2018.09.07

【Bリーグ開幕特集】名古屋ダイヤモンドドルフィンズ①「フランチャイズ“名古屋”の夢を拓くクラブに」

Bリーグ3シーズン目の開幕を控え、名古屋ダイヤモンドドルフィンズは新たなスタートを切ろうとしている[写真]=B.LEAGUE

3シーズン目の開幕を目前に控えたBリーグ。過去2シーズンで得た成果、反面浮き出てきた課題、その両者を昇華していくことでクラブはさらに進化を遂げていくはず。それをまさに実現しようとプロジェクトを立ち上げたクラブがある。それが名古屋ダイヤモンドドルフィンズだ。バスケットボールキングでは開幕に向けて名古屋Dが企画する施策を紹介するとともにヘッドコーチ、選手のインタビューをお伝えする。

取材・文=吉川哲彦
写真=黒川真衣

「Dream of NAGOYA」に秘められたクラブの想い

名古屋ダイヤモンドドルフィンズのこれからを語ってくれた千葉洋一郎常務[写真]=黒川真衣


 B.LEAGUE3シーズン目の開幕を控えた今、名古屋ダイヤモンドドルフィンズが大きく変わろうとしている。

 昨季、チームとしての成績は一昨季から向上し、チャンピオンシップに進出。その一方で、クラブとしては観客動員の伸び悩みに頭を抱えていた。危機感を覚えたフロントスタッフは、コーポレートステートメントである「Dream of NAGOYA」を前面に打ち出し、より地域に根差した活動に大きく舵を切る決断を下す。

 前身の三菱電機ドルフィンズで選手として在籍し、クラブのB.LEAGUE参戦と同時に名古屋ダイヤモンドドルフィンズ株式会社の代表としてバスケットボールの世界に戻ってきた千葉洋一郎は、その活動方針についてこう説明する。

「B.LEAGUEの1年目と2年目については、フロントスタッフの手作り感の中でアリーナの演出等を行ってきたのですが、私も含めて素人ですから、試合運営の面は十分でなかったのかなと思います。その結果、昨シーズンは来場者数が前シーズンを下回ってしまったということで、私たちの活動の軸は何なのかということを見つめ直し、ビジョンとミッションを再設定して前面にだしていこうということになりました。ビジョンとしては『名古屋の誇り(シンボル)となるドルフィンズ』です。ロサンゼルス・レイカーズのようなクラブになるのは何十年先の目標として、まずは名古屋の誇りと思っていただけるドルフィンズになることを目指して足元を固めていくべきだという考え方です。そのベースになるのが『Dream of NAGOYA』であり、そこから今シーズンの『DO,RED.』というスローガンを設定しました。『D』がキーワードで、これはドルフィンズのDであったり『Dream of NAGOYA』のDであったり、いろんな『D』が融合した形でアリーナや名古屋市内を赤く染めていく活動をしたいと思っています」


 B.LEAGUEのスタートに伴い、運営会社を設立して三菱電機という企業を離れたのが2016年。その前のNBL時代に約1400人だった来場者数は、B.LEAGUE1季目で約2700人まで伸びた。B.LEAGUE効果もあったとはいえ、正真正銘のプロクラブに生まれ変わった成果としては決して悪いものではないだろう。それが2季目になって観客動員が伸びなかったのは何故なのか。それについても千葉常務に尋ねてみた。

「原因はいろいろあるのかもしれませんが、お客様が試合をただ観に来て、勝った負けただけで帰っていただいていたのではないかという反省があります。アンケートを取った結果、アリーナ演出等で『同じ内容が毎回繰り返されている』といった、変化を求める声が多数ありました。やはりお客様の声には最大限応えていくことが大事。そこを原点に据えてミッションを『夢を拓く』というものとし、コーポレートステートメントである『Dream of NAGOYA』を軸にした活動を展開することにしました。そこで名古屋市の出身である演出家・映画監督の堤幸彦氏へこのミッション達成に向けたご協力をお願いしたところ、ご快諾いただき、一緒に名古屋を盛り上げ、夢を拓くプロジェクトが大きな柱の一つになりました。まず今シーズンは、名古屋の街を舞台に、ホームゲーム会場を劇場に見立て、お客様一人一人が主役となってワクワクドキドキするエンターテイメント空間、アリーナ演出をプロデュースしていただきます。」

 さらに千葉常務はB.LEAGUEが理想とする地域に根づいたクラブ運営の在り方についても強調する。

「『名古屋の夢を拓いている』という点がポイントになります。名古屋の地域の方々にコミットしているということを前面に出して、それを実現するためには何をしなければいけないかということです。愛される、信頼される、地域貢献している、そして強い。それらを集約して、ドルフィンズは夢を拓いている。こういったことを今シーズン以降遂行していく、私たちのメッセージが伝わるような活動をしていきます。『ドルフィンズレッドを世界に刻み込め』という活動理念も、それに基づいたものです。」

 ただ、こうした理念も、チームスタッフや選手がその意義を理解していなければ絵に描いた餅でしかない。実際に試合のコートに立ち、地域活動に参加するのはチームスタッフや選手だからだ。

「もう一つの柱としてはチームスタッフ・選手との方針共有です。今までは口頭だけで説明してきた経営方針を今シーズン初めて、数十枚の資料をもとにチームスタッフ・選手に説明したのですが、『夢』というキーワードを明示して、お客様と多くの接点を持つことをお願いしました。ただプレーを見てカッコいいとか素晴らしい選手というだけでは、次に来ていただけない。目と目を合わせてハイタッチをしたり、挨拶をしたり、自分からメッセージを発信したりすることで距離を縮めなければ、お客様に2回3回とアリーナに足を運んでいただけないと考えています。『夢を拓く』という点は再三再四話をしていて、それはチームスタッフ・選手の頭の中にも入っていると思います。もちろん勝つ時もあれば負ける時もあり、疲れている時やチーム全体が低迷している時もあると思います。前の2シーズンはそれが顔や態度に出てしまうことが一部ありましたが、それはお客様に敏感に伝わってしまう。チームスタッフや選手のプレーも行動もお客様は見ているので、『チームスタッフや選手が笑顔でないとお客様の夢を拓くことはできない』と説明しています。そして、説明した内容をチームスタッフ・選手も理解し、プロ意識がさらに高まっていると実感しています。」

千葉常務曰く、「夢を拓く」意識はチームスタッフ・選手に浸透されているという[写真]=黒川真衣


 名古屋ダイヤモンドドルフィンズがファンの、そして名古屋の夢を拓くことができるか。これからは是非彼らのプレーだけでなく、その表情や振る舞い、そして、アリーナ演出にも注目していただきたい。

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