュースという点だ。「バスケットって何人でやるの?」というほど競技の知識が浅い堤監督は、それを逆手に斬新な発想で演出を考えた。選手が街に出ていき、歩くにつれて街全体が赤く染まっていくというCG処理を施した映像がその代表格。他にも応援団長のような位置づけのキャラクターの登場、伝統工芸である名古屋扇子を使った応援スタイル、名古屋を拠点に活動するAK-69による楽曲提供といったものが用意されている。AK-69に関しては堤監督とは別にオファーを出していたのだが、堤監督から推薦があり、二人の対談が実現。演出のコンセプトに沿った楽曲制作を依頼するに至ったそうだ。試合終了時には勝敗の結果によって異なる曲を選手・観客で合唱するという試みも準備されている。1日のエンディングという意味で、単なるバスケットの試合にとどまらず総合エンターテイメントとして観客に『今日1日楽しかった』と思ってもらうためのもの。歌詞は監督による書き下ろしとのことだ。
アリーナだけでなく名古屋の街全体を赤く染めようと新機軸を打ち出した名古屋D。そのホームゲームは、「今のバスケット界、スポーツ界にない新しいエンターテイメントとして認識していただけると思います。期待は大きいです」(園部)という言葉の通り、魅力的な空間に生まれ変わる。10月6日の開幕戦が待ち遠しい限りだ。