2020.09.15

“名古屋ダービー”快勝の立役者となった齋藤拓実…指揮官は「理想のポイントガード」と称賛

新天地での活躍を誓う齋藤[写真]=山田智子
ライター・カメラマン

 新加入ポイントガードの齋藤拓実が名古屋Dのファンの心をがっちりとつかんだ。

 9月13日に名古屋ダイヤモンドドルフィンズの主催で行われたファイティングイーグルス名古屋との“名古屋ダービー”第2戦。2点差で辛勝した前日の課題を修正した名古屋Dは79-62で大勝し、格の違いを見せつけた。

 快勝の立役者となったのは、15得点4アシストをマークした齋藤だ。ゲームの主導権を握りながらも、FE名古屋の粘りの前になかなかリードを2ケタに乗せられない展開が続く中、第3クォーター残り3分にコートに戻った齋藤はノールックパスで菊池真人のゴール下を演出。さらにこの日2本目となる3ポイントシュートでバスケットカウントを獲得し、4点プレーを成功させてついに2ケタリードを奪った。

 続く第4クォーターは齋藤の独壇場となる。テンポの良いパスさばきでゲームを掌握したばかりか、持ち味のスピードを生かした高速ドライブでディフェンスを切り裂き、バスケットカウントを連取。新型コロナウイルス感染対策のため、拍手のみで応援をしていた観客からも思わず歓声が上がる。その後も激しいディフェンスとトランジションオフェンスでFE名古屋を圧倒し続け、点差を21点にまでに広げた。

■「勝つために何が必要かをチームに伝えていきたい」

齋藤のスピードは名古屋Dのバスケットにフィットしているようだ[写真]=山田智子

「トランジションバスケットを主体とする僕たちにとって理想のポイントガード。齋藤選手が来たことによってトランジションオフェンスに磨きをかけられる」。梶山信吾HCが獲得を熱望した若き司令塔は、トランジションバスケットを体現しただけでなく、要所で決める得点力、的確なパス、落ち着いたゲームコントロール、ハードなディフェンスと、スタッツ以上に強烈なインパクトを残した。

 それでも本人によれば、まだまだ「様子見」の部分があったというから末頼もしい。

「後半は自分らしいプレーで得点を取ったりとかもあったんですけど、名古屋Dはウイングやインサイドに能力の高い選手がいますし、この時間帯はしっかりとパスをした方が良いとか、どのタイミングでインサイドを使うか、どのタイミングで自分で攻めた方が良いのかなど、いろいろと考えながらやっているので、まだまだですね」

「ただドルフィンズが長年やっているトランジションバスケットに、僕のスピードを生かしていきたいと思っているので、誰をどう使うかという前に、リバウンドを取ったらまずはプッシュすることを常に狙っています。でも、あまりハードルを上げられるのは嫌なんですけど……」と齋藤は苦笑したが、この試合で“ドルファミ”の期待値は間違いなく上がってしまったことだろう。

 初めて“ドルファミ”の前でプレーをして「応援の心強さを肌で感じた」と話す齋藤。「アルバルク東京の時も滋賀レイクスターズの時もドルフィンズアリーナで試合をしたことがないので、たくさんのドルファミの皆さんと会えるのをとても楽しみにしています。今年はファンの方たちも期待していると思うので、何としても結果を残して良いシーズンにしたいです」。

 そのためにも、宇都宮ブレックス群馬クレインサンダーズ、FE名古屋と4試合のプレシーズンゲームで見出した多くの改善点に、ここから3週間しっかりと取り組みたいと齋藤は表情を引き締める。

「まだレオ・ライオンズ選手が合流できていないですし、オフェンスもディフェンスもチームルールの部分で細かいところまで徹底できていないので、そこを高めていきたい。一番の課題はディフェンスですね。昨日のような大量失点は絶対にあってはならないし、今日はその部分についてはある程度修正できたと思うのですが、ここからさらに質の高い練習をしていきたいです。ポイントガードとしてコミュニケーションをうまく取ることがすごく大事になってくると思います」

 目標は「チャンピオンシップで優勝すること」と齋藤は力強く明言する。「ジェフ・エアーズ選手はNBAの(サンアントニオ・)スパーズで優勝した経験があって、その経験をチームに伝えていました。僕もアルバルク東京でチャンピオンシップ優勝を経験しているので、ジェフとともに勝つために何が必要かをチームに伝えていきたい。ひとつも不安のない状態で開幕に臨めたら本当に勝てるメンバーだと思っているので、まずはこの3週間しっかり準備していきます」

 今シーズン巻き返しを図る名古屋Dのキーマンは、新天地でのチャレンジに静かに闘志をみなぎらせている。

文・写真=山田智子

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