積極補強の名古屋Dは1勝1敗の船出
ホーム・ドルフィンズアリーナにレバンガ北海道を迎えた名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、1勝1敗で2020-21シーズンをスタートした。
10月3日に行われた開幕戦は、名古屋Dが89-54で大勝。的確な補強、昨シーズンの課題にフォーカスしたハードな練習、プレシーズンでの多くの実戦経験、そして北海道への対策と、オフシーズンの準備が功を奏した見事な圧勝劇だった。
「レバンガさんが前からプレッシャーを掛けてくることは分かっていたので、まず引かないことを徹底しました。今日は出場した全員がプレッシャーディフェンスに負けなかった。練習通りというか、本当に素晴らしかった。プレシーズンマッチからずっと色々な組み合わせを試していたので、良いプレシーズンマッチを経験できたことが、今日の試合につながったと思います」。試合後そう振り返った梶山信吾HCの表情から笑みがこぼれた。
大型補強で「スタートが2つ作れる」と梶山HCが自信を見せるほど選手層が厚くなった名古屋D。注目の開幕スタメンには、注目の新戦力の齋藤拓実、狩野祐介、ジェフ・エアーズが名を連ねた。
序盤から齋藤は、北海道のベテランPG橋本竜馬と激しい主導権争いを展開。タイトなディフェンスをかいくぐり、中央突破からのフローターやディープスリーを沈めると、速いトランジションからジャスティン・バーレルのダンクを演出。試合開始4分半で5得点1アシストをマークし、一気に試合の流れを傾けた。
「僕も、チームとしてもプレスとブレイクがしっかりできましたし、個人的にもうまくファウルをもらえたり、主導権を握りながら試合を運ぶことができたと思います」と齋藤は手応えを口にする。
しかし梶山HCは、その齋藤を4分半で一度ベンチに下げ、笹山貴哉と小林遥太の2ガードを送り出す。その意図について、「北海道さんが前からプレッシャーをかけてくるので、例えば橋本選手(とマッチアップする)以外の選手がボールを運ぶとか、そこの負担を減らしたいと考えていました。中東(泰斗)が怪我をしたという理由もあります」と明かした。
この采配が的中し、小林は齋藤が作った流れをさらに加速させる。8-7の1点リードで迎えた開始5分、「(ディフェンスが前に)出てくる分抜くことができるということも分かっていたので、僕らPG陣が強く攻めにいくことを意識していた」という狙いの通り、小林はピック&ロールで相手DFを剥がすと、そのままリングへ一直線。さらにその直後のポゼッションでも果敢にドライブを仕掛けて、中野司のファウルを誘発。フリースローで2点を加点しただけでなく、個人ファウル2つ目となった中野をベンチに追いやり、北海道をチームファウルが5つの苦しい状況に追い込んだ。
さらに小林は持ち味の守備でも貢献。北海道のお株を奪うような、前線からプレッシャーディフェンスを仕掛けたと思えば、次の瞬間にはゴール下へヘルプに入ってジャワッド・ウィリアムズのアタックを阻止するなど、献身的なディフェンスで北海道に反撃の隙を与えなかった。
競争心がチームを活性化
「超攻撃的な齋藤。ずっと一緒にやってきているので、スタイルを理解し、ゲームメイクが上手い笹山。ディフェンスが上手く、ここでディフェンスが1本欲しい時に出す小林」。梶山HCは三者三様のPGについて「今後も相手によって起用法を変えていこうと思っています」と話す。
第1戦では、21分出場した齋藤がチームハイの14得点4アシスト4スティール、笹山が20分出場で11得点、小林が15分で7得点2アシストをマーク。タイムシェアをしっかりしながら、3人のPGが良い流れを40分間つなぎ続けた。
第2戦でも、第1戦と同様に第1クォーターの開始4分半で先発の齋藤から笹山と小林の2ガードに変更した。しかし9-17と追いかける展開になると、すかさず齋藤をコートに戻して笹山との攻撃的な2ガードに。すると直後に齋藤がドライブからのレイアップを沈め、笹山がファストブレイク、スティールで流れを引き寄せて、第1クォーターの間に21-21と同点に追いつく。勝負どころでのターンオーバーが響いて、最終スコア66-78で敗れたが、昨シーズンまでは一度リズムを失うと修正できないまま終わることが多かっただけに、選手の組み合わせで流れを変えられたことは収穫と言える。
何より齋藤の加入によりガード陣に危機感が芽生えたことが大きい。
「とても刺激になっていますね。負けられないという気持ちもありますけど、あれだけ凄い選手なので盗む部分もたくさんある。練習中もマッチアップする機会が多いんですが、そういう選手についていることは僕の自信にもなります。やられることもあるので、ディフェンスをもっとがんばらなくてはいけないという意識が今年は芽生えました。競争心を高く持ってやっていることが成長につながっています」と小林は目を輝かせる。
三者三様のPG陣は切磋琢磨しながら、反撃のシーズンを牽引していく。
文=山田智子