バスケットボール男子日本代表は2月25日、FIBAワールドカップアジア地区2次予選の最終戦でカタールを96-48で下し、今年8月31日から9月15日にかけて中国で行われるワールドカップ本戦への出場を決めた。ワールドカップ出場は、2006年日本開催だった大会から13年ぶりとなり、自力での出場となると遡ること1998年のギリシャ大会以来21年ぶりとなる。
Bリーグ誕生の2016年以降も、日本での競技者登録人口はサッカーに続き2番目という優位性や、LEDコートの演出などにより注目を集めた開幕戦などもありながら、“好きな人は好き”という枠を超えきれないバスケットボール界にとって、ワールドカップ出場は、心待ちの朗報であったことは間違いがない。駅の掲示板などで見かけることができる朝日写真ニュースでは『辺野古埋め立て「反対」72%』、『はやぶさ2 小惑星に着陸成功』などのトピックに混ざり、『バスケット男子、13年ぶりのW杯出場決定』を見ることができるなど、スポーツの枠を超えて世の中のニュースとして取り上げられ、バスケットボールもようやく日常の生活の中に溶け込むことができた。
また、スポーツ報知、日刊スポーツが1面で、サンケイスポーツが裏1面でワールドカップ出場決定のニュースを取り上げるなど、この時期プロ野球のキャンプ情報が多いスポーツ紙においても異例の取り扱いだ。ニュース番組のスポーツコーナーでも代表選手が出演するシーンもあり、『バスケットボール』がようやくお茶の間の話題として触れてもらえる貴重な機会となった。
日本代表の盛り上がりは国内バスケの盛り上がりに還元できるのか、ワールドカップ出場決定の好機は新たなファンの獲得につながるのかという期待と不安が入り混じる中、3月2日、各地でB1リーグが再開した。
フタを開けてみれば千葉ジェッツがライジングゼファー福岡を迎えた船橋アリーナの5285人、新潟アルビレックスBBが名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦したシティホールプラザアオーレ長岡の4040人をはじめB1リーグで開催された9試合のうち7試合が満員という盛況を見せる。さらに翌日も2日と同じ7会場に加え、三遠ネオフェニックスvs栃木ブレックスが行われた浜松アリーナも満員となり、少しずつではあるが、着実に日本のバスケットボール人気の高まりを感じる結果となった。
また、ワールドカップ出場を勝ち取った代表戦士たちも自身の所属する各チームで活躍。アルバルク東京の田中大貴、馬場雄大はそれぞれ14得点7アシスト、15得点7アシストと躍動を見せ、86-78と富山グラウジーズ戦の勝利に貢献した。川崎ブレイブサンダースに所属する日本代表キャプテンの篠山竜青は13得点6アシストを挙げ、シューターの辻直人も19得点6アシストと大活躍。サンロッカーズ渋谷を延長戦の末に89-80で退ける立役者となった。
馬場は「ワールドカップ出場を獲得して帰ってきたということで、自分たちに期待して今日の試合を見に来てくださっているというのは会場の雰囲気から感じました」と語る。篠山も「チケットの完売で多くの方に来場いただいて、(中略)その中で、延長戦にもつれ込む白熱した試合を見せられたことは良かったかなとも思います」と、周囲の期待に応えられたことで胸をなでおろした。
サッカー日本代表が初めてワールドカップ出場を決めたようなムーブメントや、野球のように「リベンジ」や「ハンカチ王子」など流行語にも選出されるような影響力を持つにはまだまだ成長が必要なバスケットボール。まだ時間はかかるだろうが、「13年ぶりにワールドカップに出場が決まったときにはチケットが取れなくてさ」というボヤキや、「あのころのアリーナは5000人入らないところがほとんどで……」と懐かしむシーンが訪れるのが、そう遠くない未来であることに期待したい。
文=村上成