9月6日、今シーズン初の実戦に臨んだ名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、新加入の3選手をいきなりスターティングファイブに起用してきた。
齋藤拓実、狩野祐介、ジェフ・エアーズ。昨シーズンはいずれも滋賀レイクスターズの主力としてプレーした3名が並んだこと、代わりにルーキーイヤーからチーム一筋の笹山貴哉と安藤周人、在籍6年目を迎えたジャスティン・バーレルがベンチスタートとなったこと。プレシーズンゲームとはいえ、その“先制攻撃”に驚かされたファンも多かったのではないだろうか。
試合後、梶山信吾ヘッドコーチにその理由を尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「まだスタートの5人も決めていません。力のある選手が入ってきてくれたので、ファンの方にお披露目という意味で出しました」
宇都宮ブレックスとの一戦は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため入場制限が設けられたが、有観客で行われた。つまりは、ファンへ向けた梶山HCの“粋な計らい”だったのだ。
試合が始まると、宇都宮のお株を奪うような激しいディフェンスを披露して流れをつかんだ名古屋D。オフェンスでは新加入ポイントガードの齋藤のスピードを生かすように速い展開を意識し、第1クォーターを20-13とした。その後も、守備の強度を上げてきた宇都宮と接戦を繰り広げたが、最後の10分間で引き離され、最終的には20点差をつけられた形となった。
梶山HCによれば、バーレルとエアーズはチームに合流してから2回しか練習ができていなかったという。しかし、その中でも宇都宮を苦しめられたことについては確かな自信になったようだ。「セットオフェンスは1個だけしかやらなかったですけど、それにも関わらず3クォーターまでは宇都宮さんと戦えたことに手応えを感じています。負けはしましたけど、これからいろいろな課題を修正していこうと思います」
昨シーズンは終盤戦を前にリーグ戦が中止となってしまったが、名古屋Dは17勝24敗、西地区5位でシーズンを終えた。昨季の平均得点は73.3得点とB1の中で15位、ターンオーバー数は平均13.7個でB1最下位と歯がゆく、この2点の修正は今シーズン巻き返しを図る上で最低限のミッションとなる。
チームは今オフの7月、フロントスタッフ2名が新型コロナウイルスに感染していることが判明し、これにより体育館が1週間以上使えない時期もあった。現状では、もう1人の新加入選手であるレオ・ライオンズの合流の目処は立っていない。やや出遅れている様子は否めないが、それでも新シーズンの開幕まで残り1カ月に迫っている。
指揮官はそのことを十分に理解した上で、「今シーズンはコロナと向き合っていかなければならないのです。だからといって練習ができないわけではないので、こういう時だからこそファンの方たちに良いバスケットをお見せできるよう、プロとしてやるべきことをやっていこうと思います」と宣言し、会見場を後にした。
文・写真=小沼克年